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夢枕獏「歓喜月の孔雀舞」

夢枕獏「歓喜月の孔雀舞」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓

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目に見えざるものが見えること。近親相姦と憎悪。血液への性的渇望。隠された親子関係。人間の業への神の制裁。成仏できない白拍子。遠野に伝わる呪術。七つの物語が、背徳的な美に包まれて繰り広げられる。作者の実体験に基づいているかと思われる箇所も多い。そして何よりネパール紀行によって生まれた数々の奇譚。それだけインプレッシブな強烈な体験だったのだろう。そこで作者は「螺旋」という概念に目覚める。世界は「螺旋」で構成されていて、「螺旋」によって動かされている。夢枕獏、永遠の創作テーマである。

1️⃣ころぽっくりの鬼

次々と突然死するクラスメイト。僕は前日に彼らにピッタリと取り憑く裸の女の人形を必ず見た。その人形が見えるのは沢田くんと僕だけだった。

2️⃣微笑

父親の違う美しい姉に恋した僕。毎晩のように姉を思って自慰をした。離婚した父親が交通事故で死んで、再び一緒の屋根の下で暮らすことになった。

3️⃣優しい針

叔母の息子である美少年・光男。従姉妹である私は彼の美しい肌に針を刺して、その血を飲んでいた。八年ぶりに同じ屋根で過ごすことになった二人。

4️⃣蛇淫

未亡人となった恋しい美しい母。そこに叔父の白川が通ってくるようになった。夜毎の睦言に昂まる自分。白川は僕を伴って入墨師のところに通い始める。

5️⃣髑髏盃(カパーラ)

人間の頭蓋骨💀を輪切りにして金属を嵌めたネパールの法具=カパーラ。携帯したままマナスルに登って、因業による雪崩に怯える私。

6️⃣檜垣─闇法師─

夜の観桜に寺に泊まった若い娘を深い森に誘った僧侶だが、翌日に二人とも死体で発見される。その寺には生前は白拍子だった老女が夜に徘徊していた。

7️⃣歓喜月の孔雀舞

ネパールで出会った神秘的な女性、櫛方小夜子。しかし彼女は行動を共にしたトレッキングで岩石に当たって即死。彼女の故郷・黒附馬牛村では「魂月法」という呪法があった。

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