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ティック・モック・ハーン著「怖れ・心の嵐を乗り越える方法」

ティック・モック・ハーン著(島田啓介訳)「怖れ・心の嵐を乗り越える方法」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
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 著者であるティック・モック・ハーンは、1926年、ベトナム中部生まれ。禅僧にして、平和・人権運動家にして、学者であり詩人である。世界的に知られた精神的指導者で、マインドフルネスの実践についての教えは全世界に影響を与えている。本書では赤ん坊が産まれた時から、誰しもが持つ「怖れ」という不安について、どう向き合ってゆくべきかについて平易かつ実践的に、それでいて深く語りかけている。例えば終末=死に向けての怖れには、五つの確認を自らに受け入れることを勧める。
1️⃣私は歳をとる。老いからは逃れられない。
2️⃣私は病気になる。病気からは逃れられない。
3️⃣私はやがて死ぬ。死からは逃れられない。
4️⃣今大切にしているものや愛する人びとはすべて変わりゆく。別離からは逃れられない。
5️⃣私は体、言葉、心による行為の結果を受け継ぐ。私の行為だけが継続してゆく。
 その救いの根幹にあるのが「マインドフルネス」である。直接的には「深く見つめて私たちの本質であるインタービーイング(相互存在)に触れ、失われるものは何もないという真実を知ること」と説明されている。これだけでは何のことなのか、よくわからない。しかし全体を読み進めてゆく中で、その実態を感じとることができてゆく。マインドフルネスにたどり着くためには、心と身体の準備が必要。身体には腹式呼吸が効果的とされる。本書では八つのエクササイズを紹介している。心では五つのトレーニングが前提となる。
1️⃣いのちを敬う
2️⃣真の幸福
3️⃣真の愛
4️⃣ 愛をこめて話し、深く聴く
5️⃣ 心と体の健康と癒し
仏教では、サンガ(集会)のコミュニケーションによってマインドが形成される。これはキリスト教なら教会で、イスラム教ならモスクで育まれるのだろう。世界ではイスラム原理主義者による欧米へのテロ攻撃、ロシアによるウクライナ侵攻、中国の武力併合、北朝鮮の核実験など国家的紛争が相次いでいる。著者は「怖れから愛への変貌させる五つの呪文がある」と説く。プーチン、ゼレンスキーの両大統領に読んで欲しいものである。
1️⃣ 自分の存在を相手に差し出すための呪文
・私はあなたとともにいます。
2️⃣ 愛する相手の存在を認めるための呪文
・「あなたがいてくれて、とてもうれしい」です。
3️⃣ 苦しみをやわらげるための呪文
・あなたは苦しいのですね。私が一緒にいますよ。
4️⃣ 相手に助けを求めるための呪文
・私も苦しんでいます。どうか助けてください。
5️⃣ 今は幸せの瞬間!
そうすれば世界は「五つの気づき」に至るだろう。
1️⃣私たちの中に、すべての世代の先祖、すべての世代の子孫が存在することに気づきます。
2️⃣私たちは、先祖と、子どもたちと、さらにその子どもたちの思いが、自分に向けられていることに気づきます。
3️⃣私たちは、私たちの喜び、安らぎ、自由と調和が、先祖と、子どもたちと、さらにその子どもたちの喜び、安らぎ、自由と調和でもあることに気づきます。
4️⃣私たちは、理解こそが愛の基礎であると気づきます。
5️⃣私たちは、非難や言い争いはけっして良い結果を生まず、大きな溝を作ることに気づきます。理解と、信頼と、愛だけが、私たちを変え、成長させます。

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