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食後の皿を片付けるタイミング

皆さんは家でごはんを食べ終わったあと、その皿をすぐ台所に持っていくタイプですか?私は食べ終わったらまず一息ついて、食後のゆったりした時間を楽しんだあとに腰をあげて皿を片付けるタイプです。

皿を持って行くタイミングが異なる者同士でごはんを食べると、「皿をすぐ持っていくタイプ」の人間が一方的に片付ける役を担うことになります。「食後に一息ついてから片付けるタイプ」は食後、いつものクセで笑顔を浮かべながら一服なんかし始めるものなのですが、「皿をすぐ持っていくタイプ」がテキパキ片付け始めるのを見ると、ハッとしてバツが悪そうにタバコをしまったりするのです。私の場合、まじで毎回そうしています。

決して「皿をすぐ持っていくタイプ」の人が悪いわけではありません。むしろすぐに片付けるのはめちゃくちゃいいことだと思います。でも、食後の至福の一時を楽しみたい人間からすると、これがどうも、こう、“いずい”のです(※方言だけれどこれ以上的確な表現が見つからなかった)。

でも私は、この感覚を「皿をすぐ持っていくタイプ」の当本人に伝えることができていません。理由は、私が逆の立場だったこともあるからです。


私が離婚した元旦那は、主体的に家事をやらない人でした。「やって」と言えばやるけれど、言われなければ何一つやらない。当然、皿を片付けることもそうでした。細かなやりとりはもう忘れてしまったけれど、「一日中仕事をして料理も片付けも何もかも私が全部やっているなんて、どう考えても理不尽だ」とブチキレた瞬間ははっきり覚えているから、当時の私と離婚した相手との間においては、私のほうが「皿をすぐ持っていくタイプ」だったのです。

皿をいつ片付けるか。どのタイミングで一息ついて、いつ腰をあげるのか。心地いいリズムは人それぞれ違って、違いに対する感じ方は相対的に揺れ動くものなのです。

私は離婚した相手に対して「なんでこの人は自分から何もしないのだろう」と苛立っていました。でも今、私よりもテキパキと家事や仕事ができる人と出会って、皿を先に片づけてもらうたびに「なんで私はこんなに怠惰なんだろう」とたびたび自信をなくします。

今の私が過去の私に何か助言できるなら、「相手が悪いというより、その人と私は生きるリズムが違うんだよ」と伝えたいです。ただし、だからといってそれは、元旦那が仕事も家事もやらなかったことを正当化する理由にはなりません。あくまで「リズムが違う相手とどう生きていくのか考えることが大切なのだ」ということを過去の私には知ってほしい。

そして今の私が未来の私のためにできることは、食後の皿を片付けるタイミングについて、今ともに歩んでくれているパートナーと話し合うことです。「いや、べつにそんなん気にしていないけど」と言われそうですが、私がそこに“いずい”と感じていることを伝えなければなりません。お互い心地いい、皿を片付けるタイミングを見つけるために。


誰かと一緒に暮らすということは、たぶんこういうタイミングだとかルールだとかをお互い開示しあって、ちょうど心地いいところを探っていく努力の積み重ねなのだと思います。

これが仕事であれば「ビジネスとして成長が期待できるか」とか「従業員にとって幸福度が高いか」とか、みんなで合意できる指標を立てやすいのですが、生活のこととなると「なんとなく居心地がいいか」とか「今まで慣れ親しんできたか」とか、解像度が粗くて主観的な基準をベースに互いの価値観をすり合わせなければいけないので、とたんに難しくなりますよね。

夫婦、カップル、兄弟など身近な関係性にある人間同士が価値観の合わなさを感じると、ついつい「好き・嫌い」「良し・悪し」という極端な判断に落とし込んでしまいがちなのも、人間関係をこじらせる要因だと思います。

皿を片付けるタイミングを例に挙げるならば、私は離婚した相手が食後のんびり構えているのを「何もしないこいつが大嫌いだ」と決めつけて怒り狂っていました。当時の自分は幼稚だったな、と反省しています。(※離婚したことに対する後悔は全くありません)


食後すぐに皿を片付けたほうが気持ちいい相手に寄り添いつつ、そこにまったく関与できない自分の居心地の悪さも解消したい。それが、今の私の願いです。

例えば「皿を片付けるまでは任せるから、洗うのは私に任せておくれ」と頼んでみましょうか。あるいは、「かわりばんこで片付けるようにしよう。私が片付け担当のときは私のタイミングで片付けるのを許しておくれ」と提案してみましょうか。きっとこれ以外にもやり方はいくらでもあるはずだから、話し合ってお互いが心地いい答えを探ってみます。

こういう話し合いをしっかりできるようになったら、今度こそ誰かと共に生きることができるかなあ。マイペースで暮らすのが大好きな私は、そんな想像を巡らせて、食べ終わってからしばらく経った皿をようやく台所に持っていくのでした。

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