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どんな絵本に?(後編)【LITTLE RINGO BOOK 制作ノート#3】

『LITTLE RINGO BOOK』が具体的にどんな絵本になるのかお話ししていきます。まず、こんな企画書をつくりました。

『LITTLE RINGO BOOK』企画書初稿の表紙

絵本のイメージを固めていくにあたって、企画書にすることでぼやっとしていた輪郭が少しずつはっきりとしてきました。

モチーフとなっているリンゴを通して、果物や野菜の個性や美味しさに加え種から生まれる新しい命のことにもっと興味をもってもらうこと。この部分は青果店ミコト屋と一緒につくっているからこそでもありますね。

ここにyackyackbooksの強みであるビジュアル的な要素を加味していく。どんな内容の絵本であれ、家に置きたくなるような、日常に飾っておきたくなるような絵本であること。子供たちももちろん読めるものであり、デザインや内容において大人にも訴求できるものにしたいという気持ちは普段yackyackbooksで大事にしていることでもあります。物語や言葉のリズムも大事だけれど、画集としてもたのしめるような、そんな絵本です。

かといって、大人向けのアートブックではなく形は絵本であることに変わりはありません。どの部分を足し引きしていくのか。それによって、本自体の印象もだいぶ変わってくると思います。

本の仕様

そして本の体裁を示す「仕様」は最初の段階ではこのようなものに。

  • 本の形は正方形

  • ハードカバーの上製本

  • 全体で40ページほど

  • 表紙カバーや帯はなし

  • 日本語、英語の併記

  • 価格表示には剥がせるステッカーを使用

上から4つ目の「表紙カバーや帯はなし」という項目は、僕とミコト屋の鉄平さんの間でも共通して取り入れたいものでもありました。なぜかというと、色々なところに持ち運んでガシガシ使ってもらいたいから。

表紙カバーはつけない!

本を守る視点でいえば、表紙カバーがあった方が中の本体が傷つかずに済みます。「書店に並べる」という時にこれが大きな役割を果たします。時に出版社や取次からの配送中に本が傷がついてしまうことあり、その場合カバーを変えるだけで済むという利点があります。そして帯にはその本がどんな本なのか説明をしてくれる役割が。日々大量に仕入れを行う書店さんの作業を効率化したり、多くの本が並ぶお店で行き交う人のめに届かせるには、こういった工夫が必要だということでもあるんですね。

けれど、表紙部分にさらに紙が加わることで本が捲りづらくなってしまうし、次第に表紙カバーの破れも気になってくる。帯に関しても表紙の絵があれば十分という僕らの考え。いっそのこと外してしまおうよと話していたのです。

イタリアのボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア

本にもよるのですが、先日のイタリア出張でのブックフェアでも表紙カバーをつけている出版社はあまり多くなかった印象です。表紙カバーで包むというのは、日本ならではの丁寧なものづくりとも言えるかもしれません。どちらがいい、というわけではなく今回はこのスタイルが合っていると思い、この装丁で進めることにしました。(加えて、その分のコストを他の箇所に使うことができますからね。)

ここだけの話、実はこの企画書をある出版社に見せてみました。この本の企画を一緒に進めてみませんか、と。結果はほぼほぼ門前払い。(笑) すでにいくつもの絵本の企画が組まれており、現段階で話を進めていくことはできないと丁重にお断りを受けました。まぁ、そんなもんですよね。 他の出版社にあたってみることも検討しましたが、きっと表紙カバーや帯をつける方向にいってしまうだろうという懸念もあり最終的に「自分たちで出版して売る」という小さく大きな旅に出ることにしたのです。

また、ミコト屋の存在をどのように本に取り入れるのかということも考えました。そこで思いついたのが、別冊という形式。絵本の本編はありつつ、別添えでミコト屋の取り組みや制作に関わることなどを記載したドキュメントをつくることです。そうすることで物語の中では伝えきれなかった事柄を読み物として手にしてもらうことができます。ビジュアルを楽しむ絵本とより深く知ることができる冊子。冊子にはミコト屋の活動やリンゴ農家さんへの取材記録も掲載する予定です。

絵本の「絵」

企画書には僕がイメージした絵の方向性をいくつか描いていました。

『Red Apple and Blue Apple』(仮)
『Little Giant Apple』(仮)

色を多様せず、グラフィックデザインの要素を活かした絵づくりを。すべてデジタルではなく手描きのアナログ感もしっかり残したい。合わせる言葉もなるべく少なく。文字が多いとそちらに目が行きがちですが、自然と絵に目が誘われるような構成にというのが、僕の中のイメージでした。

仮のタイトルをつけて2つの異なる物語。

でもまだ初期段階。
ここから絵を担当してくれる山本万菜さん、デザイナーのフクナガコウジさんと話を重ねながらどんな風に変化していくのかとても楽しみです。

yackyackbooks
山中タイキ

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