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PPP的関心【地下街"型"道路と橋梁"型"公園の事例から考える、まちづくりの目的と手段】

道路・通路や橋、トンネルなど都市間・都市内を繋ぐインフラの整備では、そもそもヒト・モノ移動の高速化(移動時間の短縮)や効率化(移動可能量の増大など)といったことが目的として示されることがあります。
しかし、本来的な行政目的は公的サービスの向上や市民の効用を高めることであり、高速化や効率化というのは最終的な目的というよりは目的実現への要素であり、高速化や効率化実現により「どんな効果」を得ようとするのかという「(本来的な)目的」が示されるべきです。

今回は、地下歩行通路として整備されたことで「ビジネス未開地」と書かれるような地下街にできない(しにくい)都市施設と、橋梁の形していながら人流と関係性を創り出す都市公園として整備された都市施設を見比べながら都市経営における「目的」議論について考えてみました。
価値観や議論する主体者の関係性、時代背景などに差があるので2つの施設整備の優劣や良し悪しに言及することを狙いとはしていませんが、行政目的をどのように見据えるか?によって、施設整備検討の論点が変わる好例だと思います。

地下"街"にできない(しにくい)地下歩行通路

#日経COMEMO   #NIKKEI

札幌のど真ん中にビジネス未開の一等地がある。札幌駅と大通公園地区を結ぶ地下通路、通称「チ・カ・ホ」は1日10万人以上が行き交う北海道屈指の通行量を持ちながら、商業目的の利用は原則できない。
理由は「通路」だから。隣接する「さっぽろ地下街」は消防法などにのっとりスプリンクラーや非常用電源などが用意されているが、地下通路のチ・カ・ホにはない。

記事にある表面的な伝聞情報だけで判断するものではないですが、「札幌駅前通の地下に民間の開発も呼び込」むことを目論みながら「ハコモノ批判をかわせるうえに建設のハードルも低い地下道に落ち着」かせた議論の経緯や最終的な判断からは、札幌の一等地を「何のために、誰に、どのように使わせるのか」という公共空間のオーナーである行政の「行政目的・意思」からくる目的的な議論が希薄な印象を受けます。

いま目の前で起こっていることは、そのまま続かない
目的的で、変化を見出そうとする観察眼が必要だった

もう一つ記事から受け取ったことは、「現在の」風俗(人々の生業の営み、暮らし)だけを観察した結果は当てにならない、ということです。
10年超前の見立ては「構想段階では1日当たりの通行量を最大でも5万人程度と見ていた」のだが、結果的には「雪が積もる1~2月になると特に通行量が増え、1日当たり15万人を上回ることもある。」状況になっている。
その結果「小売りや外食関係者からは垂涎の一等地」となり、「チ・カ・ホに店を出せるのなら、賃料はさっぽろ地下街の3倍くらい払ってもいい」という評価が生じる空間となっている。

当時の駅前を使っていた人々の営みが「そのまま続く」という視点からは「5万人の姿」しか想像できなかったもしれない。しかし、いま目の前で見える風俗(人々の生業の営み、暮らし)の中に「変化の兆し」を見出そうとする観察眼を備えていたら、その前提として「何のために、誰に、どのように使わせるのか」という意思が明確であったら、この一等地は、名実ともに一等地として自治体、市民に恩恵をもたらしていたかもしれません。

橋梁の形をした、人流と関係性を創り出す都市公園

そもそもこのプロジェクトは、中心市街地の空洞化、経済的な縮小(衰退)を地域の社会課題として捉え、人流と街の使い直しを起こすことで課題解決を図るため市中心部の回遊動線を再設計するプロジェクトの一環です。

乙川に架かる桜城橋は、東岡崎駅と中央緑道を結ぶ公園人道橋、「街なかへのお迎え空間」に位置付けられている。事業はその橋上と橋詰の公園用地に、休憩所や飲食店を整備し運営するもの。併せて、園路やトイレなどの特定公園施設を整備し、市に引き渡したのち指定管理者として管理運営を行う。

記事にある「公園人道橋」は見慣れない言葉ですが、この公共施設は「橋」の形をしているのですが「公園」として整備されたということを意味しています。橋をかけた後の周辺整備・運営に関して「開通する桜城橋(さくらのしろばし)の橋上広場・橋詰広場のPark-PFI事業予定者に、三菱地所を代表企業とする企業グループを選定」とあるように、都市公園内における営業権と公園(及び周辺)管理の委託を行う「Park- PFI」事業という手法が取られていることからも、この施設が公園として整備されいることがわかります。

目的的な施設整備のバックボーン
「QURUWA戦略」 ~乙川リバーフロント地区公民連携まちづくり基本計画~

人道橋広場の施設整備は、施設整備自体が目的(投資による経済効果)でもなく、先行した施設計画に後付けで市民の効用の増大を目的として加えたのではなく、リンクの「QURUWA戦略」という基本計画に基づく計画でした。

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都市経営課題の解決に向けた目的的な都市施設整備
PPPという考え方の浸透も影響

二つの事例は、どちらも「ただ造ること」が目的ではないことはわかりますが、違いがあるとすれば「未来の姿をどう描くか、未来の姿につながる変化の兆しを読み取ろうとしたか」という点で計画的・目的的であったかに差があったと考えます。また、札幌市と岡崎市の事例の「10年の時間差」の中で民意の反映の仕方、PPPという考え方の広まりや実践手法に関する官民双方の理解の程度も大きく変わったことも影響したとも考えます。
いずれにしても、これからの施設整備や公的サービスの投入にあたっては、いまの課題を対症療法的になぞるだけではなく、この先のありたい姿を明示して、そこに向かっていくために必要な取り組みを考える、という発想が求められるということです。

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