PPP的関心【公的不動産の能率的・効果的な活用】
以前からPPP的関心でも「公的不動産」」に関連する記事をいくつか書いてきました。
繰り返しますが、公共(公的)不動産も不動産です。もちろん、法律や条例などで「使う際」の制約がかけられている点で民間不動産とは違いますが、不動産から生じる効用(経済的利益や社会的便益)を高める(大きくする)ためには、必要な投資を継続すべきであることはどちらも同じです。
以下の記事にある「官舎」も公的不動産の最たるもののひとつですが、その建て替え(建設再開)の記事から効果と投資について考えてみました。
官舎の建設再開のニュース
記事によれば、" 東日本大震災後、復興財源の捻出を議論しているさなかに建て替えを進めようとしたことが批判 "を受けて" 11年以降、原則として建て替えなどが凍結 "されてきた公務員宿舎について、
・宿舎が不足している地域に絞る
・災害時などに緊急で集まる業務継続計画(BCP)用や若手職員を中心とした独身・単身用の用途
について新たな借り受けや建設を探るとともに、老朽化した宿舎は必要性が高い対象を選び、大規模改修やリノベーション工事を実施するとあります。
財務省のトラウマとは?
先ほどのニュースの前日には「トラウマ」というタイトルで官舎の建設再開に関する情報が取り扱われています。
復興財源確保の議論のなかでの建設凍結の判断は、予算制約の中での優先順位付けという意味とすれば一定の理解はできるところですが、ニュース記事の中にある"議論が難しいのは、なお残る世論との温度差"とか"一等地に割安な家賃で住める公務員宿舎への風当たりは強い"といったコメントに象徴される「感情的な」配慮を踏まえた判断があったとするなら、全面的な理解はしにくいです。
さらなる目的の明示と実現への合理的な説明
私自身は公務員でもないし、公務員の環境整備を特段支援する所以はありませんので、後々の結果についての興味はそこまで大きくありません。
ただ、「PPP的関心」を通じての興味として議論のなかで感情的な論点での思考停止を脱し目的の明示と合理的な説明がどのようになされるのかという点に対する興味は大いにあります。
例えば一等地と認識される「場所の議論」では既存の敷地に整備する(若しくは代替地を探さない)ことの合理性、割安か否かの論点のひとつにもなる「どのような居住水準」とするかについて例えば人事院の給与勧告における「民間準拠を基本」とするように民間住宅の設備を参考にした「必要十分なもの」であるかどうかなど合理性についての説明が「伝わるか(=理解されるか)」が大事だと思います。
その辺り今後どのような説明がなされるかには大いに関心があります。
また、そもそもその前提として宿舎を再整備する「目的」の共有、理解醸成が第一歩ですがこれについては、「行政財産の未来像研究会(財務省)」のペーパーで示されている体制確保や社会環境の変化への適応といった点には普通に考えれば大きな違和感を感じるものでもなさそうです。
人材育成の観点・・・とやや遠回しな表現ですが、民間企業でも有望な人材の採用に寮や社宅の再整備をする企業もあるし、テレワーク環境の記述などは今後の働き方を考える上で外せない視点だと思います。
「能率・効率」の議論のかけ違い?
最近、個人的に「能率と効率」という言葉をよく使います。
能率的とは「決められた時間内に実現・達成できた仕事量の割合」であり、効率的とは「投下した(働いた)労力に対して得られる成果の割合」です。この二つは「似ているが異なるもの」であることは明らかですが、連動している尺度だと考えていることで、セットに使うようになりました。
なぜ唐突に二つの尺度の話をするかといえば、もしかすると、先ほどの感情的な論点は、能率・効率尺度の算出の際の「割り算」での分子と分母の優先順位付けの違いとも考えられるな、と思ったからです。
分子である仕事量とか成果の程度について「それをより大きくする」「目的的にする」議論よりも、分母である「追加投資の圧縮」のような議論が優先されているということです。
もちろん、不必要に過剰な投資はまずいと思いますが、同じ投資でもあるいは追加投資をしたとしても、それによって仕事量や成果の程度が高まれば、能率・効率は高まるわけで、それこそが「目的的な」議論だと思います。
PPP /PFI 検討にも通じる目的の明示と合理的な説明
今回の記事も「目的」と「説明」ということについて触れましたが、PPP的な施策を進める上で住民合意形成、事業推進の過程でもこの二つの情報開示と共有、理解醸成は必須だということはこれまでも触れてきました。
官舎についてこの後の具体化の際にも、こうした視点が踏まえられた議論が行われることを期待したいと思います。
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