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PPP的関心【公的不動産も不動産。生み出す収益・効用を最大化する使い方を考える】

まちづくりという活動や取り組みは、例えば施設やインフラ整備、地域コミュニティの形成支援、交通ネットワークの利便性向上などさまざまな手段を用いて、地域の課題解決を解決するものです。
例えば、解決したい地域課題を「地域経済の疲弊解消」という側面に置いた時、まちづくり活動を、既存のストック・インフラの使い方や使い手を更新して、それまでにないヒト・モノ・カネの流れを生み出すことであり、さらに成果を地域の不動産価値(地価や地代、家賃)に反映させることで、地域に新しい投資を呼び込む基盤を整えるという好循環の創造であると見ることができます。

不動産の「価値」を決める要素には多様な要素があります。立地地域の都市的施設の充実度、職場や学校等からの時間距離、利便性、安全性などの要素によって所有・利用意向の”需給バランス”によって価値は変動します。
そのような「相場」による価値に加え、そもそも不動産が生み出す付加価値(農地であれば収穫可能な作物の種類やその収量期待、建物付き土地であれば期待できる家賃収入など)によっても不動産の価値は変動します。つまり使い方によって価値は変わる(変えられる)ということです。

考えれば当たり前ですが、公共(公的)不動産も不動産です。ただ、法律や条例などで「使い道」の制約がかけられている点で民間所有の不動産と違います。しかし、民間不動産と同様に不動産として生み出す価値を高めることで地域活性化に貢献するような利活用の自由度が高まり、工夫が活かされるようになれば、不動産から生じる効用(収益)を高める(大きくする)ことが可能な施設も多いと思います。

今回は、以下の記事を目にして公的不動産の使い方の「変更、追加、開放」によって、新たな効用や価値を創造する可能性を感じ、それについて書いてみました。

管理事務所という「単一」の使い方を開放する社会実験

神戸市は、With・Afterコロナ時代を見据え、兵庫県立大学(以下、県大)と共同で、落合中央公園管理事務所2階の書庫スペースの一角を利用してテレワークスペースなどを提供する社会実験を行っている。

神戸市の落合中央公園は、温水プール、図書室などを備えた北須磨文化センターと運動広場・複合遊具などの施設があることで、市民そして近隣の住宅団地(名谷団地)住民の交流の場ともなっている公園だそうです。この記事にある取り組みは、兵庫県立大学による「今後の人々のライフスタイルのあり方を研究」する活動の一環として、公園管理事務所の一角をテレワークスペースなどとして提供する社会実験としての取り組みだそうです。

これまで、公園管理業務に従事する人しか使えなかった空間を(おそらく)管理職員が滞在する時間帯とはいえ、管理業務をする人以外に開放したことは、公的不動産である公園管理事務所の利用の仕方を更新するもので、将来どんな効用(住民にとっての価値)を生み出すか、その効果は注目です。

不動産管理業が不動産オーナーに提供する価値
管理物件からの収益を最大化する利活用提案と実行

収益を最大化させる「使い方の創造」こそ不動産オーナーへの価値提供だと思います。
以前、取材旅行時にNYのあるアパートに滞在したことがあります。その部屋は、基本的な契約単位は月単位で募集されていましたが、私達が利用を希望する期間にたまたま空いていたので1週間弱滞在することができました。
物件の管理会社から「空室にしたままよりも、この1週間で部屋から得られるお金を増やして、オーナーに渡すことが自分の仕事だ」と言っていたことを鮮明に覚えています。

公園管理事務所の例も同じような発想(利用の最大化で生み出す収益や効果を最大化する)で考えてみます。
稼働させる時間総枠は1週間7日×24時間=168時間ですが、本来の使用者と使用目的(公園管理事務)以外の使用者・利用目的(管理事務所でのテレワーク)に使われている時間は6日×7時間=42時間で、総枠の25%だけが「二毛作的な使われ方」をしたと見ることもできます。

今回の事例の公園管理事務所のケースも「単一の使い方を開放した」ことは斬新ですが、さらに新たな効果を意味出すための可能性を秘めた他の使い方ができないかを考える余地があるということでもあります。

行政も「我が街の不動産オーナー」
所有不動産の価値を最大限発揮させる

財産価値を高め、資産をより多くの市民が得る効用を最大化するための単一用途を多毛作的に複合的な使い方を模索することは所有不動産の財産価値、不動産が生み出す効用を最大化しようとする行動そのものだと思います。

例えば、学校施設は学齢期の児童生徒に正課を提供することが価値ですが、長期休暇時には施設が整っていることを活かして社会人のリカレント教育や環境次第では他地域の合宿を呼び込む装置にできるかもしれません。

行政が不動産オーナーとして所有する不動産の利活用を開放することで地域の注目度を高め、新たなヒト・モノ・カネの流れが生じさせることで地域に経済、文化、交流的な「価値」が生み出されることになるといった発想を持つこと、また、使っていない期間があるということはコストだけが出て行く時間であるという経営感覚を持つことは、財政制約の中で取り組んでいかねばならないこれからの地域経営において必要な視点ではないでしょうか。

不動産でお金(カネ)を生むことは、すなわち活動(コト・モノ)と人(ヒト)をその場に与えること

公共(公的な)不動産でお金を稼ぐ(もちろん、不当に或いは提供価値以上に対価を得るという意味でなく、適正にな対価を稼ぐという意味です)ことには、ルール制約があること以上に、そもそも積極的に取り組むことを躊躇する考え方が優先される場合が多いのではないかと思います。

しかし、不動産が活用されていることは、場(地域)にヒト・モノ・カネの新たな流れを創造することです。つまり、お金という経済的価値の創造だけではなく、その場所の活力、地域の魅力を発掘、引き出し、創造することでもあると思います。

このような視点で公共(公的)不動産の利活用の可能性を「開いてゆく」ことは、行政ができるこれからの地域の魅力作り手法の一つとして有用なものになるのではないかと思います。

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