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コロナ時代の地域社会学とまちづくり #01 去年の授業の陳腐化

 「新しい日常」「新しい生活様式」とは

 withコロナ afterコロナ と言い方はいろいろあるが、新型コロナウイルスを体験した我々が受け入れざるを得ない「新しい日常」「新しい生活様式」とはどのようなものになるのだろうか?

私の仕事である大学の授業や専門である地域社会学、まちづくりを通じて考えてゆきたい。

 新型コロナの一番のインパクトは何であったのか

 私にとっての新型コロナの一番のインパクトは、外出制限でも、通常の対面授業ができなくなって、ZOOMで遠隔授業をしなくてはいけなくなったことではない。去年まで使っていた授業内容が、コロナ時代において全く意味がなくなったことである。

 1年生必修の「キャリアプラン入門」の場合

 私は、昨年度より「キャリアプラン入門」という1年生必修の授業を担当している。いわゆる「キャリア」に関する講義もするが、目玉は、学外のゲストスピーカーをよんで話をしてもらい、キャリアモデルとすることで、就職と大学生活を結びつけることにある。学生の就職希望の多い公務員や教員、地方創生の時代なので地元経営者やマスコミの方に登壇してもらい、最後にどういった学生生活を送ったらいいかのアドバイスをもらっている。

 ゲストスピーカーは教員の授業より人気

 地域社会で活躍している社会人の話を「生」で聞くところに意義がある授業である。ただ、本校の場合、20代、30代といった学生と年齢の近いスピーカではなく、40代、50代以上のスピーカーになってしまっている。もちろん、実績のある人を選りすぐってきてもらっているが、彼らの経験した学生時代と今は違うし、時代状況も違うので意味があるのかなと思いながら授業を進めているが、毎回とっている授業アンケートをみると、我々教員の話よりは人気があったりする。

 今必要なのは、戦時中大学生活を送った人の話?

 新型コロナウイルスにより、当然、対面授業は禁止され、遠隔で授業をすることになった。もちろん、これまで通りにゲストを呼んで授業をすることも考えたが、彼らを、このコロナ時代にゲストスピーカー、キャリアモデルとすることは適切なのか?と疑問がわいた。誰もコロナ時代の大学生活を経験した人はいない。コロナ対策を戦時中になぞらえる風潮もあるので、呼ぶなら戦時中大学生だった人が適切なのかとも思ったりするが、、、、、。

 ZOOMを使えることがキャリアの土台? 

考えた挙句、今やっていることは、ZOOMによる遠隔授業を経験してもらい、ブレイクアウトルームを何回もやりながら、ネット上でもきちんとコミュニケーションが取れるようになることである。

 就職活動もすでにネット面接などが行われていたが、今後は一層拍車がかかると思われる。「普通」にはなすことは対面ではなく、ネットを介してのコミュニケーションになってゆくと思われる。

 必要なのは、先人の話より、鉄板の自己紹介?

 コロナ時代、コミュニケーションの土台が変わってしまった。従来のSNSなどのネットを介したコミュニケーションだけではなく、ZOOMなどの遠隔会議を用いたコミュニケーションをとれないと、友達もできない、サークルにも入れない、、、、、、。ということで、ひとまず、鉄板の自己紹介をつくって、短時間で遠隔で相手との距離を縮める練習を毎回授業に取り入れている。

 自分の大学時代、サークルの飲み会で自己紹介を何回もしたのと同じような気もしないでもないが、、、、、、

 コロナ時代の適切な授業とは

 オンデマンドの授業や教員の一方的なライブ配信は、考えてみると、放送大学という歴史ある計算されたコンテンツがあり、わざわざ個々の教員が労力をかけて作るべきものなのであろうか。

 ネットの世界には我々がするよりも学生を引き付ける動画がいくらでもある。授業のテーマを検索して、その動画やネットを見るほうが、コロナ時代の授業としては適切かもしれない。

授業を蝕むコロナウイルスへの治療薬は

 何となく、教室に行くことでわかった気になるという、小学校以来みにつけてきた我々の常識が通用しなくなったコロナ時代。既存の授業をただ遠隔にしたところで、それはもはや意味がない。これまでの授業スタイルの根本から破壊され、去年まで蓄積してきた我々の授業のノウハウを蝕み、陳腐化させ、死に追いやっている。

コロナ時代の遠隔授業は、去年までの授業を単にネット配信することではなく、授業内容もコロナ時代に合わせて書き換えてゆく作業であると思われる。

未だ、治療薬の開発されていない新型コロナウイルスであるが、蝕まれている授業への治療薬は、我々の知性であり、既存の学問体系をコロナ時代に書き換えることである。

 今後の日々の授業やまちづくりの実践を通じて、私の専門である地域社会学やまちづくりに関してこれまで得た知識を、コロナ時代に対応させて書き換え、新しい日常、新しい生活様式に対応する地域社会学・まちづくりを今後示してゆこうと思う。


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