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家にいながら、世界を旅する方法。自分の気持ちを切り替えるための「体験の処方箋」【25選】

ずっと家にいる。びっくりするくらい家にいる。朝起きて、ご飯食べて、夜寝て、また起きて。こんなにも長く家の中にいるのは、人生で初めてなんじゃないかというくらい、ずっと家の中にいる。緊急事態宣言が出されたから、たぶんこれからも家の中にいる。医療従事者や生命科学者、公衆衛生の関係者は命を削ってこの世界的危機を乗り切ろうとしているのに、僕にできる世界への貢献は「手を洗って家にいること」だけ。なんという無力。

3月は気が滅入ってしようがなかった。人と会えないし、遠出できないし。無力だし。でも嘆いても仕方がない。あれこれ試して、家の中で健やかに生活するコツを探した。リモートの今だからこそ非日常体験を取り入れ、初めてやることを増やしてみた。結果、家にいても旅はできると気がついた。

元々公開する予定はなかったのだけど、同じように家の中で鬱々としてる人がいるのではないかと思って、頑張って実用的に書いてみることにした。気がついたら1.5万字を越えていて、読む人がいるのか不安になってる。届くべき人に届けられるととても嬉しい。
題して「体験の処方箋」。お付き合いいただけるとありがたい。

ずっと家の中にいると、気が滅入ってくる。毎日同じ空間で過ごしていると、1日の時間感覚が歪んでいく。時間がすぎるのが早くなる。記憶のフックから、位置情報と視覚情報が失われるので、記憶の濃度が薄くなる。人生の濃度が薄くなる。ああ、遠出したい。美術館いきたい。陽の光に当たりたい。演劇観に行きたい。美味しいご飯食べにいきたい。友達や仕事仲間に会いたい。あれやこれやを望みながら、最初は鬱々と過ごしたりしていたけど、あるとき観念した。

普段はこう鬱々としたときは、旅に出て非日常体験に身を浸して、自分の気持ちやモードを切り替えていたのだけど、今はそれが叶わない。なので、家の中の非日常体験を探すことにした。普段やらないことをたくさんやった。新しい体験を通じて、自分のモードを切り替えることができれば、もう少し日常に起伏を作ることができると思った。

昔こういう記事を書いたことがある。自分の出身が薬学ということもあり、いろんな体験を「薬」に見立てたら、自分の感情や認知に介入できるのでは?という発想だ。

「カテドラル効果」をご存じでしょうか。
日本語に直すと「大聖堂効果」であるこの言葉。天井の高い空間にいると、人は知らず知らずのうちに抽象的・哲学的なことを考えてしまうというものだ。(...) どうやら、人間の思考・気持ちというものは、僕らが考えている以上に「どういう環境でどういう体験をするか」に影響されるものらしい。
逆に考えると。もし自分の状態がさまざまな「体験」からつくられているならば、どんな体験をするかによってある程度自分をコントロールできるはず。それが今回のテーマである「体験の処方箋」だ。病気になると病院で「薬を処方してもらう」のと同じように、自分の状態を変えたいときは自分に「体験を処方する」。(...)

鬱々としたフルリモート生活を変えるために、今こそこれだと思って色々やってみた。僕のなかで明らかに効果が感じられたものを、7つのカテゴリで整理してみた。
ある程度は科学的な人間なので、エビデンスがあるものも多いが、中には個人的な感覚をフィードバックにしているものもある。ご容赦ください。

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【1. 朝、身体を起こすための処方箋(オフ→オン)】

通勤がなくなったことで、朝の時間の境界線が薄くなった。油断すると寝すぎたり、起きていても昼過ぎまでぼーっと過ごしてしまったり。あるいは早く起きすぎて机に向かったり。「朝」という時間の境界線が曖昧になったことで、心と身体がどうにも同期しない。
今まで通勤によって強制的に導かれていた「朝」の時間を改めて主体的に設計し、部屋の中にいながら身体を起こすための体験の処方箋

①起きたらすぐ着替える。

もうこれは笑っちゃうくらい単純なことなのだけど、効果は抜群だ。「外に出ようと思ったら、そのまま出られる」という状態に自分がなっているということが重要だ。とりあえず朝起きたら、頑張って着替えてみる。

肌に接する素材が大事なのか、着替えるプロセスで全身の触覚が刺激されることが大事なのかわからないが、もっとも効果があったのはこれだった。逆に、平日と土日の区別がつきにくいという問題も、土日は起きた後も着替えずにしばらくパジャマでいると、「土日って感じ」を楽しむことができる。なんなら二度寝できたりもする。ああ土日。最高。

②天気がよいときはカーテンと窓を開ける。太陽にあたる。

春になってきて、朝が気持ちよくなってきた。
起きてすぐに、カーテンを開けて、窓を開けるようになった。陽の光を浴びて、風を体に当てる。体内時計は太陽の光でリセットされることは生物学でも実証されている。定期的に朝日の光を浴びることは、確実に寝起きをよくしてくれるし、家にいると感じることを忘れがちな「天気」のことを思い出すことができる。

「天の気」と書いて「天気」とは、昔の人はよく言ったもので、人の気持ちは天気に大きく左右される。晴れの日だと気持ちがあがって何かしたくなるし、雨の日だと気持ちは静かに落ち着く。

③珈琲豆からハンドドリップで珈琲を入れる。香りを感じる。

珈琲を淹れるようになった。豆からガリガリと削るところからやるのが重要だ。コーヒーミルは持っていなかったが、これを機に買ってみた。Harioが安くて信頼できる。お金を出せばかっこいい奴も買える。

ガリガリ腕を回すというちょっとした運動をして、珈琲を挽いた時の香りが漂う頃には、あなたはもう寝起きから完全に覚醒している。ハンドドリップの美味しい淹れ方は、こういう記事を読みながら練習してるとこだ。
紅茶でもいい。紅茶の場合は蒸らす時間をしっかりとってみよう。

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【2. 仕事モードを立ち上げるための処方箋(プライベート→ビジネス)】

朝の時間と仕事の時間を切り分けよう。ずっと家にいると、プライベートとビジネスタイム、平日と土日の区切りがなくなる。結果、働きすぎたり、働かなさすぎたりする日が出てきてしまう。
家の中で、プライベートと切り分けた仕事モードを立ち上げるための体験の処方箋

①外に出る。擬似的に通勤する。

リモートになって一番驚いたのは、通勤時間は僕にとって必ずしも不要なものではなく、実は身体のモードを切り替えるために必要な時間だったということだ。

仕事をする前、天気が良いときは外を歩くことにしてみた。何かしら用事を作るとなお良い。ゴミ捨てでも、近所のベーカリーにいくでも、カメラを持って朝の空気を写真に撮るでも、なんでもいい。不要不急の外出を自粛しないといけないなら、必要な外出に不要不急な散歩を内包させよう。歩きながら、今日の仕事に思いを向ける。何をしよう、どの仕事を片付けよう。これはまさに、擬似的な「通勤体験」。家の周りを一周するだけでもいい。電車に乗るよりも100倍快適だ。出る前と帰ってきたあとの部屋の空気は全く変わっている。

②座る場所を固定する。見える景色を変える。

部屋のレイアウトにもよるが、プライベートで座る場所と、ビジネスで座る場所は変えた方が絶対にいい。見える景色によって、人の気持ちは作られているから。僕の場合は、机の上に何も置かなくしたこともあり、仕事をするときは机の場所を動かしている。壁際にスペースをつくって、オンラインmtgで背景が映っても恥ずかしくなくなったりもする。

座る場所を、目的とセットでいくつか決めた。「これをするときはここに座る」の要領だ。用途を細分化できるとなおいい。僕にはリビングの居場所が6箇所ある。仕事するとき、集中して読書や勉強するとき、だらけて漫画とゲームに沈むとき、ご飯を食べるとき、映画を見るとき、ピアノを引くとき。広い部屋ではぜんぜんない。超狭い。でも、同じ空間を違う用途で使うことは、ふすまと間仕切りで空間を切り替える和室文化を持つ僕らは得意なはずだ。座る場所と見える景色を変えることで、自分のモードをコントロールすることができる。

③誰かと一緒に働く。仕事してる人の存在を感じる。

世の中には、家にずーっと一人でもパフォームできる素晴らしい人もいるが、僕にはそれが難しかった。どちらかといえばカフェや職場の方が仕事が捗るタイプで、かつ、人と会うことが制限されてどうにも生産性が落ちてしまった。特に、企画や執筆など、非タスク型の仕事に向き合うときには、ゆるやかな緊張の圧力を作る必要があった。

そんなとき、オンラインを通じて働いてる人の空気を感じるようにした。職場のチームでもいいし、友人でもいい。mtgをするわけではなく、とりあえずvideo chatを繋いで一緒に働いてみる。マイルドな相互監視だ。
博士論文を書くためにzoom相互監視部屋を作ってる人たちもいたし、こういうことをやっている人もいる。

僕もうっすら仲間に入れてもらっていたりして、オンラインでの「初めまして」が増えてとてもよかった。

GitHubなどでタスクをフルリモートで管理することに慣れているエンジニアの場合は不要かもしれないが、家の中に擬似的な職場(パブリックな空間)ができることは、身体を仕事モードに変えてくれる。生産性も自然と高くなっていた。

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【3. 生活に余白を作り、家の中で遊ぶための処方箋(理性→感性)】

ずっと家の中にいると、仕事でも家事でも必要なことだけをやり続けてしまって、生活から余白がなくなる。「余暇」と「余白」は違うものだと僕は思っていて、家の中で余暇ができると大体だらける。いや別にだらけてもいいのだが、だらけた後の「ああだらけてしまった」という後ろ暗い後悔は自分を蝕む。うまく「余白」をつくれると、普段考えないことを考える。感性のスイッチをオンにすることができる。それが、家での生活をより楽しくしてくれる。
家での生活に、心地よい余白をつくり、感性を引き出して遊ぶための体験の処方箋。

①お花と植物を飾ってみる。毎日の変化に気づく。

リモートになるまでは、僕にとって花とは誰かに贈るためのもので、自分の部屋に置くなんて一度も考えたことがなかった。でも、在宅生活で不要不急の外出を完全に控えて、人と会わずに気が滅入ってどうしようもなかったとき、気がついたら近所の顔見知りの花屋に駆け込んでいた。

家の中に「人間とは異なる時間軸で生活している何か」がいるというのは素晴らしいことで、毎日部屋に何かしらの変化が訪れる。昨日咲いてなかった花が開いてたり、悲しいことだけど枯れていたり。その変化に気づくたびに、何か自分の中の感性的なスイッチがくすぐられる。1日1回水を変えるのは面倒臭いと思っていたけど、今や変化に気づくための感性のスイッチだ。

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エントロピーの法則というものがある。ものすごく雑にいうと、「放っておくと熱いお湯は冷めて水になるがその逆はない」「放っておくと部屋は散らかるが勝手に片付くことはない」「宇宙は誕生してからずっと無秩序に向かう方向に進み続けている」みたいな宇宙の大原則なのだが(ざっくり)、植物とはエントロピーに抗う生命現象であり、僕にとって植物に触れることは、宇宙のエントロピーと、それに抗う生命現象を実感することだった。水が重力に逆らって下から上にいく、花が開いたり閉じたりする、そして最後は枯れる。世界はなんてダイナミックなんだろうと思う。僕にとって植物を見ることは宇宙を感じる処方だと気がついた。マニアックですみません。突然早口で喋り始めるオタクになっちゃった。

話を戻そう。部屋におく植物の話だ。変化が好きでズボラな人(僕のことだ)は、エバーフレッシュがおすすめだ。毎日朝と夜で、葉っぱが開いたりとじいたりして変化がある。育てるのもとても簡単。

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季節感を感じるのが好きな人は(僕のことだ)、今の季節だとソメイヨシノもいい。たぶん花屋に売っている。少しずつ花が咲いて、散って、葉桜になっていく。部屋の中にある季節感の化身だ。

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②楽器を弾く。自分で音を奏でてみる。

時間を見つけて楽器を弾くようになった。去年始めたピアノにはかなり救われている。まだまだ下手くそだが、1ヶ月に1曲ずつくらい弾けるようになることを目指している。

ギター、ウクレレ、ハーモニカ、リコーダー、口笛、歌、パーカッション、なんでもいい。コンサートやライブにいけない今だからこそ、自分で音楽を奏でてみる。下手でもいい。むしろ下手な方がいい。そう言い聞かせないとやってられない。大事なのは自分で音を奏でているという事実、そういう時間が生活の一部にあるということだ。身体を通じて、リズムに乗ってみよう。音楽をしてるときの自分は、いつもの自分とは違う。当たり前だ。身体が持っている固有のリズムを音楽と同期させるのだから。

普段の職場で突然歌い出すことはできない。通勤の満員電車では、体を揺らすことは許されない。でも、リモートワーク中はいつだってそれができる。どうせならポジティブに捉えよう。機会があれば、誰かと音を重ねてみたりするのもいい。僕はなぜか友達とZoomでギターとピアノのセッションをした。笑っちゃう。どうしようもないくらい全然あわなかったけど、とてもよかった。星野源とのセッションなんて最高の贅沢だ。天才。

③カメラの練習をする。日常を切り取る。

iPhoneのカメラロールをたどると、遠出をしたときや外でご飯を食べたときの写真はたくさんあるのに、案外家の中での日常の写真はぜんぜんない、ということがよくある。僕もカメラを買うまでは、写真は「非日常」を切り取るものだと思っていた。

去年、ひょんなことからFujifilm X100Fというカメラを、その美しさに一目惚れして買ってしまったのだけど、在宅生活ではこれが大いに活躍している。「写真の練習をする」ことが、日常生活の変化を見つける処方になっている
道端に生えていた名も知らない黄色い花を一輪挿しにして写真の練習をしたりした。水につけてるだけなのに、1週間以上も昼に花が咲き、夜になると閉じているを繰り返している。野草強い。もっとうまく撮れるようになりたい。

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ふととなりのトトロのお父さんとメイを思い出したりもした。

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④BGMを変える。聴覚で身体のモードをつくる。

2ー②では「座る場所」の処方を出したが、今度は「聞く音楽」の処方だ。在宅勤務だと一日中音楽をかけている人も多いだろうが、やることに合わせて聞く音楽は変えた方がいいと気がついた。Spotifyの「シーン」をこんなに使うことになるとは思っていなかった。Morning / Chill / Concentration / Workout / Night など。

僕は、朝はKitriPenguin Cage Orchestra、仕事をするときはHideyuki Hashimoto、夜はUmitaro AbeGoldmundなど、作業の最初にかけるアーティストを決めている。そこからRadioで勝手に流す。曲調と作業をセットでルーチンを作ると、パブロフの犬的に条件付けが進んでいくのをじわじわと感じる。

⑤2時間に1回窓を開ける。立ったついでに伸びをする。

定期的に窓を開けたり閉めたりすることを意識するようになった。部屋から二酸化炭素を追い出そう。普段のオフィスビルだと窓を開けられないが、リモートだと開け閉め自由だ。花粉も感じなくなってきている。人権が戻りつつある。CO2モニターを置くのもいいだろう。部屋のCO2濃度が高くなると生産性が下がることは有名だ。集中してデスクワークをしていると換気を忘れがちだ。部屋のCO2濃度が1000ppmを超えると眠気を誘発する。広さにもよるが、大人が部屋にいると2時間くらいでそのくらいの濃度になっている。なお、エアコンには空気循環機能は基本的についてない。一番手っ取り早いのは窓を開けることだ。

ついでに伸びと深呼吸ができたりするとなお良い。肺に空気が入るし、血行もよくなる。呼吸は吸うことよりも吐くことを意識しよう。「吸った2倍吐く」ことがマインドフルの原則だ。全身の細胞にフレッシュな酸素を届けよう。肺胞と赤血球は偉大だ。

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【4. 身体と精神を健やかに保つための処方箋(脳→身体)】

リモートワークでは基本的に家から出ないので、油断すると身体を全く使わずに1日を終えてしまう。1日中、TVやスマホや PCのディスプレイを通じて「情報」だけを摂取しがちだ。五感のうち、視覚と聴覚以外は全く使わないということもしばしばだ。運動不足になるのはいうまでもない。身体性が欠落すると、精神は不衛生になる。健全な精神は健全な身体に宿るからだ
身体性が欠落しがちな在宅生活で、身体と精神を健やかに保つための体験の処方箋。

①手が込んでいる(ように見えて実は簡単な)料理をつくる。本場の調味料でその国を旅する。

身体は食べたものからできている。栄養分はもちろんそうだが、それと同じくらい味覚を通じて得られる「美味しい」と感じる体験も大事だと僕は思う。リモート以前は、できるだけ時間がかからず、栄養価(主にタンパク質と良質な脂質)が取りやすいレシピや、時間がないときはUber Eatsとか外食ばかりを繰り返していたけど、この生活になって、それではじわじわと気が滅入っていくことに気がついた。自炊は本当に素晴らしい。ご飯をつくるプロセスは、嗅覚や触覚、触覚含めた五感をつかった全身運動だ。

僕は基本的にズボラなので、自炊するとなっても、できるだけ手をかけずに美味しいものが食べたい。料理レシピを手間と美味しさという二軸でめちゃめちゃ単純化すると、こんな感じだと思っていて(知らんけど)

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必ずしも手間をかければかけた分だけ美味しくなるというわけではなく、賢い手間のかけ方があるはずなのだ。

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で、僕はこの左端の「一手間で美味しさ爆上がり領域」をずっと探している。一見して手が込んでいるように見えるが、やってみると大抵とても簡単なレシピたち。長時間放置するオーブン料理とか、調味料がちょっと変わってるエスニックとか。例えばだけど、僕が3月からじわじわ作っているのはこの辺りだ。

スパイスカレーナイル善己さんのレシピはおすすめ。kindle unlimitedで読める。水野さんのnoteも。スパイスを一式買うだけで人生が豊かになる。そして実は簡単。ほぼ失敗しない。信じてほしい。)
オーブン料理。鶏モモのグリルとか。(オーブンに入れて放置するだけ。タンパク豊富で体にもいい。デロンギのコンベクションオーブンがあると捗る。ちと高いけど、社会人になったときに買って以来ほんとよく使ってる)
低温調理。鶏ハム、ローストビーフとか。(低温調理器を買ってしまった。BONIQのレシピサイトが良い。ハイパータンパク質取れる。びっくりするくらい柔らかくて美味しい。鶏むねを大量に仕入れよう。)
サラダ(トマト、サニーレタス、パプリカ、レモン、クリームチーズあたりをがっさり千切ってオリーブオイルと塩胡椒。大葉とポン酢醤油で和風にしてもいい。水切り器があると捗る。食物繊維取らないと歩かないので便秘になる)
・ガパオライス(調味料を揃えるだけで、やってることは超簡単。この辺りのレシピがおすすめ。辛くて体が熱くなるのもいい。)
・麻婆豆腐(同上。感動的に美味しい。辛い/辣い。少し手間をかけるレシピだとこうなる。痺れる感覚は中華じゃないと味わえない。花椒最高)
・カルパッチョ(真鯛とか。簡単なくせに超美味しい、そしておしゃれ。オリーブオイルとピンクペッパーとバジルを散らすだけ。このへん。)
・魚捌くこの動画みて魚さばけるようになりたかったので。これは最初は手が掛かるけど慣れれば簡単。捌き立ては明らかに美味しい。今だと真鯛とか鰯とか。近所の魚が安い鮮魚店かスーパーを見つけると捗る)
・ベーグル(ごめんこれは多少手が掛かる。でも作ってみたかったので。そしてまだ作ってないけど。多分間違いなく美味しい。レーズンかサーモン挟んでクリームチーズつけて食べるのが夢)

毎日自炊するのだから、せっかくなので普段は使いきれないような大口の食材を買うようになった。「旬」という概念は素晴らしい。美味しいのに安い。そして季節を感じられる。いいことしかない。
普段だと買わないちょっと変わった調味料やスパイスも買ってみる。「調味料」を発明してきた人たちはすごすぎる。同じ食材なのに、全然違う味わいが作れる。初期投資としてはちょっと高く感じるかもしれないが、かけるだけで明らかに美味しくなるので、ROIの高い投資だ。世界の食文化さん本当にありがとう。

本場の調味料を使って地域性の高い料理をつくれば、その場所に旅している気持ちになれる。四川や、地中海、イタリア、タイ、北インド、南インド。調味料の香りは、その土地の香りだから。家をリモートミラノやリモートデリーにしてみよう。

レシピを公開しているレストランも出始めていたりするので、それを作ってみるのもいい。お店にいる気持ちになれる。渋谷o/sioさんとか。

健やかさとはちょっと逆行するけど、お菓子を作りたい気持ちにもなっていたりもする。そのうちやることがなくなったら作ろうと思ってる。いいレシピがあれば教えてください。

②ヨガ/ストレッチをする。身体に筋刺激を入れる。

1日家にいると、代謝が激落ちするので、身体に筋刺激を入れて血行をよくしなければならない。Dr.ストレッチには行けなくなってしまったので、セルフストレッチとヨガをやっている。特に立って歩く頻度が減るので腰のケアは大事だ。大臀筋のセルフストレッチとか。このアカウントとかは動画でストレッチをまとめてくれていてとてもわかりやすい。

ヨガは正直語れるほどまだ詳しくないのだけど、止めることのない深い呼吸と、適度な筋刺激が心地よい。ヨギーの友人によると、世界中のヨギーがオンラインに移行しているようだ。オンラインヨガ、一度やってみたけど正直とてもよかった。テレカンと違って、空間を繋げるので、テレイグジスタンス感がある。自分の部屋とは思えない。合掌🙏

③筋トレをする(全然できてない)

ジムにいけない。筋トレしなきゃ。リモートブートキャンプとか誰かやってないかな。にゃーん。

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【5. 社会性を保つための処方箋(孤立→社会)】

人と関わらず、名実ともに「社会からリモート」してると確実に病む。一人暮らしだとそのリスクは大きい。恐ろしいことだけど、孤独死する人も出てくるだろう。家族と一緒に住んでる人でも、同居人との対話がうまくいかずに逃げ場がなくなることもあるだろう。適切に社会性を保たなければ人は生きていけない。どうすればいいだろう。

社会とは、異質なものとの安心して遭遇できる場のことだと僕は思っている。自分の考えていること、自分の知っているもの、自分の持っているものとは異なるもの、異なる人と出会うこと。身近な人の中にも、自分とは違う新たな一面に向き合うこと。そういうことを安心してできる場のことを「社会」と呼ぶのだと思う。
オンラインで生活していると、エコーチャンバー効果とか言われるが、テレビ会議にしてもチャットにしても、少しずつ自分と同質なものに囲まれるようになっていってしまう。「初めまして」が激減する。意識的に異質なものとの出会いを作り、社会性を保たなければならない。そのための処方箋。

①近所の商店街まで歩く。最寄りのスーパーではなく、個人の鮮魚店・肉屋・八百屋に行ってみる。

徒歩15分圏内にお気に入りの街を見つけられると良い。思いがけないお店や人との出会いに興じよう。Social Distancingだからこそ、知らない人と対面で交わす一言を大事にするようになった。

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オススメは、個人経営の鮮魚店、肉屋、八百屋を探してみることだ。リモート以前は、正直そんな時間も余裕もなかったので知らなかったのだけど、案外探してみれば近所にあったりするものだ。街を出歩く口実にもなるし、お店のおばちゃんに覚えてもらえるし、食材について教えてもらえる。そしてお店にもよるが、流通・卸マージンが乗せられてないので大抵安くて品質がいい。小さくカットされていないかもしれないが、せっかくなので大口で買って色々なレシピに使おう。

②久しぶりのあいつ・あの人にチャットしてみる。自分の"社会"を少しだけ広げる。

近所に住んでる旧友と、ロンドンにいるあいつ。普段だったら前者は近く、後者は遠い。でもそれがフラットになっているのが今だ。
ふと誰かのことを思い出したら、勇気を出して連絡してみるようにした。もしかしたら、Social Distancingで鬱々と孤独感を感じている友達を少し元気にすることになるかもしれない。僕もダウナーの波があったときに、久しぶりの友人からメッセをもらってとても嬉しかった。ダウナーになると、なった側からは発信しにくい。社会性を発揮するにはエネルギーが必要だし、自覚のないうちに沈んでいくのがダウナーというものだ。運良く自分がそうでないときは、Giveする側になろう。

何か普段と違う雰囲気を感じたら「僕に何かできることはある?」を口癖にすることにした。言われてとても嬉しかったから。
素晴らしい取り組みをしてる人には「あれ、素晴らしいと思ったよ」と連絡してみよう。偶然知り合いと会うということがほとんどなくなっているこういうときだからこそ、意識的に言葉の贈与の循環を回していかないと、ストレスと孤独にすりつぶされてしまう人が出てきてしまう。

③オンラインで「雑談」する。アジェンダのない不要不急の会話を楽しむ。

オンラインの会話には、往往にしてアジェンダがつきものだ。わざわざ接続するメディアだから、「せっかくなので」「ついでなので」が発生しにくい。これは仕事のテレカンではいいことづくめだ。アジェンダに沿わない会話が生まれにくいから生産性は上がる。でも、すべての会話がアジェンダという合目的性に塗れてしまうことは、人の生命力を少しずつ削いでいく。

「雑談」の時間をとるようになった。アジェンダのない、不要不急の会話。お酒が好きならオンライン飲み会でもいい。コロナ以前は、長時間オンラインで話すなんて、skypeで寝落ちするまで一晩中話し続ける遠距離恋愛中の恋人同士くらいのものだったのに。まさか人類が「あなたと話したいです」だなんて愛に満ちたメタメッセージをこんなにも発するようになるなんて思ってもみなかった。インターネッツがあってよかったなあと思う。

知っている人であれば僕はいつでもハイパーウェルカムだし、僕からも連絡するかもしれない。雑な話をしよう。

④Switch + Discordはすごい

それを言っちゃあ系ではあるのだが。でもゲームはやっぱおもしい。どうぶつの森はじめたので、お友達からよろしくお願い申し上げます。任天堂さんありがとう。

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【6. 想像力を掻き立てるための処方箋(現実→想像)】

GWがなくなり、いよいよ遠出が叶わないことが確定した。劇場は閉まり、公演は中止になった。海外なんてもってのほかだ。それなら、家にいながらどこかへ旅立とう。物語の世界や、科学の世界や、舞台の世界に。NetflixやAmazon Primeは言うまでもなく最高の友だけど、たまにはグローバルプラットフォームに背を向けてみよう。
自宅をひとつのサイトスペシフィックな空間に変え、自分の内面の想像力を掻き立てるための処方箋。

①読みたい本を積む。動線上に暴力的に積んでみる。

普段から積ん読をしている人は多いだろう。ただ(積ん読をする人なら共感してくれるだろうが)往往にしてその本たちは完全に風景の一部になっている。視界に入っても何も感じない。数年前に買ったきり、背表紙だけ見続けて一度も開いていない本も多くある。
本棚に、新しい目を向けてみることにした。気になる本を選んで、試しに日常生活の動線上に暴力的に積んでみた。手の届く場所、目に入る場所、どんなところでもいい。気になったら手を伸ばしてしまう環境をつくってしまう。

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たまには、積ん読の置き場所を移動させるのもいい。僕はピアノの上とトイレに置いている。ピアノを弾くときは面倒臭いけど、いちいち移動させてる。いちいち意識をかき混ぜて、無意識の底に沈殿していかないようにするのだ。一冊、また一冊と手にとって、時に本棚の本と入れ替えて。必ずしも読了する必要はない。手にとって、開いてみるだけで、あなたの想像力は少しだけ広がる。思いがけない一文が目に入ってくる。それだけでいい。その「思いがけなさ」が日常を新しくしてくれる。

②夢想旅行をする。彼の地に思いを馳せる。

ここ10年間、異常に海外に行きやすくなっていたのですっかり忘れていたが、もともと海外はとても遠い場所だった。行きたいと願ってもそう簡単に行けない。その状態に戻っただけだ。

行けなくなると、より行きたくなる。押さえておいた航空券はキャンセルになる。悲しいけれど、前向きに捉えよう。一時的に距離ができることは悪いことではない。なぜなら訪れたときの感動が格別になるからだ。
いつか彼の地にたつ自分を夢想する。その地で生活する人に思いを馳せてみる。TRANSITは最高だ。「いつかまた世界で」の言葉が沁みる。その日を心待ちにしよう。

地球の歩き方もkindle unlimitedで無料になってる。

③美術館・舞台・映画・パフォーミングアーツをみる。

多くのコンテンツがオンラインに移行した。ここはそれぞれの好みのものがあると思うし、日に日に情報がアップデートされるのでここでは多くは語らない。

Google Art& Cultureを漁ったり、松竹チャンネルで歌舞伎みたり。ただ白状すると歌舞伎は家の画面だと正直物足りなくて最後まで観れなかったけど、追っていってみようと思っている。
太田記念美術館がTwitterで発信している#おうちで浮世絵も最高だ。なんてかっこいい構図なんだろう。

3年前に公開されて一時期沼のようにみていたラーメンズのコントもいい。100本以上youtubeで公開されている。ちょうど岸田さんのラーメンズ愛に溢れたnoteがバズっていて、おすすめはこちらに譲るけど、僕も「TEXT」と「ATOM」の公演をシリーズで順番にみるのが最高だと思う。順番はこの辺に載っている。初めて「新噺」をみた時はこれはコントではなくアートだと思った。何もない真っ黒な舞台の上で、言葉と体の動きだけで想像力をかきたててくれる珠玉のパフォーミングアーツたち。

鑑賞会をするのも良いかもしれない。オススメがあれば教えて欲しい。

④オフラインの状態をつくる。スマホの電源を切る。

もともとスマホは「移動体通信」だったのに、移動してないのにずっとスマホを見ている。Always onは今に始まったことではないが、オンラインが生活の基幹にインストールされたことで、よりこの傾向は強まっている。

強い意志を持って、オフラインの時間をつくることにした。
スマホの電源を切ろうと書いたが、理想は、スマホを気にせずにすむくらい集中できる何かを見つけることだ。
映画館や劇場に行く時間は、強制的にオフラインになれる貴重な時間だった。それがなくなった今、意識的にオフラインの時間を作らなければならない。
おすすめは長風呂と運動と楽器を弾くこと。瞑想とかも考えたが、まだできていない。情報は生存に必須だけど、常に情報に追いかけられている。このまま行くと、人は情報に殺されてしまう。

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【7. よい眠りを導くための処方箋(覚醒→睡眠)】

長くなってきたがいよいよ最後だ。
ずっと家にいると、ディスプレイを見続けたり、身体疲労がないので眠りに落ちにくい。目が冴えてだらだら夜更かしをしたり、深夜まで働き続けたりすると、睡眠も浅くなる。言うまでもないが、心身を健やかに保つために睡眠は何よりも大事だ。睡眠記録アプリで睡眠深度をトラッキングするのもいいだろう。僕はPillowを使っている。
質の高い眠りを導き、1日を穏やかに終えるための体験の処方箋。

①お風呂に入る。入る時間は寝る1-2時間前まで。

リモート生活は血行と代謝が悪すぎるので、シャワーではなくお風呂に入る。注意すべきは、お湯はあまり熱くしすぎないこと。湯船に浸かるのは寝る1-2時間前までにすること。副交感神経を優位にするためだ。

お風呂上がりは緩やかに筋肉を揉んだりストレッチをしたりしている。血行がキープされてぐっすり眠れる。汗をかかないくらいがちょうどよい。水分はしっかりとるのは大事だが、冷たい水のがぶ飲みしない。体が火照るとついやりたくなるが、体表は熱いのに内臓が冷えるとだいたい風邪をひく。

②お白湯を飲む。

寝る前にお白湯を飲むようになった。これは整体の怪しいおじさんに言われてやり始めたものなのだが、びっくりするくらい気持ちよく寝落ちできる。これを言うと友人からは「女子か」と言われるけど、素晴らしいプラクティスは素晴らしいんだから仕方がない。本当に睡眠薬のように寝落ちできる。あれはなんなんだろう。

③寝る前15分は間接照明に切り替える。

寝る前15分の照明には気を遣うべきだ。できれば眠るモードの照明を用意する。電球色の間接照明がおすすめだ。これも一つの条件付けで、この照明になると眠くなるというルーチンを作る。パブロフの犬になってる。
加湿器をつけたり、ラベンダーのエッセンシャルオイルを垂らしたりするのもいい。少し前に買った無印の「おやすみ」ブレンドが最強だった。残念ながら、バズって今は品薄になっている。ASMRを聴く人や、ラジオをつける人もいるみたいだが、僕は音があると眠りが浅くなるのでやらない。

寝る前のスマホはできるだけ見ない、とはよく言うけど、正直僕は無理なので、画面をSmart invertモードにして白黒反転させている。iphoneだと電源ボタンを3回押すと出てくるはずだ。強い視覚刺激は避けたほうがいい。

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以上、7カテゴリー、合計25個の「体験の処方箋」だ。

緊急事態宣言になって、医療現場や政策の最前線で戦う人がいる中で、自分は家にいることでしか貢献できないことが歯がゆかった。何かできることを、と考えてFolding@homeにマシンパワーを提供したりもしたのだけど、もう少し自分に引きつけた何かができないかなあと考えていたら、気がついたらここまで書いてた。

ここまで読んでくださった方がいれば、あるいは少しでもリモート生活が良くなるヒントが見つかった方がいれば、とても嬉しい。人類がこの危機を乗り越えることに、本当に微力でも、少しでも役に立てることを願っています。


(追伸)
最後の最後に一つだけ蛇足です。

赤の女王仮説」をご存知だろうか。
ルイス・キャロルの小説『鏡の国のアリス』に出てくる赤の女王の

It takes all the running you can do to keep in the same place.
同じ場所にとどまるためには、絶えず全力で走っていなければならない

という言葉にちなんだ、
生物種は、変化する外部環境に合わせて絶えず進化なければ絶滅する」という有名な進化論の仮説だ。

実はもう一つ、これと対をなす「白の女王仮説」があるのはご存知だろうか。赤の女王と対局にいる白の女王の

Sometimes I've believed as many as six impossible things before breakfast.
時には、朝食の前に、6つもの「あり得ないこと」を信じよう

という言葉にちなんで、
生物種は、自ら変化を生み出し、進化し続けなければならない」
という赤の女王仮説とセットになっている進化論の仮説だ。(*)

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僕はこの2つの仮説がセットになっていることがとても好きで、外部環境に適応する赤の女王だけではだめなのだ。環境がどうであれ、自分で自分を変え続ける「白の女王」が必須なのだ。

これまで「時代の変化」というものは、後になって初めて見えて言葉にされるものだった。「当時はわからなかったけど、後から振り返ればあれがターニングポイントだったね」というフレーズが決まり文句だった。
でも、今回は違う時代の変化と、価値観の変化が同時進行で起きていて、その変化の言語化と拡散が恐ろしいほどに早い。
この前まで人と会えたのに今日からは外を出てはならない。若い人は感染しても症状が軽いと思いきや、そんなことはない。食糧がなくなるわけではなく、買い占めはするべきではない。ただ家に引きこもれるだけの準備は必要だ。などなど。日に日に更新される劇的な環境の変化に自分を適応させていかなければ、ウイルスとの戦いに破れてしまう。

それだけでも難しいことなのだけど、僕はできることなら、変化へ適応するだけでなく、「自らの新しい変化」を作っていきたいと強く思った。朝ごはんの前に6つの「ありえないこと」をやりながら。

体験の処方箋は、そんな日常に変化を生み出すための切り口であり、自分で自分を変える手段になるものだと僕は考えている。

おしまい。

#Photo : Fujifilm X100F, iPhoneX

*画像出典: https://www.researchgate.net/figure/The-Two-Queen-Hypothesis-Comparison-of-the-Red-Queen-and-White-Queen-diversity_fig3_323144146

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