24/5/21　📚『佐藤ナオキのスピード仕事術』

目的と概要
最近の自分の仕事について思い返すと、以下の3つが課題であると考えている。
①作業の正確さ・スピードを上げること
②外部から情報をキャッチし、効果的かつ新しい企画を発想すること
③周囲の人を巻き込み、企画アイデアを実現すること
そのうち、①は②と③の前提になるものだと思う。基本的な作業ができていなければ、たとえ新たな企画をしても、「そんなことの前にやるべきことがある」と思われてしまうからである。そこで、たまたま立ち寄った日比谷の図書館で見つけた本書を読み、印象に残ったことをまとめた。

1.筆者について

筆者はデザイナーで、同時期に200ものプロジェクトを手掛けている。2006年には、ニューズウィークの「世界が尊敬する日本人100選」に選ばれた。

2.基本動作

・目の前のことに集中し、やり切る
　必要なのは、1つのタスクを速く終わらせる力というより、複数のタスクを抱えながら、全体として速く終わらせる力。筆者は、常に「目の前の仕事」にだけ集中する習慣こそ、複数タスクを速く終わらせるポイントだと考えている。
　目の前の仕事に集中するために、苦にならない程度に3段階で優先順位をつけている。1つは「Now」重要かつ緊急、3日間ほどでやるべきこと。2つは「Latter」締め切りは遠いが放置すると危険なこと。3つは「Maybe」で、やってもやらなくてもいいけど、長期的なメリットがありそうなこと。これらの考え方は、縦軸を緊急度、横軸を重要度として、4象限に分けて優先順位をつけるフレームワークと似ている。
　他にも、目の前のことに集中するための工夫として、3割程度のバッファも設けている。こうすれば、仕事のペースが落ちても焦ることがない。
　また、やりかけのタスク（自分がボールを持っているタスク）がないようにしている。確保している時間に合ったタスクを選び、必ずその時間内に終わらせることで、思い出しの時間を作らない。
　このように、優先順位、バッファ、やりかけのタスクを作らない、といった工夫により、PJを一度さっぱり忘れることで、いつも新鮮な気持ちで向き合うことができ、新たな発見があるという効果もある。

・自分の調子とうまく付き合う
　自分が今やりたい仕事を優先して仕事を片付けると、いい具合に気分が乗ってきて、あまりやる気が出なかった仕事も楽しくこなせるようになる。これをするために、仕事は前倒しで進める。
　調子の波に逆らわないようにする。例えば、アイデアだしに行き詰まった時は、それについて考えるのをスパッとやめる。もうひと踏ん張り、という方法でアイデアだしをすると、仕事が嫌いになってしまうから。
　オンオフの切り替えはした方が、オンのときに脳のコンディションが良好になる。例えば、休日はゆっくりするため、動作を遅くしたり、どうでもいいことをする。インプットとアウトプットも、日を分けた方が脳がつかれない。

・あえて無理のある目標を。「できない」と決めつけない
　筆者は、タスクの締め切りを3週間と言われたら、1週間に仕上げることを目標として、動きを考えるようにしている。当然、1週間で仕上げると質は落ちるが、1週間のスピード感を身に付けた暁には、3週間のクオリティを維持したまま2週間で仕上げることができる。
　可能性を真剣に考えないままやめるのはもったいない。「やる」に必要なのは、「時間」「お金」「人手」。この3つの観点から、工夫できることを探す。

・間違えてもいいから判断は早く
　筆者は1日に30～50の判断をしなければならない。意識しているのは、悩まずその場で決断すること。大切なのは決めることであり、悩みに時間をかけることは誤った判断よりも悪影響であると考えている。後で立て直しが聞くように、後々の可能性を狭めない方を選んでいる。
　問題を解決するためのステップをみると、まずは選択肢を広げる力。アイデアだしがこれに当たる。問題は、数々の選択肢からスピーディーに2つに絞ること。筆者は、長所が最も大きく、かつ方向性が全く異なるものを考えて、2つに絞る。どちらも長所が大きいから、大きな失敗はない。

・プロセス重視から脱却する
　結果よりもプロセスを重視する優等生タイプがいるが、これでは最速で質の高いアウトプットができない。これがビジネスのセオリーだから、というプロセス重視の考えを捨て、結果に直結する良いプロセスを採用することが大切。

3.複数PJを超高速に進める手法

・羞恥心や恐怖心を捨てる
　羞恥心や恐怖心は捨てるようにすると、仕事のスピードが上がる。失敗を重ねられるので、そこから多くのことを学べるうえ、くよくよすることもない。失敗は多くても、前倒しで仕事を進めて時間さえあれば、リカバリーできるため問題ない。失敗を恐れないポイントは、たとえ最悪の状況になってもここがある、という居場所を見つけることだという。

・コツコツではなく、今やる
　人は大きな目標をもつと、それに向けて一歩ずつコツコツとやるという思考になりやすい。しかし筆者はその逆で、そんなにやりたいことなら無理をしてでも今やった方がいいと考えている。なぜなら、心に秘めているだけでとりあえず目の前のことをやっていると、周囲から「この人はこの仕事が合う人だから」と思われ、自分のやりたい仕事はできないままだから。自分が携わった仕事は必ず自分の未来を左右する。だから、やりたいと思うものがあるなら、時間やお金を使ってでもやった方がいい。

・上手くいかないPJとは
　着地点がないままアウトプットすると、迷走してしまう。そんなPJに気づいたら、止める勇気をもつ。

・情報収集は抜かりなく
　時間をかけてでも必要な情報を集められると、結果的にスピードアップする。美味しい料理のための材料集めは、とりあえず使えるものをすべて集めておいたほうがいい、というのが筆者の経験知であるという。

・その場で答えを絞り込む
　初回打ち合わせの冒頭で大方の情報をヒアリングし、自分の集中力が高まるその場で、どんどんアイデアを出す。「こんな方向性はありですか？」「こんな風に考えてみるのはどうですか？」など。こうしてアイデアを打ち合わせ段階から出しているからこそ、クライアントの意図をくみ取ることができ、後々にスムーズにアイデアが採用される。
　話を聞くときはばかになり、空気を読まない。なぜなら、クライアントが「常識すぎて面白くない」と思っていることこそ、外部から見たら新鮮で、面白いから。

・時間間隔を共有する
　PJはみんなで進めるものなので、自分の作業スピードが速いだけでは仕事は終わらない。そこで、打ち合わせの際に「全体でこれくらいの時間が必要かな」「この人に任せたらこれくらいで終わりそう」と、PJ全体の時間間隔をつかみ、メンバーと共有するといい。時間間隔をつかめるようになるには、タスクをする際、時間意識をもってみること。

・突破力のあるアイデアを「考えつこう」
　アイデアは思いつくものではなく、考えつくもの。ポイントは、似ているパターンを参考にすることや、違和感に目を向けること。
　アイデアだしのコツには、「部分に分ける」というものがある。すべての課題を解決するパーフェクトなアイデアを出すことは難しくても、部分的に「あの人ならどう考えるか」「少し改良する程度ならどうなるか」「個々の部分を変えたらどうなるか」などと考えてみる。いくつも考えるうちに、一石二鳥のアイデアに出会う。
　柔軟な発想には、「整理しすぎない」ということも大切。
　突破力のある（実現する）アイデアとは、全ての立場の人にメリットがあるアイデアだといえる。ユーザーのメリットばかり考えていては、現場担当者やトップがついてこない。全員が満足するアイデアとは、八方美人ではなく、「ここまでやればきっと会社が変わる」と、携わる人がみんな感じられるようなアイデアである。そうやって全員がやる気になるアイデアは、「頑張れば乗り越えられそうな挑戦」「これを世に出したらすごいことになる、と感じられる挑戦」である。筆者はアイデアを考えるとき、優しすぎず、厳しすぎない、やりがいを感じつつも「やれそうだ」と思える水準のものにしている。

・プレゼンは相手へのプレゼント、ネガティブシンキングで愚直に準備
　プレゼンは相手を説得するものではなく、納得させるもの。イメージしやすい状態でアイデアを伝えられるように、資料や発注準備をする。
　複数案をもっていく。1つの案で「これでいこう」と進んだとしても、「あの可能性もあったのではないか、、」と関係者に疑問や不安を感じさせてしまうから。最初に複数案を提示し、検討し、全員もしくはクライアント主体で「これでいこう」と決められれば、「これのほうが良かったのかもしれない」という声が途中で上がることが少なくなる。ただし、複数の選択肢には、本質的に似ているものはいれず、方向性が明確に異なるものを選ぶ。このプロセスにより、PJで重視するポイントも認識できる。
　ネガティブシンキングで準備し、不測の事態に対応できるようにすることで、プレゼンの質が上がる。相手にとって悪い話も伝えることも重要。逆に、有無を言わさずに進める方法をとると、後々の不満の爆発につながりやすい。
　プレゼンは、相手が「そうそう、気づいてなかったけどこれが欲しかった」というものを、気持ちよく渡すプレゼントである。打ち合わせの時も、プレゼントがばれないように、できるだけ偏りなく質問する。

4.加速させる投資・チーム作り

・スタッフの長所を伸ばすことに専念する
　人は自分の得意なことで力を発揮する生き物。得意なことだと楽しめるということもあり、筆者はこれを意識して人材育成を行っている。

・ブレのないコンセプトがPJを加速させる
　PJで行き詰まりがあっても、コンセプト（一番大事にする価値観）を共有出来ていれば、対応もスムーズに動く。

・人を巻き込むには、まずは自分が楽しむ
　楽しそうに仕事することの重要性は、テレビプロデューサーの佐久間宣行さんも言っていた気がする。これは、わざと楽しそうに見せるとかではなく、いつも「こうなるといいな」と少し先の未来のことを考えていて、そのイメージを具体的に持っているため、ワクワクしながら仕事ができるという。

5.振り返り

　読了後に自分の身に置き換え、考えたことを述べる。
　私は頂いたメールには丁寧に返信しなければ、と思っていたが、これはプロセス重視の考え方なのかもしれない。メールを返信すると、見落としが防げる。ただ、全員にその都度考えたメールを送らなくてもいいのかも。「この人は逃したくない」という人には爆裂に丁寧に返し、ほかのまあまあな人にはチャットGPTやテンプレを使って返してもいいのかもしれない。　
　先日の打ち合わせで、先輩らが急にアイデアを出し始めた時、まだ打ち合わせ始まったばかりで共通認識も作ったりしていないのに、非効率ではないか？まずはしっかり情報収集した方が、、、と思ったが、その場で答えを出すという観点からは、あのやり方があっていたのかもしれない。
　今私が任されている仕事は、やりがいを感じられつつ、頑張ればやれそう、というちょうどいい水準であると感じる。部長のセンスがいいのかもしれない。
　全ての人にメリットのあるアイデア、という視点が私には抜けていた。会社で「ここをこうしたい」と思っても、いまいち上司の共感が得られず、企画が通っても「勝手にやってみればいいんじゃない」という反応だった。どうしよう、と思っていたが、これだ。一緒に働く人にもメリットになるようなアイデアにすればいい。