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ドラマシナリオ6「みやびのジャンプ」①

■あらすじ■

作品テーマ(キーアイテム)は「写真」。石橋みやびはダンスが好きな高校2年生。セミプロの写真家である兄の石橋晴人の写真モデルを時々している。新たしく最寄り駅に貼られた広告ポスターは、石橋がみやびを被写体にした作品であった。

■この作品について■

数年前に受講していたシナリオ講座で書いた習作です。この講座は提出ごとに課題が決まっており、テーマと書きたい事をミックスしながら書いておりました。もともとの作品はアナログチックに原稿用紙に手書きのスタイルです。分量は400字原稿用紙10枚程度。今回noteにするにあたり、書き起こしながら加筆と修正を加えていますので、分量は多くなるかもしれません。ご了承ください。

本作品の著作権は私に帰属します。もし、作品を気に入ってお使いになりたい場合はコメントなどでご連絡ください。公序良俗に反しない限りは二次創作も大歓迎です。全文読めますが、記事の最後にサポート部分を設定しています。投げ銭していただけたら嬉しいです。


■人物■

 石橋みやび(17) 清颯高校2年生
 石橋晴人(27)  英和美創 営業部
 高田真司(27)  石橋の友人
 梅本さくら(17) みやびの同級生
 田中伸彦(58)  石橋の上司
 香澄(9)                 小学4年生
 駐車場係員

■シナリオ本編■

◯西本田駅・外観(朝)

『西本田駅』と外壁に書かれた駅舎。


◯同・駅コンコース(早朝)

石橋晴人(27)がスーツ姿で足早に歩いている。壁に貼られている大人3人分程度の広告の前で立ち止まり、ゆっくりと見上げる。晴れやかな顔で頷く。
大写しの写真には、ワインレッドのブレザーを着た制服姿の石橋みやび(17)とトイプードルがジャンプしている。スタイリッシュなフォントで『目標を飛び越えろ!  学究館 短期講習キャンペーン中』とみやびが映えるように書かれている。

石橋「自分の撮った写真がこうなるって、うれしいな、やっぱり」

時計を見て、ニヤけながら小走りになる石橋。

石橋「でも、みやびはどう思うかな」

スルスルと通勤中のサラリーマンや学生達を縫うように走り、改札を抜ける石橋。


◯同・駐輪場(朝)

ネイビーのブレザーを着た制服姿のみやび。自転車で立ち漕ぎのまま駐輪場に入る。突っ込むように入り口付近の空きスペースに乗り入れる。

みやび「やらかした……目覚まし切ってるなんて」

滑るように自転車を降り、スマホを取り出す。
トイプードルの寝顔の壁紙に8:05と表示され『メッセージ さくら』と点滅しているアイコン。
舌打ちしたみやび、自転車のカゴに入った緑色のスポーツバッグをひったくるように取り出し、スマホを握ったまま走り出す。走り出したみやびを避け、呆れた様子で見送る駐輪場係員。

駐輪場係員「あーあー、急ぐと怪我するぞー」

みやび、駐輪場係員に苦笑して右手を挙げて、弾かれたように走り出す。


◯同・駅コンコース(朝)

通勤客でごった返すコンコース。疾駆するみやび、スイスイと通勤客を避けて改札に向かう。大写しでみやびの写っているポスターに全く気が付かずに走り抜ける。


◯同・2番線ホーム(朝)

ホームに滑り込む電車。ドアが開き、ぞろぞろと降りる通勤客や学生。入れ違いに通勤客や学生が乗り込む。
ホームに登る階段を二段飛びで駆け上がるみやび。飛び込むように乗車する。閉まるドア。


◯電車内(朝)

ゆっくりと動き出す電車。みやび、大きく息を吐いて肩にバッグを背負い直して、手に握ったままのスマホを覗き込む。

みやび「あ、そういや、さくらから何か来てたっけ」

『メッセージ さくら』と書かれたアイコンをタップ。
『モデルデビューおめでとう!! ジュディちゃんもいい感じ』と表示。
怪訝な顔でスマホを操作。首をかしげるゴリラのイラストのスタンプが表示される。間髪入れずにびっくり顔のうさぎのスタンプが表示され『え、これ見なかったの?』とメッセージ。

みやび「(つぶやくように)だから、わかんないっての」

みやびが大写しの広告写真の画像が表示される。画像を凝視し、小さな叫び声をあげてスマホを取り落しそうになるみやび。周囲の乗客から不思議そうな目で見られる。愛想笑いしながら周囲に会釈するみやび。スマホを操作し始める。
『さくら、学校で話を聞かせてよ』と表示され、即座に『何いってんの、それはこっちがみやびから聞きたいよ(笑)』と返信される。みやび、画面をスクロールさせて、駅の広告の画像を見つめる。

みやび「そっか、あの時の写真か……お兄ちゃん、さすがだね……私が私じゃないみたい」

車窓から外の様子を眺めるみやび。


◯ユーフラテスビル・外観

オフィス街に佇む古めかしいビジネスビル。入り口に『ユーフラテス ビルヂング』と書かれている金属板。


◯英和美創・入り口

ドアが開け放たけている受付ブース。中央にポツンと内線電話の置いてある棚があり、すぐ上に『英和美創 姉小路支店』と書かれたアクリル版。


◯同・オフィス・中

20人程度が不自由なく行き来できる広さのオフィス。向かい合って島を作っているデスクの一角で『学究館 新規教室 レイアウト』とタイトルされた書類を見ながらPCを操作している。
PCのディスプレイには『お見積書』とレイアウトされた書類に数値を入力している。

石橋「これくらいの広さだと……フロアマットとカーペットでこれくらいの金額かな……あいつも良い物件みつけたなぁ」

奥のデスクで書類に押印している田中伸彦(58)、書類を置いて、一息つきデスクにある新聞をめくる。広げたページ『毎朝新聞 金浜市版』『毎朝フォトコンテスト 第23回 テーマ「走る」』と文字が紙面に踊っている。アゴを撫でながらデスクに広げた新聞を眺める田中。

田中「ほう、いい写真だなぁ」

『金賞 全力疾走』とタイトルされている写真。みやびとトイプードルがいっしょに駆けている躍動感ある写真。
写真の下に小さく『撮影者 西本田町 石橋晴人(27) ※石橋さんは5回目の金賞』と書かれている。
怪訝な表情で顔をあげて、石橋を見る田中。新聞と石橋を改めて見比べる。
石橋のデスクに置いてあるスマホが鳴り出す。ディスプレイには『学究館 高田塾長』と表示されている。慌ててスマホを取る石橋。

石橋「はい。お世話になっております……打ち合わせ? 今から30分後くらいはいかがですか? 承知しました」

ジャケットを羽織り、席を立ち上がる石橋。カバンを持って田中に振り返る。

石橋「田中支店長、学究館の高田さんと打ち合わせしてきますんで」

田中「あ、ああ、い、行っといで」

小走りに立ち去る石橋。後ろ姿を見送る田中。再び新聞に目を落とす。

田中「アイツ、そんな趣味あったかな?  それとも同じ名前の他人か?」

デスクにあるマグカップで一口コーヒーを飲む田中。


続く


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