透子

【 文字書き / 創作者 】 綺麗な文章を書くのが好き。 小説やCOCシナリオなどを書…

透子

【 文字書き / 創作者 】 綺麗な文章を書くのが好き。 小説やCOCシナリオなどを書いて活動している者です。 小説やエッセイ、月記を投稿していきます。 2023年1月より毎月小説投稿中。 ▼活動場所まとめ https://aboutme.style/y_toko_u

マガジン

  • エッセイ

    エッセイという日々の気持ち。

  • 木星の輝くころ

    2024年月1連載小説。血の繋がらない少年と青年の暮らしから始まる、かけがえのないものを知っていく人たちの話。

  • 月記

    毎月の記録をまとめます。その月に行った場所やしたことなどをまとめてご報告する場所。原稿やイベント情報の先出しがあるかもしれない。上の方が新しいです。

  • 商品サンプル

    BOOTHで販売している小説などのサンプルまとめ。

  • めくるめく季節の淡夢

    2023年月1連載小説。 BOOTH、文学フリマ京都7にて販売した小説カレンダーに書かれた短文を元に書きました。月が落ちてきた世界で、唯一の光だった彼女を探す少年の話。

最近の記事

  • 固定された記事

【小説】無題

2022年2月1×日のはなし。  今回もきっと口先だけだと思っていた。海に行きたいと言うだけはタダで、海までの道のりを調べても実際には行かないし、そもそもこんな冬に海へ行こうという人がいるのだろうか。  どうせ時間が経てば忘れる願望だと思っていたから、気づけば家を出て、ラジオを聞きながら車を走らせ、そうして今、目の前に海が広がっていることに少々驚いている。  潮風というのは冷たいらしい。いつも吹き付ける風よりもつんと鼻を突くそれは、確かに海の匂いをしていた。沈みゆく太陽

    • 【小説】ダークジェムの眩み

       雨が連れてきた寝苦しい夜は、夏によって連れ去られた。  空いた席を埋めるように熱気を帯びた夜風が窓から入り込む。それも寝苦しさを感じさせるものではあるが、湿気の強い夜とは心地がうんと異なる。悪夢を見せることのない夜風の方が、見せられる者もそれに寄り添う者も安心して夢を見ることができるのだ。  そんな夜を越えてやってくる夏の朝は早い。朝日の上昇と共にゆっくりと意識を開花させていくシェーナは、日の出から少し時間が経ってから起き上がる。寝た時とほとんど変わらないシーツを綺麗に

      • むつむ高校文芸部誌を公開しました🌸

         2024年4月17日に「むつむ高校文芸部誌 春ノ号」をBOOTHにて無料公開しました。  この記事では、部誌の概要や作品紹介をしていきます。 *むつむ高校文芸部誌 って?  架空の高校「むつむ高校」に存在する文芸部が刊行する文芸部誌。   何か企画をしてみたいという夢と、学生時代に文芸部に所属したかったという企画主の憧れを叶えるために立ち上げました。  共通のテーマを元にそれぞれで作品を書き上げ、部誌にして刊行します。 *むつむ高校文芸部誌春ノ号の概要  2024

        • 【月記】再・とても素敵な6月記

          ¥100
        • 固定された記事

        【小説】無題

        マガジン

        • エッセイ
          14本
        • 木星の輝くころ
          7本
        • 月記
          15本
        • 商品サンプル
          6本
        • めくるめく季節の淡夢
          12本

        記事

          【小説】打つ透明

           冬の寒さが、シェーナがかつて暮らしていた路地裏の刺すような空気を思い出させるように、湿気を含んだじわりと汗ばむ夜が訪れると、ヨヴェの脳裏に赤い夜が蘇る。  今でも肌に残る焼けるような熱気は、ヨヴェの肌の感覚だけを蝕んでいく。いくら肌を覆っても擦っても消えてなくならないそれに慣れてしまうことだけはあってはならないと思いながら、慣れなければ傷が抉り取られてしまうため、心を落ち着かせるほかなかった。慣れるということはすなわち、それだけ日にち薬が効いて来てしまっているということだ

          【小説】打つ透明

          【月記】緑茂る5月記

          ¥100

          【月記】緑茂る5月記

          ¥100

          【エッセイ】ふっと一息。

           地面ばかり見ちゃいられんと思うと同時に、顔を上げすぎても疲れると思うことがある。  段々気温が上がってきて、あっという間に夏が近づいてきている気配がする。一カ月もすれば六月の末、ということは夏も間近。  心地よい夜の眠りを妨げる蒸した夜がまだ来ていないことにほっとしつつ、きっとそんな日がすぐに来るのだろうと思うと毎夜々々を噛み締めて眠らなければならない。  少し暑い夜に窓を開けると、冷たい空気が入り込んできて、それが心地よい。エアコンをガンガンに効かせた寒いくらいの部屋

          【エッセイ】ふっと一息。

          【小説】赤い果実は風に揺れる

           柔らかく白い雲の流れる下、風に揺れる赤毛を手で抑えながら訪れた家の窓を覗き込むと、一人の少年の背中を見つけた。  普段なら向かいの椅子にもう一人、ヨヴェが一緒にいることがほとんどだが、今日はその姿はない。  本を読むでも絵を描くでもなく、机の上に乗せた指を絡ませて遊ぶシェーナ。まだ床に届かない足は、ふらふらと揺れている。時折窓の外を見つめては足を大きく動かすと、机や椅子の足にぶつけてこつりと音を立てた。  部屋には、綺麗に片づけられたキッチンと、小さな棚が一つ。棚の上に

          【小説】赤い果実は風に揺れる

          【月記】1周年だよ4月記

          ¥100

          【月記】1周年だよ4月記

          ¥100

          【小説】霞まずの背々を見る

           一番に春の訪れを感じたシェーナには遅れて、この季節になると村では催し物が行われる。  春になると緑が芽吹き、季節が進むごとに小麦や野菜などの食物が育っていく。大きな街から離れている場所にとって、その土地で採れる食物は生きていくために欠かせない食料となる。  それは、シェーナとヨヴェが暮らすこの村にとっても同じで、広い大地で育てられる食物がなければ、食べ物に困る生活をすることになっていただろう。  今年も大雨や災害などに悩まされることなく食物が育つよう豊穣の祈りを込めて、

          【小説】霞まずの背々を見る

          【月記】桜咲く々く3月記

           春が来た!

          ¥100

          【月記】桜咲く々く3月記

          ¥100

          【サンプル】Noise

          2024.03.10 そこの路地入ったとこ文庫 委託作品 「Noise」  同居している秋華から聞こえてくる音がある。 それが聞こえると同時に秋華に現れる、刺すような鋭い瞳。 そんな瞳で梢江を見つめる秋華に怯えながらも、その原因を追究することができないでいた。 サークルに所属したことをきっかけに、梢江は放置していた音と向き合うことになる。微百合。 【販売場所】 *透子のBOOTH 【サンプル】  ヒビが入っていくような、空気の亀裂のような、ぴきぴきと近づいてくる音が、

          【サンプル】Noise

          【エッセイ】春を意識する

           大人になると、青空を見る機会は減るのかもしれない。  太陽がちゃんと昇り切る前の朝。まだ淡い白の多く混じった色をした空。意識して顔を上げることもなく車に乗り込み、ハンドルを握る。雨が降っていたら今日は少し気分が上がらないな、なんてことは思っても、わざわざ灰色の空を見上げるようなことはしない。フロントガラスに落ちる水滴とその音で、憂鬱な一日は始まる。  運転免許を取ってから、私の移動手段は車が常になった。徒歩十分の距離にあるスーパーにも車を使う。だって荷物を持って歩くの疲

          【エッセイ】春を意識する

          【記事】Conte Bleu [Épilogue la mer.]

           この記事は「Conte Bleu 西の砂浜の町」の後日談となります。本編を読んでいなくてもお読みいただけます。  薄青い空が広がる冬の日、フランの丘を訪れる。  前回訪れた時よりもぐんと風が冷たく、寂れた町の時間の流れを表しているようだった。電車を乗り継いでようやくたどり着いた西の砂浜の町。私は今回もバスの連絡をするのを忘れてしまったので、最寄駅から、徐々に強くなっていく潮の香りを感じながら町を目指していた。  私が再び西の砂浜の町を訪れたのは、青年セリナに会うためであ

          【記事】Conte Bleu [Épilogue la mer.]

          【小説】風薫る季節の新花

           草木の揺れる音が、寒さを凌ぐ窓の向こうから聞こえてきた。  ささやかな自然の音で目を覚ましたシェーナは、ベッドに手を付いてゆっくりと体を起こす。少し高い位置にある窓をみやると、朝とは思えないほど淡く明るい青の空が、窓枠一面に広がっていた。  白いカーテンのような光が差し込み、シェーナの手元を照らす。じんわりと温かくなる手の甲を不思議そうに見つめた後、再び顔を上げた。横顔を撫でる日に目が眩む。  絵具を溢したような青をぼんやりと見上げ、そこに雲がかかるのをじっと待った。

          【小説】風薫る季節の新花

          【月記】まだ雪消えぬ2月記

          ¥100

          【月記】まだ雪消えぬ2月記

          ¥100