【小説】夜雪と見紛う悪夢
山の麓から少し離れた場所に広がる小さな村は、夜が深くなる前に明かりを落とす。かつて名のある権力者が辺りを支配していた頃、既に人のいなくなった村だと思わせるためにしていた対策が今も残っているのだ。日が落ちるのと共に床についていた頃よりも村の夜は明るいが、日が落ちて数時間もすれば村は闇に溶ける。
雪の積もった夜は一段と冷える。村を白く染める雪は山ほどは積もらないが、代わりに村に静けさを落とす。屋根に積もった雪が一向に溶けず、火を焚いても室内はあまり温まらない。湯を張った風呂