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『クリュセの魚』を読む

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東浩紀『クリュセの魚』を精読する。現在時において小説を読むことを意識しつつ、虚構の表現が私たちの生を取り持つ可能性を示す。
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2019年2月の記事一覧

『クリュセの魚』を読む⑤ 否定形の正史

『クリュセの魚』を読む⑤ 否定形の正史

彰人が決断したのは選択しないことである。それは語りの現在時からにおいて、歴史の正しさを否定的なしかたで肯定している。しかしその語りの時間は母の孤独を語ることで未来の時間に開かれている。

④ 天皇(制)の明日に

†選ばないこと栖花と麻理沙はお互いがそれぞれの存在の可否を賭けたダブルバインド状況によって危機に陥っていた。それは危機的状況にあって出来事を選択できない生の悲劇である。ここで母と娘は選択

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『クリュセの魚』を読む④ 天皇(制)の明日に

『クリュセの魚』を読む④ 天皇(制)の明日に

クリュセの魚を天皇小説概念の現代的フェーズを示す小説として読む。恋愛といい、家族という小説の主題は、それを図として、地としての天皇制が存在している。大衆を扇動しテロ行為をおこなう栖花は、尊皇攘夷を完遂した「天皇」である。象徴天皇制の危機に応じて現れたこのような天皇像は、三島由紀夫が提起した「文化概念としての天皇」と同期している。しかし天皇制の主題と重ね合わされる形で、栖花は母である麻理沙とダブルバ

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