指摘の仕方は変えられる 岩瀬コラム10
感情的に叱ってないですか?
子ども、チームメイト、職場の同僚など誰かを指導する経験は多くの方があると思います。
その時、ついつい感情的に叱ってしまった経験はありませんか?
私自身も未だにそうなってしまうこともあり、己の未熟さを感じています。
もし、感情的に叱ることが有効なら、その人はその後同じような行動は二度としないはずです。
しかし、多くの場合は2度、3度とその行動は繰り返されます。
このことからも感情的に叱ることは、あまり意味がないことだとわかります。
では、そもそも感情的になってしまう原因、怒ってしまう理由はなんでしょうか?
多くの場合、自分の理想や期待に反した行動をされた時に怒りを感じます。
つまり、怒りの原因は「自分自身で生み出した価値観」ということになります。
ただし、これは決してコントロールできない感情ではありません。
例えば、怒りの対象があなたより社会的な立場が上の人だった場合、あなたは感情をそのまま相手にぶつけるでしょうか?
ドラマや漫画のようにガツンと言い返したいところですが、多くの方は一呼吸入れて自分の感情を抑えてから別の返し方をすると思います。
逆説的に言うと、怒りの感情をそのまま相手にぶつけるのは、相手のことを下に見ているために起こる行動です。
年齢や社会的な立場は違っても、1人の人間としては平等で敬意を持って接する必要があります。
選手は指導者の思い通りに動かすコマではないのです。
叱られることでおこる反応
アドラー心理学では、共同体感覚という言葉があり、育成における重要なテーマになっています。
共同体感覚は英語で「social interest」と言い、これは「他者への関心」と言う意味です。
つまり、「自分への関心を他者への関心に変えること」が共同体感覚の育成という意味になります。
叱られて育った選手は、何かをする時に叱られはしないかと言うことばかり気にして人の顔色を見るようになります。
自分を叱る人だけでなく、他の人も仲間だと思えなります。
すると、他者に貢献しようと思わなくなり、叱られないようにしようと、自分のことしか考えられなくなります。
そして、自分のことしか考えられなくなった子どもは失敗を恐れます。
失敗を恐れると消極的になり、自分から行動するということをしなくなってしまいます。
このように、相手に叱られることの恐怖心から、積極性を失ったり、自主性を失ってしまう可能性があることを理解しましょう。
褒めることで起こる反応
叱るのは良くないなら褒めて伸ばそう。
私も以前はそう思っていました。
褒められると嬉しいし、やる気もでます。
しかし、褒められることによるマイナスな反応も知っておきましょう。
私は、このマイナスな反応には3つのパターンがあると考えています。
1つ目は、褒められて「馬鹿にされた」と思ってしまうパターンです。
これは、自分ではできて当然と思っていることを褒められた時に起こる反応です。
例えば、あなたがトイレでおしっこをできるのは当たり前なのに、「トイレでおしっこできてすごいね」と言われたらどう感じるでしょうか?
「馬鹿にするな!」と腹が立つと思います。
このような例は極端ですが、このような褒め方は、叱ると同様に相手を下に見ている接し方になります。
このようなことの繰り返しによって、信頼関係が崩れていきます。
とにかく褒めれば良いと思っている方は注意しましょう。
2つ目は、褒められることばかりしようとしてしまうパターンです。
誰かに褒められたいと思う人は、他者への関心ではなく、ただ自分が褒められることだけを考えるようになってしまいます。
つまり、自分の考えで良いと思う行動を選択するのではなく、その人に褒められるような方向に行動するようになるということです。
このようになると物事の判断基準が自分自身の考えではないので、上手く行かなかった時に他人のせいにするようになってしまいます。
3つ目は複数いる場に限りますが、誰かが褒められると褒められてない人は自分は良くなかったという気持ちになってしまいます。
例えば、同じことをしているAさんとBさんがいます。
指導者の人がAさんにだけ「上手にできたな」とBさんの前で褒めたとします。
Bさんは褒められていないので「自分は下手くそなのか?」とか「これじゃダメなのか」と思ってしまいます。
複数人いる場で褒める時は注意が必要です。
一呼吸置く
ここまでお読みいただいた方は、
・それでも叱らなきゃいけない時はあるじゃないか。
・じゃあ褒めちゃダメなのか?
と思われている方もいるのではないでしょうか?
もちろん、問題がある時は叱ることも必要かもしれません。
また、褒めることも必要な時もあるかもしれません。
ただ、このようなデメリットも理解した上で、指摘の仕方を考えていただきたいのです。
人の性格や気質、背景は十人十色です。
このように指摘すると良いという正解はありません。
相手が示した反応が答えです。
指摘する相手に対して、あなたがどのようになって欲しいと思っているのか?
また、自分の思い通りにならないなど、自分本位に感情的になっていないか?
これらを、指摘する前に一呼吸置いて考えられるように感情をコントロールしていきましょう。
冒頭にも書きましたが、私自身も良く後で失敗したなと思うことはあります。
この世に完璧な人なんていないので、トライ&エラーを繰り返して自分なりの答えを探していきましょう。
指導する側の成長しようとしている姿を、指導されている人たちは見ています。
その姿から伝わる事ももきっと多いはずです。
勇気づけ
最後にアドラー心理学で「勇気づけ」といわれる方法をご紹介します。
「勇気づけ」とは、
「〜してくれると助かるな」
「〜してくれてありがとう」
など、
「あなたがその行為をしてくれると私が助かる」というような声かけのことです。
これによって相手は、他者に貢献できていると感じることができます。
すると、その人は自分には価値があると思えるようになり、積極的に行動できるようになっていきます。
この経験の積み重ねによって、育成のテーマである「自分への関心を他者への関心に向けること(共同体感覚)」が形成されていくとのことです。
もちろん、この「勇気づけ」が必ず良いというわけではありません。
何度も言いますが、相手の性格や気質、背景は十人十色です。
叱る、褒める、勇気づける
自分の思い通りにしたいからと、感情的にならず、どのように指摘するのが良いかを考えて選択していきましょう。
お読みいただきありがとうございました。
岩瀬勝覚
理学療法士
JARTA認定スポーツトレーナー
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