カップ焼きそばの作り方における作品紹介

 お好みの作り方でお召し上がりください。

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 カップ焼きそばは固めに限る。熱々の湯を注ぎ三分少し前で湯を捨てるのがポイント。揚げた麺から立ち上る、ジャンクな油の匂い。ソースを薄めぬよう湯は徹底的に切る。ふたを完全に開けてソースをかけ、箸で麺をほぐしながら混ぜる。刺激的な匂いに鼻をひくつかせる。細く出るタイプのマヨネーズをたすきにかける。青のりはたっぷりかける。七味があるならお好みでかける。辛めにするならビールがあると嬉しい。酒がダメならサイダーでもいい。意外に冷たい牛乳も合う。冷めないうちに口一杯に頬張る。以上。
(ご飯もの→『ラーメン食べたい』 『梨の話』 『象牙の箸』

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 初めにポットあり、と誰かが言います。
 ポットが存在するからには中に溜める水が必要ね。
 蓋を開けます。
 ソースの袋を取り出し、湯を注ぎます。
 どうして私が注がなければならないのかしら。
 蓋を閉めます。
 虚空の数字が180増えるのを待ちます。
 湯を捨てます。
 肉塊に包まれ浮遊する意識で、ソースをかけて混ぜます。
 食べることはできません。
(構造体→『ポット』 『骨格』 『核』

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 私はひとつのカップ焼きそばを拾った。ふたを開けると、なかには麺の代わりにびっしりと根が張っており、そこからたくさんの言葉が芽吹いていた。
(日記→『拾った手帳』

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 カップではないけれど、かのくにで売っているN清焼きそばは、ソースの味が違うので注意しなければならない。N清焼きそばのパッケージに包まれた別の食べ物だと思ったほうがいい。
(海外記→『かのくに』 『空想旅行』

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 これは何? カップ焼きそばです。あなたにとってのカップ焼きそばと、わたしにとってのこれは同じもの? それとも違うもの? 同じだと思います。どうして? え、だって……ここにあるカップ焼きそばは、ここにひとつしかありません。でも、あなたにとってカップ焼きそばに見えていても、実はわたしにはこれが和風スパゲティに見えているかもしれない、あなたが湯切りするカップ焼きそばの味はジャンクかもしれないけど、わたしにはフレッシュかもしれない、そういったことは、まったくないと言いきれる?
(思考→『彼女の宇宙』

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 湯を沸かし、頭蓋を開いて注ぎ入れると、脳が浮き上がり漂い始める、蓋をする、あなたの見ていないところで脳は湯を吸ってゆっくりと膨らんでいく、鼻を削いで頭を傾けると湯が滴り落ちシンクを凹ませる、蓋を開いて粉末ソースをふりかけ箸でほぐす、いただきます。
(ほのグロテスク→『黒檀』 『黄桃』

#作品紹介 #カップ焼きそば #たまには #物書きのみんな自分の文体でカップ焼きそばの作り方書こうよ

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