【第13回】シナリオ分析実践ガイドSTEP3:シナリオ群の定義
今回からはシナリオ分析の中心的なプロセスの内容を紹介します。今回は、シナリオ分析実践ガイドのSTEP3「シナリオ群の定義」の概要です。
1.STEP3の実施事項
STEP3はSTEP2までとは異なり、企業の担当者の既存業務や専門性とは異なる「シナリオ」を理解しなければならない点が、難しい点ではないかと思います。TCFD提言では、望ましいものも望ましくないものも含め、複数シナリオを選定することが推奨されています。これを受けて、シナリオ分析実践ガイドでは、STEP3を「シナリオの定義」ではなく、「シナリオ群の定義」として、移行リスクと物理的リスクを包摂する複数のシナリオを定義することを想定しています。
最初に、STEP3の「シナリオ群の定義」が全体像の中のどの部分に該当するかを、下記の図で確認していただきたいと思います。
【シナリオ分析全体におけるSTEP3の位置付け】
STEP3における実施事項は、下記のとおりです。
STEP 3-1:シナリオの選択
STEP3-2:関連パラメータの将来情報の入手
STEP3-3:ステークホルダーを意識した世界観の整理
シナリオ分析実践ガイドでは、上記STEP3の工程の全体像が、下記の通り図で紹介されています。
【STEP3の全体像】
以下で概要を説明します。
2.STEP3-1: シナリオの選択
多くの企業が、外部で公表されているシナリオを使用されると思いますが、複数の機関がシナリオを公表しており、各機関はそれぞれ複数のシナリオを公表しています。この中から、どのシナリオを選択していくかがこの段階で実施すべき事項となります。
3.STEP3-2:関連パラメータの将来情報の入手
パラメータは、STEP3-1で選択したシナリオに対して、自社にどのような財務的インパクトがあるかを試算するために使用するものとなります。
例えば、炭素税が将来的に課されるというシナリオであれば、炭素価格が入手すべきパラメータとなります。将来の資源価格やエネルギーミックスもよく利用されているパラメータです。これらは外部から取得できますので、STEP3-2では、シナリオごとに必要となるパラメータは何か、それらはどこから取得できるのか、を検討します。
4.STEP3-3:ステークホルダーを意識した世界観の整理
「ステークホルダーを意識した世界観の整理」については、シナリオ分析実践ガイドでは「必要に応じて」とされています。実施する場合には、STEP3-1で選定したシナリオと、STEP3-2で取得したパラメータを基にして、自社を取り巻くステークホルダーの中で、それぞれのシナリオ毎に自社がどのような環境に置かれるかについて、社内でディスカッションして認識を共有し、合意形成を図ることが推奨されています。
次回から、STEP3を3段階に分けて、各段階で実施する内容の詳細を紹介します。
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