見出し画像

松本城をめぐってぐるぐる考えたこと:序

土曜日、午後の仕事が休みだったので松本城に行った。
朝の仕事を終え、コーヒーを淹れ、ちょっと一息ついていたら、乗ろうと思っていた電車に遅れた。ちょっと一息つきすぎたみたいだ。駅舎の時計を見るとちょうど一分前に発ったところで、それならもっと要領よくコーヒーを淹れていればとか、ぼーっとしていなければとか、カバンに文庫本を入れていこうか迷わなければとか、そんな些細なことがぐるぐると頭をめぐり、けっきょくのところそれらは全て自分を責めることに繋がっていた。つまるところ自分がもっときっちりとした性格だったなら今の電車に乗れていたはずなのに、と。
ふと、懐かしい香りがした。若気の至りのような苦い香りは、いつかどこかのサイゼリアのドリンクバーで飲んだ初めてのブラックコーヒーの味を思い出させた。自分が自分ではなかったら。確かに、昔は今以上によくそんなふうに考えていたような気がする。手持ち無沙汰になって、駅のとなりのお土産屋を覗いて、飲むヨーグルトを買った。これが、存外においしかった。

安曇野のむヨーグルト。

ずっしりとした飲み口でヨーグルトをそのまま飲んでいるかのようだ。それでいて、味がしつこいということもなく、上品なミルクの味わいを残してすうっと消えていく。

駅の待合室に戻ってヨーグルトをちびちびと傾けつつ、カバンから文庫本を取り出し、持て余した時をめくる。

本を持っていくか迷って電車に乗り遅れたことなど、もう忘れている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?