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『30女の思うこと〜上海女子物語〜』②ワン・マンニー編


中国で総再生回数71億回超を記録した、上海在住アラサー女子のキャリアストーリー。

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今回は二人目のヒロイン、ワン・マンニーを紹介します。

放映時、中国国内で物議を醸した役柄だったそうで。

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出世欲強め、だけど安定もしたいキャリアウーマン


地方から上海に出てきて8年目の独身女性。高級ブティックではトップの販売成績でシニアセールスに昇進したばかり。


会社からの褒賞旅行で豪華クルーズ船に乗り、船内のバーで香港在住の青年実業家と出会います。

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見ての通りとても美人さんなのですが、美貌に頼ることなく正攻法で仕事を極めています。


向上心があり勉強熱心なだけでなく機転も利くので、仕事でも結果を出しています。いずれは副店長になることを目標にしている、ガッツのある女性です。しかし社内の昇進競争はかなり熾烈です。


結婚するか、家を買うか、できないならば……

30歳の独身女性に対して「いつ結婚するの?(早くしなさい)」の圧が強めの中国。

ドラマの三人のヒロインの中で唯一の独身がマンニーです。

30歳の誕生日を迎えるマンニーに、電話をしてきた親はこう言います。

「結婚するか、(上海に)マンションを買うか、できないのなら(田舎に)帰ってきなさい!」

実家の両親は一人娘に早く実家に戻り結婚してほしいと望んでいますが、マンニーは田舎に帰るつもりはなくずっと上海で暮らしていきたいと願っています。


それなりに高い給料をもらっているにもかかわらず、余裕はまったくありません。

上海の中心部に近いアパートの家賃だけで給料の半分近くが消えてしまうし、都会暮らしは何かとお金がかかるので、貯金ゼロのマンニー。

「ブルジョワ貧乏」


そんなライフスタイルを、中国語の新語で「精致穷」と言うそうです。



「精致は敢えて日本語に訳すなら「ブルジョワ貧乏」

 お金が無いのに贅沢する、借金してまで欲しいものを買う、今どきの中国都市部の若者のライフスタイル。


金銭的に厳しくなり、ついには上海中心部に近いアパートから郊外のアパートに引っ越す羽目に。通勤時間は長くなってしまい、車もないマンニーは毎日大変そうです💦

日々の生活はカツカツでかなり無理をしているのに、上海でのおしゃれな生活に執着を見せるマンニーは、まさに「精致穷」です。


豪華クルーズ船の旅も、会社がプレゼントしてくれたのはスタンダードクラスでしたが、セレブマダムのグー・ジアの勧めでエグゼクティブクラスへアップグレードします。

差額の支払いはもちろん自腹ですが、マンニーの1ヶ月の給料分相当……。マンニーにしてみれば清水の舞台から飛び降りる思いでしょう。

職業柄、高級品を扱い、富裕層の顧客に接することで、ものを見る目だけは肥えてしまっています。なかなか理想通りの生活を送ることは難しく……仕事に邁進しながらも、いい人がいれば結婚して早く安定したい(でも相手には妥協できない)気持ちは人一倍あるのです。

豪華クルーズ船のバーで出会った富豪と交際を始め、結婚を意識するマンニーでしたが、彼は非婚主義で束縛されずに恋愛したいという考え。納得できないながらも、彼の望む形で交際を続けます。

彼はマンニーの望むような贅沢な時間をプレゼントしてくれます。旅行、高級レストランでの食事、車や服のプレゼントも。
でも、あくまでも彼とは対等な付き合いでいたいと願うマンニーは、自分が愛人的な扱いを受けることには断固拒否します。

ステップアップは望んでも、誰かに引き上げてもらう(受動的)のではなく、自分自身を成長させていきたい(能動的)のです。


クランボルツとバンデューラ


マンニーはとてもフットワークが軽く、チャンスをすかさず掴みに行く人であり、努力の人です。


このドラマでマンニーを観ていて、すぐ浮かんできたのが、クランボルツバンデューラの理論でした。


マンニーの第一の転機は、そのお金持ちの彼との失恋から職場に居づらくなってしまい、退職して田舎に帰ったことから始まります。

まずは、ここでバンデューラの【キャリア発達理論】の登場です。


プランドハプンスタンス理論(計画的偶発性理論)


プランドハプンスタンス理論は、クランボルツ(Krumboltz,J.D)によって提唱された、比較的新しいキャリア発達理論です。

人のキャリアは偶然の出来事によって左右される。当人も予想しなかったことによって興味が喚起され、学ぶ機会が得られ、成長する。したがって、偶然に出会う機会を増やし、それを自分のキャリア形成に取り込み、その準備をすることがキャリア支援であるとする。

 木村周『キャリアコンサルティングの理論と実際』5訂版より引用


マンニーの人生にこの理論を当てはめてみると……

会社を退職し上海を離れ田舎に帰る

両親の勧めで、断りきれずお見合い

お見合い相手のツテで役場勤務

役場主催のレセプションの企画を任される

レセプションの席で上海時代の知己を見かける
(元カレの知り合いの実業家、ウェイ社長)

ウェイ社長に声をかけ、名刺をもらう

田舎の実家暮らしに耐えられず再び上海へ

仕事探しを始めるも難航

ウェイ社長に連絡を取りアポを取りつける

ウェイ社長に仕事の斡旋を頼む

仕事をGET!

ウェイ社長はビジネスにはシビアなので、知り合いというだけでそう簡単に力にはなってくれません。社長に実力を証明しなければ、マンニーの希望する職は得られません。

ウェイ社長の言葉。

「名刺を渡す人間はたくさんいるが、その中で実際に連絡をしてくる人間は少ないし、会いに来る人間はさらに少ない」(意訳)


ウェイ社長は、マンニーの行動力と度胸を買って、マンニーに新たな仕事を紹介します。

その仕事とは、ウェイ社長の電子機器会社で営業部の債権回収係……女性しかも未経験の人にはなかなかエグい仕事です。
社内でも「借金取り」と揶揄され自他共に最底辺の仕事 と言われるような仕事……。


それは彼女の希望する仕事ではなかったけれど、3ヶ月続けることができたら彼女の希望する仕事(古巣のブティックの店長職)をオファーすると言われて、引き受けることにします。条件付き、期限付きですが、なんとか仕事を得ることができたマンニー。
これで上海に住むことができます!


慣れない仕事に四苦八苦するマンニー。販売員の経験しかないので、はじめのうちはすっかり自信を失ってしまいます。(【自己効力感】の低下)

でも落ち込んでいる暇はなく、どうしたらウェイ社長から出された目標を達成できるのか、自分にできることは何か、を必死で考えるマンニー。


 モデリング・学習理論


債務者から金を騙し取られる(え!)など、仕事では手痛い目にあいつつ、めげずに逞しく仕事を覚えていくマンニー。


彼女には「古巣のブティックへ店長になって返り咲く」という目標があるから頑張れる。どうしても上海で暮らしたい、その為ならどんなことだって耐えられる。

そんな、強い強い思いと覚悟があるのです。

そして、3ヶ月が経つ頃には、マンニーも立派な取り立て屋(!)もとい、債権回収係として部内でも頭角をあらわし、先輩OLにも一目置かれるほどの活躍ぶりです。


マンニーの債権回収率の高さに「どうやって仕事を習得したの?」と先輩に聞かれたマンニーの答え。

「海外の任侠映画やドラマを見て、セリフやアクションを覚えて練習したのよ😉」

これこそバンデューラの【モデリング】❗️

バンデューラ(Bandura, A.)は人は他者の行動を観察し、それを模倣する(見て真似をする)ことで学習できると考えており、それを「モデリング理論」として研究を行いました。

バンデューラが提唱するモデリング理論の最も有名な実験が1961年-1963年に行われた「ボボ人形実験」です。


モデリングが発生する過程として、以下の4つが挙げられています。

①注意過程(attentional process)
モデルに注意を向けるステップです。

②保持過程(retention process)
観察したことを記憶として取り込み、保持するステップです。

③運動再生過程(motor re-production process)
記憶したモデルの行動をするステップです。

④動機づけ過程(motivational process)
上記の3つのステップを動機づける過程です。


まずは注意を向ける→記憶するといったプロセスを踏んで、実際に模倣がなされるのです。そして、行動を動機づけることで学習が深まっていきます。


マンニーの場合は……


①取り立て屋が出てくるような映画やドラマを見つける。

➡︎お手本探し。実際知り合いになるのは無理でも、映画やドラマの登場人物なら探せる!

② ドラマのセリフやアクションを見て記憶する。

➡︎映画、ドラマを見まくる。なるほど、これは使えるかも!


③ 記憶したセリフやアクションを真似したり、練習してみる。

➡︎声色、セリフ回しや目付き、どうしたら近づけるかな。鏡の前で真似してみよう!

④ 仕事の場でセリフやアクションを実践してみる。

➡︎意外と実務で使える!うまくいった!またやってみよう!


マンニーは仕事を習得することには素直で貪欲です。勉強熱心で、知らないことは調べたり人に訊ねたり教えてもらったりすることに躊躇しません。そうして新しいことをどんどん吸収して、成長していきます。


自己効力感

バンデューラの社会的学習理論の中核となる概念の1つである【自己効力感】

自己効力感(じここうりょくかん)またはセルフ・エフィカシー(self-efficacy)とは、自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できると、自分の可能性を認知していること。
        Wikipediaより抜粋


「自己効力」や「自己可能感」などの日本語訳もあります。

自己効力感が強いほど、実際にその行動を遂行できる傾向にあるといえます。

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マンニーは、三ヶ月前には到底無理だと思っていた「債権回収係」の仕事を、ウェイ社長の期待以上にこなし、次のステップに進みます。

希望していたブティック店長の座を目前にして、マンニーはウェイ社長に仕事を辞めたいと申し出ます。


好条件を提示しマンニーを慰留しようとするウェイ社長に対して

「以前は販売員の仕事しかできないと思っていた。でも、債権回収の仕事もやり遂げることができて、自信ができた。だから新しい挑戦をしたい」

とマンニーは答えます。


イギリスに留学してファッションビジネスの勉強をする。


自己効力感が高まり(直接的達成経験により)自信が生まれ、自分の可能性を試したいと、新たな目標に挑戦しようとするマンニー。


「上海にこだわっていたけれど、世界はもっと広いのよ」


留学する計画を親友二人に告げた時のマンニーの言葉です。
自分の力で、自分の道を、自分の好きなように歩んでいくことを決意できたマンニー。


彼女はこれからどんな道を歩いていくのでしょう。


きっと、自分の望むものになれるはずですよね✨まだ、30歳ですから!


次回は三番目のヒロイン、ジョン・シャオチンを取り上げます。お楽しみに♪