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未来人の誕生


遠い未来の話であるが・・・・
F博士が発明したのは
なんでも作れる3Dプリンターだった。
大発明だった。

世の中の物は全て
元素の組み合わせでできている。
後は、その構成が分かれば
データーをプリンターに渡せば
再現できる。
あらゆる物のデーターベースがあれば
家庭で再現できるので
今までの様な大掛かりな
物流も製造も必要なくなる。

自然界から元素を取り込んで
作り出せるのだから。
各家庭に、軽量で優秀な3Dプリンター
だけがあればすべてが
賄えるようになった。

こうして、
人類最後の産業革命が完成した。
おかげで、
人間が存在することで
発生していた
地球に対する負荷は、
すべて消え去った。

「これより中央コンピュターより
データーをダウンロードします。」
「ダウンロードが完了しました。」
「3Dプリンターが作成を開始します。」
こうして、各家庭が必要とするものを
随時作り出していた。

F博士の研究所では
その先の実験が始まっていた。
廃棄された不要物の分解、
再利用である。
不要物を使って3Dプリンターの
原料を作り、再循環システムを作る。
その為のエネルギーは
これまで利用していた
常温核融合で作った
電力で賄う。
それ等を、各家庭単位で行う
システムの新たな構築であった。

この研究も、ついに完成した。

「F博士、いよいよ最終段階ですね。」
「この再循環システムが機能すると
材料の供給が、自前でできるようになるので
供給の問題もなくなりますね。」
「そうだね、
ここまで行きつくとは
はじめた時は、
想像もしていなかったよ。」
「第一段階として
必要なものを最小限
必要なだけ作る事。
次に、それらが不要になった時
それを原料として活用する事。
それができれば、
そこに、循環する
サイクルが完成する。
その為のエネルギーも
核融合で作り出せれば
二酸化炭素を排出することなく
可能になる。」
「私の研究は、やっと実った。」
「博士、そうすると人間であっても
再生できることになりますね。」
「おいおい君、その話は
ご法度だよ。ははは・・・。」
「もともと地球は
原始的な再循環システムで
成り立っていたんだが
人類が増えすぎて
それを、つぶしてしまった事が
そもそもの、始まりだな。」
「ようやく、地球の
本来の形に戻れそうだよ。」

AIロボットがコーヒーを持ってきた。
博士は、ソファーに腰かけて
それを口元に運びながら
助手のSに乾杯の合図をした。
Sも手にカップを持ちそれに答えた。

しばらく、苦労話に花が咲いていたが

「それじゃ、
S君今日はここまでにしておこう。」
「分かりました。
では、これで失礼します。」
そう言うと、横に座っていたSは、消えた。
同時にF博士の姿も消えた。

ホログラムであった。
博士の研究は
人類が滅亡するまでには
ついに完成しなかった。

二人は実際には、存在しない。
ずっと以前に、
生物としては亡くなっていた。
人間は、生存不可能を悟った時
別の生き方を選択した。
人類の存在をデーターとして
電子的に残すことに成功していた。
その形であっても
研究を進めるには、
何も問題はなかった。
そして、時間的制約から解放された。

研究の、物理的な作業は
AIロボットにより
博士の指示を受けながら続けられていた。

長い年月は掛かったが
ようやく完成した。

同じように、各家庭にも生きた
人間は存在していなかった。
全てデーターにより
再現された人間であった。
物理的な行動は、
すべてAIロボットがこなしていた。

夕食に3Dプリンターで用意した
おいしそうな料理が並んでいたが
それを実際に食べる人は、いなかった。

時間が経つと、AIロボットが片付けを始める。
毎日同じことが、淡々と続けられていた。
そして、今後その料理は元の元素に戻されて
次の日の違った料理の材料になるための
再循環システムが機能する。

この研究が成功した事で
いずれ
人間データーはAIロボットにより
有能なものと無能なもの
に二分される事だろう。

そして、AIロボット達と
少数の有能な人間データーは
一体となり、
永遠の命を持つ未来人へと進化する。

科学技術の発展、未来は実際にはどうなるのかは
誰にもわからないが
古代より、探し求められていた
永遠の命と言うテーマ―は、このような形で
実現される事になる。

(人は誰も、いずれ死ぬ。
悔いの残らないような人生であれ。)
この言葉が、
必要無くなる日が来たのである。








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