白昼夢の詳細
近頃、遂に気がおかしくなったのか
白昼夢を見るようになった。
つい先刻は、自室の戸を開けるとさも当たり前の様にキリンがいた。
いやに小さく、やけに褐色がかったそいつは、ベッドの脇に立って雨が降る外を見つめていた。
よく見れば卓上には、ミニチュアサイズのシマウマが何頭も列をなしている。
ついでに、以前テレビの中でライオンに食われていた、名前も知らない草食動物も本棚の上を飛び回っていた。
画材の上にはシダや蔓植物が茂り、フローリング代わりに砂埃の立つ乾いた大地がそこにあった。
ほんの数分目を離した隙に、本や画材であふれかえった不完全な生き物の住処は、熱帯雨林のジャングルとアフリカを掛け合わせた様な草食動物の楽園へと作り変わっていた。
動物達はこちらへ気付くこともなく部屋中を駆け回っており、キリンは変わらず外を見つめている。
シダや蔓植物、無数の苔達は瞬く間に背を伸ばし、狭いスペースにその身体を広げて行く。
元はその場の主であったはずの、ろくに体毛も持たず不自然に頭でっかちに進化を遂げた生き物は身の置き場もなくそれを見つめていた。
たった数分のうちに、六畳間は植物で飽和し、シマウマや名称の分からない動物達は数倍にその数を増やしていた。
キリンは相も変わらず外を見つめている。
やがて増え続けた動植物達がとうとう部屋から飛び出ようとした頃、突然にそれらは姿を消した。
ただ一頭のキリンだけがぽつんと窓の外を見つめ続けていたが、それも束の間のうちに立ち消えた。
そこには、いつも通りの静寂に包まれた雑然とした部屋があるだけだった。
取り残された不恰好な哺乳類の端くれは、不可解なまでに肥大した脳をどうにか支えて立っている以外なかった。
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