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移住決心、古民家購入~現在まで

古民家購入への決心とその経緯

私たち家族は東京23区のある街で快適に暮らしておりました。東京は近所付き合いが少なくドライと良く言われますが、私たちが住んでいた地域はご近所さんとの交流や地域社会との繋がりがそれなりにある土地柄で特段ドライだなと感じたような事はありませんでしたし、子供たちも自然こそ少ないながらも子供らしく過ごせていたと思います。福島に移住してからも東京時代に交流のあったご家族とは今でも連絡を取り合っています。ですので東京が嫌になったとかそういった理由は皆無です。

私は22歳の頃、特定の事情で東京での仕事を始め、上京しました。その後23年間、精力的に働き、経営者として独立(実質フリーランスに近い形態ですが)、家族を支え、一軒家を手に入れました。趣味である熱帯魚飼育や熱帯雨林植物の栽培、DIYでの家具作りなどを楽しみながら、充実した日々を送っていました。
埼玉の片田舎で育ち、幼い頃に見た農業を営む親戚の古い伝統的な家に憧れを持ち続けていました。古い道具や家具、トラディショナル/クラシカルなものにも特別な興味を持っており、旅先で見かけると興奮していました。車も新しい車はただの道具としてしか見れませんが、特に1950年~1960年代の車はまるで美術品を見るような眼差しで追いかけてしまいます。

夫婦で子供たちがもう少し大きくなったら田舎生活も良いねとは前々から何度も話していたのですが、40代も中盤に入り今後肉体的、精神的な余力を考えたり、その他年齢をさらに重ねる事で起こるであろう事象をテーマに何度も話し合いを重ねた結果、実は今がいいチャンスなのではないかという結論に至り、子供たちの学年の変わり目に合わせて移住することにしました。長男が中学2年生、次男が年中でした。子供たちへも何度も説明を行い同意も得て家を売り出しました。こうして古民家購入の準備に取り掛かりました。
特定のきっかけはないように思えますが、実際は、ずっと心に抱いていた思いと、生活を取り巻く様々な条件が整い始めたことが、移住の決断に繋がりました。

古民家の探し方

まず自分たちが始めたのは、どんな古民家が譲渡又は売りに出されているのか徹底的に調べる事。
空き家バンクを使い全国津々浦々の空き家、得に戦前築で可能な限り古い建物を勉強兼ねて片っ端からチェックしました。魅力的な物件がたくさん見つかるのですがいくつか条件を設定する事にしました。
※戦前築への拘りは後述
※空き屋バンク以外の探し方は後述

  1. ある程度不便な事があるのは仕方無いにせよ子供たちの通学に必要以上に負担がかからない場所であること

  2. ハザードマップを確認し警戒区域以上である場合は要注意。出来れば何もない所が良いが警戒区域程度なら許容

  3. 夫婦ともに40代も後半になります。通院なども頻度があがるでしょうからあまり病院などの施設から離れすぎていないこと

  4. 妻はあまり車の運転がうまいほうでは無いので車での敷地への出入りが難易度高すぎないところ

  5. 就農予定などは無いのでできるだけ敷地は宅地且つ、子供たちが思いっきり遊べるだけの広い土地がついているところ

  6. 夫婦ともに両親もすでに高齢です。何かあった場合に駆け付けたり逆に負担少な目にこちらへ出向いてもらったりができる範囲内(実家のある埼玉某所から300㎞圏内と定めました)

  7. 山間部であること(山好き)

  8. 出来るだけ自然にすぐ触れられる場所であること(住宅中心地じゃない)

これらの条件を定め絞りこむことにしました。自ずと長野(東部)、山梨、神奈川、千葉、埼玉、東京都西部(奥多摩方面等)、群馬、栃木、茨木、福島、新潟(南部)あたりまでがターゲットとなります。
このうち東京都、神奈川、埼玉、茨木はほとんど古民家情報が出ておらず、
東京都に限っては思ったより過酷な場所にしかなく、千葉は山があまり自分たちの好みの雰囲気ではないためこの関東5県は検索保留県となりました。残った長野(東部)、山梨、群馬、栃木、福島、新潟(南部)で絞り込んでいきます。

長野、山梨でいくつか良さそうな条件の物件が見つかり何度か足を運び内見もしました。しかし、長野、山梨では定めた1番~4番の条件に一致しない物件が多かったです。物件自体はめちゃくちゃ良いが小学校・中学校まで10㎞以上離れていますとか(山間部で10kmはやばい)、過去に何度か土砂被害にあってるとか、少し多めに雨が降ると毎年のように都市部まで避難をしてるとか、再寄りの病院まで車で1時間以上かかりますとか。なかなかハードモードな場所ばかり。
夫婦2人きりならそういった場所でサバイバルするのも面白いのですが、子供たちまで巻き込んでってのはちょっと難しいかなと。

ターゲットを関東北部、東北に絞ってみました。
栃木では良い物件は結構出てきます。けれどもなんだか別荘地も多く、都心からのアクセスも良いためなのか値段が高い物件が多い。すでにリノベーションや再生済みで高額になってるものもありました。

群馬では目ぼしい物件を持つ町村の空き屋バンクへの問い合わせの返答が一向に来ない。2回送ったけど来ない。メール以外の問い合わせ先が無いので詰みました。保留です。
写真だけではありますが条件合いそうな物件は多かったです。

東北は比較的平坦な場所も多いのか(だからか米どころも多いですね)1.2.の条件はクリアできる個所が結構ありました。
その代わり豪雪地帯だったりはするのですが….

新潟南部は福島で見つからなかったら探してみようと候補に入れてはいたのですが、超豪雪地帯(元住んでた知人にやばいよって警告された)なのでどうしても福島で見つけられなかったら探してみようと考えていました。

そしてついに理想的な古民家を福島で見つけました。
福島南部(関東より)で豪雪地帯より少し外れており雪に関してはそこまで心配いらなそうで、山間部でありながら谷間の平坦な田園地帯に置かれており且つ郡山市や白河市など大きな街までそんなに遠くなく(新幹線の駅まで車で40分ほど)1~8までの条件をほぼ満たしている個所が!!

他にも魅力的な古民家が福島には沢山ありました。
でも1~8までの条件を見事にクリアしている物件はこの物件だけでした。

番外編として岩手、秋田にもたくさん良い物件見つけました。今回は距離的に対象外でしたが機会があれば見に行きたい物件多数です。

子供たちへの説明と理解

ある程度古民家入手・移住への知識も深まったところで子供たちへも最終確認を行いました。「お友達とお別れして別の学校(幼稚園)に行くことになるけど良い?」「東京とは生活がガラっと変わるけど大丈夫?」等々思いつく変化、起きそうな苦労を一通りそれぞれの年齢で分かりやすいように説明し理解を求めました。
長男は二つ返事で楽しそう~別にいいよ。友達とはLINEやDiscordで繋がってるし問題ない。山遊びできるし…との事でOK。
次男は年齢的に理解が及ばない部分もあるとは思いますが、基本的には良いよって感じでした。ただ保育園から幼稚園に代わることで(妻は仕事を辞め移住後は専業主婦に)必須となる制服が嫌だったようでそれは何度も文句を言っていました。毎日友達と本当に楽しそうに遊んでいた子だったので少し後ろめたさは残りましたが本人は案外あっさりと平気だよ~と言っていました。
こちらに来てからはすぐに制服以外(笑)は馴染んで相変わらず毎日楽しそうで安心しました。

移住後は2人とも動物や虫が好きな方なので〇〇捕まえた!〇〇見かけた!等々友人関係以外でも田舎生活を満喫してくれているので親としても一安心です。長男は進学に関しても移住してからの方がより真剣に考えてくれるようになった気もします。農業高校体験しにいったり興味の幅も広がったようです。

知識の蓄積

みなさんは古民家と聞いてどんな家を思い浮かべますか?
築年数が(見た目含め)古い民家 = 古民家と表現する人
築年数が古く伝統構法で建てられた民家を指す人
様々だと思います。実は建築基準法など法的に定められた定義は存在しないようです。では普通の民家と古民家の境界線はどこにあるのでしょう。
「登録有形文化財制度」に基づいて築50年以上且つ木造軸組み構法で伝統構法又は在来工法の民家と一般財団法人住まい教育推進協会は定義づけているようです。ただし、前途したように法的/科学的に何等かの境界が定められているわけでは無いのであくまで指標程度のものなのかなと。
古民家の中でさらに伝統的建築物であるか、少し古い在来工法の建築物であるかの違いがありますね。

さらに木造家屋は何十年ごとにリフォームないし、修復などは行われてくるものなので通常はその時代の手法で工事は行われていることが多いと思います。なので構法(工法)に関しても一貫性が無い場合が多いと思います。そういった民家は混構造というそうです。

私達が入手した古民家は母屋と隠居(離れ)の2棟が敷地内にあります。
母屋は石場建てで屋根こそ茅葺からトタンに葺き替えられていましたが一部の修復部分を抜かし一貫した伝統構法、隠居の方は築年数が母屋より新しく建築様式が洋風な技術を取り入れ始めた過渡期のもののようで伝統構法を継承しつつ在来工法で建てられております(ただし、貫を使っており現代的な筋交いなどは見られず)この辺は追々述べていこうかと思います。

古民家に関してより詳しい話は私のてきとーな説明よりも一般財団法人住まい教育推進協会が発行している「古民家の調査と再築」というテキストを入手する事をお勧めします。資格取得用の参考書も兼ねているものなので8,000円もするのですが、古民家に関するアレコレの知識を得るのにはこれ以上ないくらいのバイブルとなることは間違いないです。
建築基準法に則った建築士向けのテキストなんかには伝統構法に関してはそんな詳しく出ていないようなのでこちらの方が断然素人には役立つはず(多分)

※ 工法と構法の両方が混ぜこぜで出てくるので非常に厄介
※ アフィリエイトじゃないよ!

ネットでの探し方

さて、いろいろと物件を見るうえでの下知識がある程度吸収できたところで
空き家バンク以外の古民家の探し方について。
私たちの行った方法なので情報不足等あるかとは思いますが、列挙してみます。
※ アフィリエイト等ではありません

なんだかんだで空き家バンクで各自治体の最新空き家情報を地道に探すのが一番かもしれません。普通の民家の中古物件とは違い値段が極端に安く仲介業者も儲けが出ないような案件だとやる気も出ないでしょうしそういう場合はやはり民間より公共のサービスの方が情報量が多いです。

なぜ戦前築へ拘るのか

これはちょっと難しい話ではあるのですが、戦後復興から高度成長期に差し掛かるまでに建てられた建築物って所謂スクラッチ & ビルドなものが多いんです。要は伝統構法のような時間を掛け丁寧に職人が手作りするような手法から出来るだけ安い材料を用いて最低限の性能を持たせただけの建材の利用やプレカットで工期を削減してサクっと建てちゃうような建物が多くなる時期なんです。
そういった建物でも築年数が古くなれば一応古民家の部類に入ってきてしまいますが、そういった家はただ古いだけで伝統を引き継いでいるわけでもない、修繕・再生して世代を跨いで次世代へ繋いでいくような考え方では無く古くなったら壊して立て直すことが前提の代物、ようは使い捨て前提の建物。勿論戦後築でも十分丁寧に職人が手作りしたような物件もあるにはあるでしょうが売りに出されている物件は非常に少ないと思われます。条件に合う古民家を探す際に世間では「古民家」と一括りにしてしまっているこういった古家をフィルタに掛けて弾く必要があるため自分たちは最初から築80年以上(戦前、戦中)は経っているものと決めて探しました。

戦後復興や高度成長期への突入に家屋のスクラッチ & ビルドの手法は十分メリットがあった事と思われます。それに関しては否定する気にはなりません。むしろそのお陰で今の日本があることも十分承知しています。ただデメリットとして古き良き伝統ってやつが沢山失われてしまったんじゃないかと。そしてその「伝統」ってやつに堪らない魅力を感じるんですよね。

一周回って今世間ではSDGsなんで言ってますが、あれ?それって日本は遥か昔から当たり前のようにやってきたことだよね?なんて思っちゃいますね。でもそこに気づいて神社仏閣のような特別な建物ではなく、普通の民家であるが伝統を繋ぐ古民家に注目が集まり、古き良き日本の伝統が改めて見直されるというのは凄く良いことだと思います。もっとこの流れ、興味が多くの人広がっていくと良いな~と思います。

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