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舞台が原作。ラジオドラマもあり。映画『笑の大学』2004年。


 三谷幸喜原作の映画『笑の大学』は、もともと演劇(一番はじめはラジオ劇)だったものを別の監督さんが映画化したもの。舞台をそのまま映画にしたような感じで、ちょっと笑うのが難しかった。映画の良さがあんまり生かされていないように思う。これなら、演劇ビデオの方がよかったかも。

 舞台は、昭和十五年(1940)秋、警視庁保安課の取調室。主役は二人。浅草の劇団「笑の大学」の座付き作家・椿一と、警視庁検閲係の向坂睦男。向坂は、最近まで満州に派遣されていた設定の堅物で、戦争中なのに不謹慎な娯楽が流行るのを敵視している。演劇の脚本に難癖をつけて、たとえば外国の設定を全部日本に変えさせないと、上演許可を出さない。でも、椿は喜劇作家のプライドがあるので、設定変更を逆手に取ってさらに面白い台本へ変えてしまう。一週間、激しいやりとりをくり返し、立場の違う二人の男がお互い奇妙な友情を感じ始める……というお話。

 同じく三谷幸喜原作の「ラヂオの時間」にこんなセリフがあったと思う。
「ラジオ小説は”そこは宇宙だった”というだけでリスナーの頭の中には宇宙のイメージが広がるんです」みたいな。

 舞台もどちらかというとそれに近くて、「ここは○○」と設定して、それらしいセットを作れば物語はそこから始まる。でも映画は違う。映像で説明する必要がある。そこをただ真面目に、「普通」の映像で補っているから、全然映画らしい感動がない。星護監督は、一生懸命忠実に演劇を映画化したんだろうけれど……

 いっそ半分の1時間くらいに凝縮したら、何か映画化したらしい新鮮さ、新しいおもしろさが出たんじゃないかと思う。映画を見ながらつくづく「舞台を見たかった~」と思った。残念。そして、多分、配役もなんか違う気がする。この脚本をやるには、稲垣吾郎も役所広司もイケメンすぎて。西村雅彦と近藤芳正の舞台版の方、みたかったな。

 言葉のやりとり、脚本の妙。舞台ならではの演出。演劇は数えるほどしか見たことがないけれど、久しぶりに見ようか。あと、この演劇はラジオ版もあるらしいので、そっちも探したらよさそう。

題名:笑の大学
監督:星護
脚本:三谷幸喜
出演:役所広司、稲垣吾郎
制作:日本(2004年)120分

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