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ウソのような本当の潜入捜査。映画『ブラック・クランズマン』アメリカ、2018年。


「楽しい映画で、深い」という評判だったので、娘と見に行きましたが、期待してたのとはちょっと違いました。名作『風と共に去りぬ』のシーンから始まり、その後はドキュメンタリー部分とか、昔のフィルムが結構でてきたりしました。

こういうのって、アメリカの歴史とか政治を知らないと理解できないかも。なんとなく、予想はつきますけど。ということで、親切な解説記事がありがたいです。

まあ、それはそれとして。この映画は基本的にコメディなんですけど、いつ潜入捜査がバレるか、ヒヤヒヤのサスペンス映画でもあります。

舞台は1970年代。日本でいうと昭和40年頃。イケてないたくさんの白人たちが「自分たちは虐げられている」、「本当はすごいはずなのに、誰かにかすめ取られている」と思って、正しい戦い(=黒人差別)をしているお話。

黒人の警官が主人公で、電話で白人と間違われたのをきっかけに、相棒の白人警官が差別組織のKKKに潜入捜査します。これが、実話ベースなのがすごい。そういえば、アメリカが舞台のミステリ小説『検死官』でも、電話交換の黒人女性が、喋り方から白人と間違われて殺害されたエピソードがありました。ネイティブは聞いてすぐわかるぐらい、差があるんですね。

そして、コメディっぽいのにかなりきつい話でもあります。なぜかというと、イケてない白人たちもそれなりに憎めなくて、黒人を見下すことで、辛うじてアイデンティティを保っている感じ。なので、人間のマイナスな気持ちとか、鬱屈したネガティブさをニンゲンの業ってつきつけられているような気がしてきます。

そして、映画に出てくる黒人の人たちも、デモしたり集会してがんばっていますが、決していい人ばかりではなくて。「警察」や白人をひとまとめに差別したり、偏見があったり。お互いの壁が高そうなのが辛いです。

この映画は、個人と個人の間では、黒人だろうがユダヤ人だろうが白人だろうが、それなりの理解や和解は可能。でも、その理解の対象をもう少し広げましょうとなると難易度暴上がりの現実をつきつけてきます。コメディの合間に、そういうリアルな現実をつきつけてくる映画は、真面目な映画より怖いです。

この映画には原作もあって、映画公開をきっかけに翻訳されたとのこと。元警官の作家さんが書いたので、リアリティは折り紙付きだとか。映画化されていない部分もおもしろいらしいので、読んでみてもいいかもしれません。

邦題:ブラック・クランズマン(原題:BlacKkKlansman)
監督:スパイク・リー
原作: ロン・ストールワース
主演: ジョン・デヴィッド・ワシントン、アダム・ドライバー、ローラ・ハリアー、トファー・グレイス
制作:アメリカ(2018年)128分

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