マガジンのカバー画像

夕遊の中国旅

184
中国大陸とその周辺に関連する本や映画の話題を集めてみました。
運営しているクリエイター

#中国史

ファンタジーと歴史とSFと。ケン・リュウ『母の記憶に』古沢嘉通他訳

有名すぎるくらい有名なケン・リュウの小説。これまで、なかなか時間とタイミングがなかったで…

夕遊
3週間前
41

耽美をめぐる社会情勢と魅力『BLと中国』周密

以前から興味を持っていた分野なので、すごく読みたかった本ですが、発売前から重版がかかるほ…

夕遊
2か月前
53

「中国」との相克の戦後史。『台湾のアイデンティティ』家永真幸

タイトルを見たときは、現代台湾事情を中心にビギナー向けにまとめた本なのかなと思いました。…

夕遊
5か月前
32

中世の豊穣な海を旅する。『戦国時代を見た中国人 』上田信

15世紀から16世紀は、日本でいえば室町時代から戦国時代。中国は明の時代。高校日本史の教…

夕遊
5か月前
31

好みすぎる中国古代史ミステリー。『蘭亭序之謎』唐隠著、立原透耶監訳

中国の長い歴史の中でも、一番華やかな時代のイメージがある「唐」。7世紀から10世紀まで、日…

夕遊
5か月前
33

中国ドラマや小説を楽しむために。『古代中国の24時間 秦漢時代の衣食住から性愛まで…

出版直後からすごく話題でしたが、ようやく手に取ることができました。きっかけは、中国ドラマ…

夕遊
10か月前
39

南からみた衝突と融合の三〇〇年『越境の中国史』菊池秀明

日本に来る中国人観光客が増えても、日本人には中国と台湾、香港の区別が難しいです。ましてや、中国大陸の南と北の文化の違いなんて難しい。中国は北京が中心で、統一された大きな国のイメージが強いです。 でも、ヨーロッパのいろんな国がすっぽり入ってしまう大きさの中国。北京を中心とした地域では、草原や砂漠の民族が入れ替わり立ち替わり、南下をくり返して文化が融合し、中華的な世界になっていったようです。森部豊先生の『唐』も、そんな古代中国北部の変化をおもしろく紹介してくれています。 なら

わくわくする中国古代史。『唐ー東ユーラシアの大帝国』森部豊

中国がものすごく栄えた時代のイメージがある「唐」。7世紀頃から、ざっくり300年近く続い…

夕遊
1年前
30

所有者をたどる手がかり。『印を読む―詞句・成語印のたのしさ』北川博邦

以前参加した、とある自治体の寄贈史料整理。私は、蔵書印といえば、古書店で買った本に押して…

夕遊
1年前
26

ラストエンペラーの物語。『溥儀』入江 曜子

人生で3度皇帝になった溥儀(ふぎ)。そして、人生の後半は「一般人民」として生きることを強…

夕遊
1年前
22

三国志、キングダム、宮廷美女の時代劇。『戦乱中国の英雄たち』佐藤信弥

最近、中華ドラマを見ています。毎日があまりにも暑すぎて、体力が落ちたので、ちょっと休憩(…

夕遊
1年前
24

時代で変わる物語と孔明。『三国志演義』井波律子

2世紀末、後漢王朝が宦官の専横で衰退し、道教系の大平道信者を中心とする大反乱が引き金とな…

夕遊
2年前
20

本場中国よりもファンが多い!?『三国志と日本人』雑喉潤

日本人でも知っている中国の『三国志』という物語。中国では正式には『三国志演義』とよばれて…

夕遊
2年前
23

部下たちの名誉回復を誓って。映画『戦場のレクイエム』中国・香港、2007年

もともと、コミカルなお正月映画(賀歳片)を製作する馮小剛(フォン・シャオガン)監督。私が見たことあるのは『ハッピー・フューネラル』と『狙った恋の落とし方』くらいでした。 でも、今回の馮監督の作品は邦題が『戦場のレクイエム』。中国語の題名は『集結号』(撤退のラッパの合図)ということで、戦争ものです。舞台は、1948年、つまり中華人民共和国ができる直前で、蒋介石率いる国民党と毛沢東の共産党による内戦が継続中です。 主人公は谷子地という隊長。彼が率いる「連」(≒日本の中隊規模)