「現代の名工」別所さんを訪ねて
昨年秋、厚生労働省の選定する「各分野で卓越した技能を持つ名工150人」のうちの一人に選ばれた名誉ある方が敦賀にいる。
それが、昆布加工工の別所昭男さん。敦賀が国内シェア8割を占めるというおぼろ昆布は、薄くて透ける絹のような昆布。そのおぼろ昆布の中でもさらに繊細な「極み」や、息を止めて一気にかく、別所さんにしか作れない「竹紙(ちくし)昆布」など、繊細な技術が光る名人だ。
そんな名人にお会いする貴重な機会をいただいた。
別所さんの工房を訪ねる
▲別所さんかきたての「極み」のおぼろ昆布。ほんとに絹みたい。
西福寺の中村さん、観光協会の桝田さんとともに、初めて訪れた名人の工房。中村さんは、つい数週間前に初めて別所さんとお会いしたというが、全くそうとは思えない打ち解け具合。
一方のわたしは、別所さんと中村さんの繰り広げる会話のスピードに飲み込まれながらも、淡々と名人の手捌きを眺めていた。
すると別所さんから、ひょいっと削りたての昆布を手渡される。反対側からは中村さん持参の握り飯も。昆布削りを見学しながら削りたて昆布をご飯とともにいただく何とも贅沢な体験...。
「名人」のイメージが変わった
「おでんにはこれ使うといいぞ!」とたくさんお土産もいただいた。正直なところ想像していた「名人」のイメージと全然違った。
名人、職人と聞くと、なんとなく、その人の世界があって、寡黙で...という近寄り難いイメージが偏見としてあった。しかし、別所さんはまったくそんな空気を感じさせず、とても気さくな方だった。
全国のデパートで実演販売をするうちに、「お客さんとコミュニケーションが取れるように」と手元を見ないでも削る訓練を積んだそうだ。それくらいに、人とのコミュニケーションを大切にされている方で、「商人スキル」も持ち合わせている方だと勝手に感じた。
頼れる職人さんにお会いできたのだが、今は別所さんにしかできない「技術」を引き継ぐ人材がいないというお話しもうかがった。
敦賀の誇れる技術が絶えないことを祈る一方、はて、人任せだなと自分の力不足を感じる。
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