経験を重ねて培った責任感の大きさ。『産業の命綱』を生むモノづくりに欠かせない「相棒」とは
働く人にとって、日々扱う道具は「相棒」と言っても過言ではありません。
相棒とどのように出会い、どんな思い出を刻んできたのか。
長らく使ってきた道具に焦点を当てると、その人の個性やこだわりが滲み出てきます。
今回は、(株)ホリカワの井口隼人さんが入社間もない頃から扱う「スパイキー」に着目しました。
日常の場面では目にする機会が少ない先端が尖った棒状の道具は、「産業の命綱」ともいえるワイヤーロープを加工する上で欠かせないモノとして井口さんの手仕事を支え続けています。
日常で当たり前のように使い続けてきた「相棒」
ー「相棒」と出会ったきっかけは。
井口
「大学卒業後、今の会社でワイヤーロープを加工する仕事を始めた頃から使ってきました。もともと先輩たちが現場で使っていたモノでメーカーもわからないですが、毎日の作業で当たり前のように使っている道具です。最初の数か月は先輩が作業する姿を見ながら手順を覚え、その後少しずつ自分で作業をしながら感覚を掴んでいきました」
ーどんな時に相棒は活躍していますか?
井口
「ワイヤーロープの端部に吊り輪を作る編み込み加工をする際に使います。束ねられた状態のロープを一旦ほどく際にスパイキーを差し込み、手でねじりながら編み込むことで輪の部分が出来上がっていきます。ロープの太さにもよりますが、だいたい1本あたり3~4分で作り上げていますね」
コツ、感覚を掴むため試行錯誤を繰り返した日々
ーそんな相棒にはどんな「個性」がありますか?
井口
「ワイヤーロープは細いもので直径数mm、太いもので約120mmのものまで幅広くあります。太さに合わせてスパイキーを使い分けていますが、太いものになると手で刺し込むだけではロープが全くほどけません。時には長さ約1mのスパイキーを肩で担いで運び、ハンマーで叩きながら数人がかりで作業することもあります」
ー印象に残っている思い出を教えてください。
井口
「ワイヤーロープが見た目以上に硬く、スパイキーを使う編み込み加工が想像以上に力を要することに最初の頃は驚きました。作業中に力を入れ過ぎて先端部分を折ったこともありましたし、コツを掴んで1人で問題なくできるようになったと感じるまで3~4年ほどかかった気がします」
ー他にもワイヤーロープ加工で独特だと感じることはありますか?
井口
「ワイヤーロープは複数の束で構成され、1つずつの束はストランドと呼ばれています。ストランドは素線を組み合わせて出来ていますが、トゲのようになっていることもあります。素手で触るとケガしてしまうこともあるため、作業の際は注意を払わなければなりません」
現場での経験を重ね続けて培った責任感
ーもし相棒が現れなかったら、どんな社会人生活になっていましたか?
井口
「大学時代まで柔道をやっていたこともあり、何かしらカラダを動かす仕事に就いていたのかと思います。ただ、モノづくりの世界とは無縁だったためワイヤーロープ加工の仕事を通じてさまざまなことを知れました。スパイキーを使う編み込み加工はこの仕事の基本ですし、ロープの破損は人命にも関わるため責任感を持って作業をする大切さを学びました」
ーこれから相棒とどのように付き合っていきますか?
井口
「乱暴に扱って壊れてしまうことがないように使い続けたいと思っています。ワイヤーロープ加工の仕事は体力を使いますし、ケガをしないためにも時には『無理をしないこと』も大切です。現場でのワイヤーロープの取り換え作業は安全性を担保するための経験が求められ、今も先輩と一緒にやっています。そうした現場でも1人で任せてもらえるように、今後に向けて経験を重ねていきたいです」
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