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動物と人間の共存

動物と生活や仕事の場で共存したい「動物好き」

世の中には、動物が好きな人と嫌いな人がいる。動物が嫌いな人に動物が好きな話をしてもとうてい受け付けないので、一応、動物が好きな人を対象に話していくことにしよう。これは私見だが、動物が好きな人は、人間と動物の間に何らかのコミュニケーションが成り立つと信じている人ではないかと思う。犬や猫、あるいは馬や牛など人間の近くにいるペットや家畜については、実際にコミュニケートする機会も多く、それが成立するという確信を持っているのではないかと思う。私は生まれた時から猫が近くにいて、私が飼った動物としては、サイズに幾分違いがあるが、猫以外に兎、インコ、亀は飼ったことがある。猫と兎、インコとはちゃんとコミュニケートできた経験があるがカメはやや微妙だった。

共存できる動物は多くない

しかしそういう意味では、ほとんどの動物と、かなりの確率で意思を交わすことができると私は思っている。だから多くの人が身近に動物を置いておきたいと思うのは同じ動物好きとしてよく分かる。しかし一方、身近に置ける動物は、その大きさ、本能のタイプ、餌、こちらの生活習慣などによってかなり制限が出てくると思う。ユーチューブなどでは象や月の輪熊、ピューマなど大型ネコ科の動物と一緒に生活している人々が紹介されているが、それは例外というもので、私たちが生活上で、共存できる動物は決して多くない。しかし私もかつて、人が考えないような動物と仕事の場を共有をしようと考えたことがあった。それはイルカだった。そのきっかけは、アメリカのシリコンバレーの自由なレイアウトの制作オフィスの写真を見たことだった。デスクに向かう大男のすぐ横に、巨大な犬が寝ている写真だ。確かにこのオフィスは動物好きには堪えられないが、最近は世間も世知辛くなってきているので、今でもこんな環境を維持できているかどうかは分からない。いわば、当時の動物好きな人にとっての理想的なオフィスという感じだった。

私が夢見たイルカとの共存

その頃私たちが仕事をしていたデザイン・オフィスは、大阪の少し大きめの雑居ビルのワンフロアといったところで、より広く自由に使えるオフィスに移りたいと思っていた。その頃偶然に、淡路島にいる親しい建築家の友人が、海と密接に触れ合っている親水オフィスの設計を考えていて、建設できたら入居しないかと私に打診があった。彼が言うには、直接事務所の中までは海はつながっていないが、すぐ事務所の横まで海が迫っていて、例えば海に住んでいるイルカがオフィスから5メートルほどの距離のところにある海水の引き込みエリアまで遊びに来て、イルカと親しくなれば毎日でもイルカが庭に遊びに来てくれる可能性だってあるということだった。それを考えると、一刻も早く淡路島に移りたいと思ったものだった。

今から考えれば、親水のオフィスは、いろいろ技術的な課題があって実際にそのような環境で仕事ができるかと言えば多少疑問だが、実際にそのオフィスに入ろうとして、いろいろとオフィスのでデザインを考えているときが一番幸せだった。
新しいオフィスの話は、そのあとやってきた阪神淡路大震災のおかげで、計画自体がすっかり頓挫したが、時を同じくして私たちの仕事も地震の影響で運営が難しくなっていった。それから、憂鬱な問題を抱えているときは、あの時の浮き浮きした気持ちを思い出して、実現しなかった好きな動物との共存を頭の中で思い描いて、せめてもの慰めとしていたものだった。



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