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世の中に、有りそうで無いもの

電気の「瞬間湯沸かし器」をみたことがある?

世の中には、いかにも有りそうで実際は無いものがたくさんある。例えば、電気の「瞬間湯沸かし器」もその中の一つだ。一気に水を沸かして湯にするには相当なエネルギーが必要なので、どうしても湯沸かしはガスが有利ということになっている。つまり水道管の太さのパイプの中を、水は一定の速さで移動しているが、その速さで流れている水を、水が流れるのと同時に沸騰させなければならないのだ。私は、この電気による「瞬間湯沸かし器」を開発しようとしている技術者と知り合いだった。試作品も見せていただいたし、熱伝導の良い素材のテストにも立ち合った。
水道管を現状のような円筒ではなく、熱伝導に優れた例えばアルミなどで薄くて平べったい管状に製造して、平たい管の両面から電気で加熱すれば短時間で沸騰に近い温度を得ることも可能かもしれないが、その形状からして現実的ではない。一定の量の水が貯められる水槽を、夜間などに時間をかけて沸騰に近い温度まで加熱して、その槽のお湯がなくなるまで使える湯沸かし器は実現可能だし、実際それに近い製品は存在しているように思う。

現代の建築技術では簡単にできるのに世の中にはない

この例はテクニカルな課題があって実現できないという例だが、簡単に実現できるのに世の中にほとんど存在していないものがある。それは、日本の美しい城の形をした高級マンションだ。姫路城のような城に住めたら気分がいいと思う。城の形をしたマンションは、私が地域開発の企画の仕事をしているときに、大手住宅メーカーにプレゼンテーションしたことがあった。大体いままでだれも手を出してないものに関しては、絶対に手を出さないというのが日本企業の本質なので、実際に反応があるとは思っていなかった。そこで名刺代わりというか、一服の清涼剤として、この企業に当方のキャパシティの容量を知っていただきたいという意味で、日本のお城型の高級マンションを提案した。相手の会社の誰であるかは教えてくれなかったが、上層部で意外に好評だったという。プレゼン案は評価されたが、その後お城の形をしたマンションを作るという話はまったく出なかった。たぶん、多少は興味はあるが事業化に乗り出すほどには機が熟していないということだと思う。

姫路城など日本の名城をモデルにした最高級マンション

城のスタイルを採り入れると、まずセキュリティの面で安全性が高い。マンションのエリアが城内なので、城の真正面には頑丈な城門があり、通用口はあったにしても部外者はなかなか入りにくい。子供たちが城内で遊ぶさまは、いくつかある天守閣状の建物や櫓(やぐら)から俯瞰できるので、これも子供がいる人には安心要素となる。城内は車が走らないので、子供や老人は車を気にしないで悠々と歩ける。城のデザインは自由自在なので、快適なユニバーサルデザインの導線が確保できるし、景観も含めてあまりマイナス要素はないように思う。実は私がお城の形をしたマンションを発想したのはずいぶん昔だが、いまだに誰も建設しない。自分で小さな城状の建物を建てて営業用の店舗にしたり自分の居宅にしている人が全国に何人かいるが、やはり実際の城ほどの大きさのものはなく、城という存在感を発揮するものはほとんどない。

日本中にあるマンションの中には、ずいぶんひどいデザインのものがあるし、ずいぶんお金をかけたものもあるが、なぜ城状のマンションを建てた建築会社がないというのが分からない。大名や武将が好きで、城という建造物はほとんどの日本人の好みだ。最近ではインバウンドの外国人にも人気が高いし、それだけではなく、日本人は一国一城の主にあこがれるくらいだから、潜在的には城に住みたいと考える人が少なくないはずだ。建築デザインは進歩しているので、いくらでも快適で便利にできるのに堂々とした城タイプのマンションが存在しない理由が、今現在も私には分からないのだ。



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