見出し画像

大阪府大阪市|図書館のデータを公開し、アクセス数が2.8倍、手間のかかる利用申請の対応は62%削減

大阪県大阪市では「ICT戦略」を策定し、デジタル化の施策を次々と進めています。

※大阪市のHPより抜粋
活力と魅力のある大阪を実現するため、ICT の徹底活用を前提として、市民サービスの向上、ビジネスの活性化、行政運営の効率化に取り組みます。

大阪市の取り組みは参考になる事例が多いのですが、その中でも2019年のICT地域活性化大賞(総務省)を受賞した事例についてご紹介します。

※大阪って地方なの…?というツッコミはなしでお願いします・・・


図書館で扱うデータの二次利用の申請が煩雑

劣化の激しい古文書資料の保存と情報活用のために、大阪市立図書館では「デジタルアーカイブ」というサービスを行っています。簡単に言うと、公文書の画像を閲覧できるサービスです。

大阪市立図書館デジタルアーカイブとは、大阪市立中央図書館が所蔵している古文書や写真、絵はがき、地図などの貴重資料の画像閲覧サービスです。キーワード(資料名、著者名、地域名など)や出版年、文書種別(写真・絵はがき等)から資料を探すことができます。

・概要
https://www.soumu.go.jp/main_content/000641313.pdf

実際のサービスはこちらです。
http://image.oml.city.osaka.lg.jp/archive/

ここで起きていた課題は、二次利用の申請が煩雑で事務作業が膨大であるということでした。

二次利用の申請とは、図書館で保管している資料のうち著作権が消滅した資料を、出版・放映・インターネット上での公開等の目的で複製使用する場合は、事前に図書館館長に申請書を提出し、許可を受ける必要がある、というものです。

元々は、この二次利用の申請を受け付けてから申請を許可するまでに日数を要していました。手作業で申請を受け付けて、手作業で内容を確認し、手作業で承認作業を行って通知するため、時間がかかります。


著作権が消滅した資料を『オープンデータ』として提供

大阪市が策定したICT戦略に基づき、「『大阪市ICT戦略』に沿った図書館の今後のあり方」を策定し、二次利用の申請が煩雑であるという課題への対応を行いました。

著作権が消滅した地域資料を『オープンデータ』として、誰でも利用可能にしたのです。

ここで重要になるのは『オープンデータ』の定義です。要するに、著作権が消滅した資料は公開してもいいよ、というルールを作らなければいけないわけです。大阪市ではそのルールを「オープンデータの取り組みに関する指針」として策定しました。

・大阪市オープンデータの取り組みに関する指針

この指針の中でオープンデータの意義・目的については4点上げられており、市自らが積極的にデータを公開し、営利目的、非営利目的を問わず活用を促進する、と明文化しています。

(1)公共データの利活用促進
(2)市民の行政参画の促進
(3)行政の透明性・信頼性の向上、行政効率化
(4)地域コミュニティ・地域経済の活性化


アクセス数が2.8倍、手間のかかる利用申請の対応は62%削減

オープンデータとして、著作権が消滅した資料の画像データを誰でも利用可能にしたことによって、大阪市立図書館デジタルアーカイブへのアクセス数は前年と比べて約2.8倍に増えました。

さらに、二次利用申請件数は62%削減することに成功しています。
(注:オープンデータとして認められていないものに関しては申請が必要)

オープンデータを活用することで、例えば、食品のパッケージに歴史的な水墨画の画像を使うといったことが簡単に可能になりました。デジタルアーカイブの認知度・利活用の増加へ繋がりますし、行政事務の効率化にも寄与しています。


ポイント

著作権が消滅した資料をオープンデータとして定義し、誰でも使って良い、というルールを作ったことが今回のポイントです。

著作権が消滅した資料を画像で閲覧できるデジタルアーカイブサービスというシステムを作るだけでは、利活用としては不十分で、オープンデータにするというルールを加えることで、利活用が促進され事務の効率化も実現できています。

このように、システムとルールの対応・導入をセットで行うことで、より大きな効果を発揮することは往々にしてあります。コロナ禍で話題となった、紙の書類へハンコを押すのは止めて、ペーパーレス化(クラウド化)する話もまさにそうです。

ハンコの問題は厳密には法律が絡んだりしてしまいますが、説明のために諸々省略します。もし紙の書類の保管は必ずしなければいけない、というルールがあったとすると、いくらペーパーレス化のシステムがあったとしても結局紙で保管するという業務はなくなりません。そのため、ペーパーレス化のシステムとルールはセットで行わなければ効果を発揮しません。

ハンコの問題は話しが大きくなりましたが・・・、新システムは導入したものの、社内のルールが整備されていないことが原因で、イマイチシステム化の効果が薄いというケースは本当によくあるので、システム導入時はルールもセットで見直す、という視点はぜひ持って頂くと良いかと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?