見出し画像

借金(債務)と他のものとの諸関係 relationships between debt & others

借金のことを法律用語で債務 debt という(確定債務と呼ばれることもある)。債務はいろいろなものと関係を持っている。この記事ではとりあえずそれらを思いつくだけ列挙して確認してみることにする。

(1)負債 Liability との関係。債務は負債の一部である。負債とは会計用語であり、債務より広い範囲を指す。債務以外の負債には経過勘定と引当金というものがあるが、これらは会計の知識を持った者によって認識(=計上)される。なぜ債務とそれ以外の負債とが同じ何らかの負債性を持ったものとして認識されるのかは考察してみたいと思っている。

(2)資産 Asset との関係。債務を含めた負債は負の資産であるとみなされる。別の言い方をすると、将来における現金(現金は資産の一種)支出であるとも定義されることがある。

(3)純資産 Equity との関係。債務を含む負債は純資産と共に複式簿記の右側=「貸方」を構成する。なぜならば、いずれも資金調達方法を表すからである。一方、負債は他人から借りたモノなので他人資本、純資産は自己資金(または自社発行株式による調達)なので他人資本と呼ばれることがある。なお、拠出資本は Capital はEquity の一部である。

債務も拠出資本も人間的疎外と関係する。なぜならば、債権者(例えば銀行)も株主(資本家)もいずれも、企業に対して利払や配当を求め、利潤を増やすことを望むからである。

(4)交換 exchange との関係。人類学者グレーバーによると、債務とは未達成な交換のことであるという。まず交換、特に等価交換のようなものが親密性と信頼性を欠く外部の共同体との財のやり取りで発生する例外的でよそよそしいものなので、さらにそれが未達のままに残された債務状態は人間を道徳的に強力に拘束する。すなわち、借りたモノは返せ!という規範である。

(5)所有 ownership との関係。所有とは返済期限がない債務である。そもそも我々は長期で世代全体としてみれば、すべての財やサービスを先行世代から贈与されていて、返済する必要もなければ返済することもできない。

(6)税 tax との関係。債務も含めた負債は非課税である。だから、債務を多くできれば課税対象である利益を減らし(利益操作)、脱税ができる理屈だ。

(7)投資 investment との関係。自己資金や株式発行による資金調達(自己資本)に加えて、債務を増やせば、同時に手元現金も増加し、より多くの生産設備を買ったり人を雇ったりすることができる。言い換えれば、借金をすれば多額の投資をして多額の利益を取得するチャンスを得られる。これをレバレッジをかけると言ったりする。

(1,118字、2024.01.10)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?