わたしは覚えている
ビルに囲まれた道路をわたって
水泳教室に向かうあの日を
わたしは覚えている
聳え立つ山々の谷間の民家で
黒猫を撫でる老婆の姿を
わたしは覚えている
いもうとたちと人形で遊ぶ
公園に響く子どもの歓声
みんな みんな どこにいるんだろう
わたしはこんなにも覚えているのに
ああ、あなたにとっては
きっと一瞬のことだったのでしょう
砂つぶに扮した
色とりどりの硝子のように
いつかどこか
遠くまで
それはふたたび
わたしの声が
名前が
姿が
伝わって
“会えたらいいな”
ゆるやかな願いを
きょうも胸の奥に
抱きつづける
願い続けている
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