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ボイリング・ポイント/沸騰

90分のワンショット撮影とはどんなものかと思って観に行ってみた。レストランを舞台にした作品て今まであまり観た事がなかったから興味もあって。

今月の上映作品は本当に凄い。当たりばかり。そんなハードル上がってる中でのこの作品。おったまげた。

本作はレストランが舞台になっているけど料理に関してはあまり触れられておらず、観ていてお腹空いた〜とか美味しいもの食べたいな〜とか思うような作品では全くない。がっつり人間ドラマだった。
ワンカットだから一人一人の人物背景など丁寧に描かれているわけでもないし、一年で最も忙しいクリスマスの前日だから店内は戦場のようで人もカメラも常に忙しなく動いている状態。にも関わらず、めちゃくちゃ人物に感情移入出来てしまうから不思議。この人の事まだ何も知らないのに、一瞬で涙を流してしまったシーンがあって自分でも本当に驚いた。画面を見て涙を流すまでの史上最短記録だったと思う(笑)

臨場感や没入感が凄くあって、どの立場でもないけど自分もずっとあの場に居るような感覚。終わる頃にはなんとも言えない疲労感が確かにあった。沢山のお客さん、その人達の喋る声、あちこちでカシャンカシャンと鳴る食器の音、店内を右往左往する従業員、調理する音、店内BGM。一つ一つを取ってみれば騒音ではないのに、それが一斉になり続ける場所にずっと居るというのは結構なストレスだと思う。登場人物が途中トイレに行ったり裏口から外に出てゴミ出しに行った時に私も喧騒から逃れる事が出来てホッと一息ついちゃってた。そんなストレスフルな舞台である上に90分ワンカットの重圧、体力面や役としての精神面、現場の雰囲気を想像しただけで恐ろしい。

こんな終わり方?!と驚いたけど、なんか妙にリアルで生々しかったから良かったのかもしれない。私の中で少し納得がいった。本当にお疲れ様でしたと言いたくなる(笑)最後の集合写真もシュールでなんか好き。

『ただ単にワンカットで撮影した作品』になってなかったのが良かった。ワンカットだからこそなり得たものが沢山詰まっていたから。本当に観た甲斐があったし、演者と観客が感覚を共有できるという本当に素晴らしい映画体験だった。

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