ご免侍 九章 届かぬ想い(十四話/二十五話)
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あらすじ
ご免侍の一馬の父が、散華衆の隠形鬼だと暴露された。一馬は、連れさられた琴音を助けられるのか。
十四
岡山藩の城下で、旅商人用の宿に案内された。豪華ではないがしっかりとした作りの豪商などが泊まる宿に思える。贅沢な作りの部屋の畳で寝そべりながら一馬は記憶をさぐる。
(散華衆の四鬼の金鬼が言っていたな)
彼らは俺や琴音を殺すつもりはなかった、どこかで住まわせたいと言っていた。そして子供を作らせてイケニエにする。
(人の考える事ではない……)
改めて天照僧正を憎く感じた。祟りを恐れるからと言って生きた人間を捧げたところで何も変わらない。そして生き返らせるために高貴な血を犠牲にして、死者を呼び覚ます。
(馬鹿げた事だ、なんとしてでも止める)
「一馬、いるかい」
「どうした」
海賊の娘、村上栄が浴衣姿で部屋に遊びにくる。盆をもって酒まで用意していた。
「飲みな」
「遠慮する」
「なんでよ」
「ここは敵地だ、いつ襲われるかもわからん」
「いつ死ぬかわからんから、飲むんだよ」
自分で手酌で飲み始める。男勝りの体つきは、ごつごつとしながらもふくよかさは保っている。
「栄、俺のどこがいいんだ」
「強い所かな」
「強さなど一時的なものだ、俺が持っている鬼切りが強いだけだ」
「そんな強さじゃないよ」
一馬は首をかしげる。俺は弱い、格下の相手だから生き残れた。
「あんたはね、芯が強いんだよ」
「そうなのか」
「そうさ、やると決めるとちゃんと行動する、逃げない」
栄がもたれかかるように一馬の体に腕を回す。まるで男に抱かれているように力強い抱擁は、男女の仲というよりも盟友と抱き合っている感じだ。
「しようか」
「いいのか」
「私はかまわない」
のしかかれるように押し倒される。主導権は栄だ。下帯をとかれると乱暴に握られた。