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ご免侍 六章 馬に蹴られて(四話/二十五話)

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あらすじ 
 ご免侍の一馬かずまは、琴音ことねを助ける。大烏おおがらす城に連れてゆく約束をした。一馬は、琴音ことね月華げっかの事が気になる。


 「四天王はあと二人か」

 一馬は指で数える。

 風鬼  ねじれ念仏
 隠形鬼 まむし和尚

 残りの金鬼・水鬼が襲ってくる可能性もある。そして月華げっかの兄である露命臥竜ろめいがりゅうが居る。

(はたして倒せるのか)

 確かに祖父からゆずられた鬼おろしは強いが剣速が遅すぎる。重い刀は早くふる事はできない。そして体力の問題だ。いくら腕を鍛えても、疲れは何倍もたまる、長時間の戦いには不利だ。

(もっと修行をすれば、なんとかなるだろうか)

 そこは自分でも疑問だ、腕は十分に太くなったがそれで強くなったとは思えない。剣の技は速度と相手の攻撃を読む力だ。

(後の先で、どこまで通用するか……)

 屋敷が見えてくると少しだけ安心する。待っていてくれる人が居る屋敷は、一馬には癒やしの場所になっていた。

 玄関に入る前に井戸で足を洗うとすると、琴音ことね月華げっかが何やら話をしていた。一馬に気がつくと

「一馬だ」
「どうしていたんです」

 二人が駆けよると非難するような目で見られる。

「遅くなり、もうしわけない」
「なんだ、ただの朝帰りじゃん」
「朝帰り……なんのことです」

 水野琴音みずのことねが不思議そうな顔で露命月華ろめいげっかを見る。

「どっかの女と遊んでたんだよ」
「……」

 琴音ことねの顔色が変わると黙って小走りに玄関へ逃げていく。

「おい、言い方あるだろう」
「言い方だって」

 月華げっかが、一馬に近寄ると鼻を近づける。えりをつかまれると引き寄せられた。首に鼻をつけると

「なるほど……お仙か」
「わかるのか」

 あわてて後ろに飛びすさると、月華げっかはケタケタと笑いながら

「あてずっぽうだよ、おしろいの匂いなんぞ、わからないよ」
「……」
「なるほどね、親父の情婦と寝てたのか」
「お……お前はどうなんだ、親父から何か言われたのか」

#ご免侍
#時代劇
#馬に蹴られて
#小説


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