見出し画像

ご免侍 八章 海賊の娘(二十一話/二十五話)

設定 第一章  第二章 第三章 第四章 第五章 第六章 第七章 第八章
前話 次話

あらすじ 
 ご免侍の一馬かずまは、琴音ことねを助ける。大烏おおがらす城に連れてゆく約束をした。母方の祖父の鬼山貞一おにやまていいつと城を目指す船旅にでる。一馬かずまが立ち寄った島は、水軍が管理していた。海賊の娘、村上栄むらかみさかえは協力する代わりに一馬との婚姻を望んだ。海賊の港に鉄甲船てっこうせんが突入する。散華衆さんげしゅう四鬼しき大瀑水竜おおばくすいりゅうは一馬に倒される。


二十一

「それで、話はなんだ」

 声が固くなる。月華げっかが、もし敵の側の思惑で動いているならば……殺せるか……わからない。月華げっかの顔をぐっと見つめる。

「どうしたの」
「私たちは敵ではありません」

 浅黒い肌の兵次郎へいじろうは、漁師にしか見えない。笑う顔は男前で誰からも好かれそうだ。

兵次郎へいじろう殿、天照僧正あまてらすそうじょう大烏元目おおがらすがんめは、どのような人物で」
兵次郎へいじろうでいいです」

 彼から聞いた天照僧正あまてらすそうじょうの印象は、菩薩だった。

「彼女は優しい……」
「優しいですね、まるで人には見えないくらいに寛容な人です」
大烏元目おおがらすがんめも同じですか」
「彼は……ふぬけです」
「――ふぬけ……」

 一馬は驚く、敵として憎むべき相手に見えない。

「驚かれるのは当然です。基本は天照僧正あまてらすそうじょうが、命を下しています、大烏元目おおがらすがんめは、ただただ彼女に追従しているだけです」

 なるほど、骨抜きにされた城主と怪しい女僧正。彼女が元凶なのかと思うが子供をさらう理由がわからない。

月華げっかも、人さらいにつれて来られた。兵次郎へいじろうも同じなのか」
「私も同じです、遠い昔に異様な風体の男に、文字通りに荷物を運ぶようにつれて来られました」
「そして修行したと」
「ええ、幼いので普通に感じていました」

 剣術、体術、そして房中術。男女の交合で相手を籠絡ろうらくさせる訓練をする。だが理由がわからない。一馬は兵次郎へいじろうから、さらに詳しく話を聞こうとした。

一馬かずま
「父上」

 ぐるりと振り向くと背が高い男だ。一馬の父、藤原左衛門ふじわらさえもんが居た。

#ご免侍
#時代劇
#海賊の娘
#小説


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?