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ご免侍 九章 届かぬ想い(二話/二十五話)

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あらすじ 
 ご免侍の一馬かずまの父が、散華衆さんげしゅう隠形鬼おんぎょうきだと暴露された。一馬かずまは、連れ去れた琴音ことねを助けられるのか。


 一馬は板床の上で座禅を組んでいた。精神統一、心を無にして戦いにそなえる。雑念を捨てて、ただ敵を倒す事を頭の中で考える。

 外から見れば冷静そのもに見えたのかもしれないが、心の中は何もまとまらない。ただただ疑問ばかり浮かんでは消える。

(父がなぜ散華衆さんげしゅうに……)
(母が死んだ理由は……)
琴音ことねを助けないと、だができるのか……)

 同じ質問を何回も繰り返すが答えなど出るわけもない、今は同じ事を考えてどうすればいいのかを忘れために考えているフリをしている。

「俺は……どうすれば」
「あたしの夫になるんだろ」

 座禅している太ももを踏まれる。海賊の娘、村上栄むらかみさかえが真顔で一馬を見つめる。

「俺は……何もできない」
「そうなんだ、なら何もしなくていいよ」
「……」
「私が仲間を引き連れて、キの城を潰す」

 海賊の娘は、もう男にしか見えない。決断力と判断力で彼女は戦いに勝てる思っている。

「そう、簡単じゃない」
「そんな事は知ってる、だがここでやらないとさらに船を増やされて、私の島も蹂躙じゅうりんされるからね」

 生存のための戦略、生きるためならば貪欲になんでも取り入れる度胸。一馬にない気構きがまえだ。太ももを踏んでいる足に力を入れる。

「私の子種のために、この島で震えてろ」
「……」

 侮蔑の目は、お前は用なしだと言ってるように見える。露命月華ろめいげっかも部屋に入ってきた。

「一馬、頼みがある」
「無理だよ、こんなのが旦那だと思うと泣けてくるね」
「うっさいな、旦那にしなきゃいいだろ」
「こんなのでも、まだ強いからね」

 バチバチと音がしそうだ。村上栄むらかみさかえ露命月華ろめいげっかが、今にも殺し合いをしそうな勢いで、お互いが顔をにらみつける。

#ご免侍
#時代劇
#海賊の娘
#小説


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