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雑多な怪談の話

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#怪奇

SS 南米での出来事【友情の総重量】#毎週ショートショートnoteの応募用(800文字位)

 いつものように古い喫煙室でタバコを楽しむ。薄暗いランプの下で紫煙で広がる。まるで霧のように漂う中を一人の男が近づく。 「やぁ、調子はどうだい」 「南米の鉄道事業は失敗した」  彼を友人と呼べるなら友人なのかもしれない。たまに金を出して支援してくれるが、金を儲けたいようには見えない。 「今日も、話を聞かせてくれ」 「ああ、そうだな『友情の総重量』の話をしようか……」  自分も下見で南米に行く事はある。やはり眼で見ないと判らない。その時は幼い頃からの友人と南米の奥地に行

SS 私の日 #シロクマ文芸部

※読むと不快になる可能性があります、苦手な方は読み飛ばしてください。  私の日は憂鬱だ、私ばかり損している気がする。ベッドから起き上がると学校の支度をする。 「ごめんね」 「当番だから仕方が無いよ」  判ってるって、そうつぶやくと一階に降りる。母が私の顔を無表情で見ているが気にしない、いつもの事だ。自分の娘はあんたじゃない、そんな言葉がテレパシーのように伝わる。以心伝心で、人の考えなんてすぐ判る。私は「おはよう」と母に笑う。 「テストね、頑張りなさい」  中間試験が始

SS 遠くの太鼓【音楽理論&顕微鏡&反面教師】三題話枠

「なにか聞こえるんですね? 」  先生はやや大きな声で診察を始めた、俺は耳鳴りがすると訴えて耳鼻咽喉科で調べたが異常はない。次に紹介された精神科の医者は 「幻聴の可能性もありますので、軽い薬を出します」  俺は薬を飲んで改善すると信じていた。 xxx 「プロデューサー、耳鳴りは大丈夫ですか? 」 「薬をもらったよ……」  アシスタントが足早に去る、俺は打ち合わせを思い出したが気分が乗らない。耳なりがとまらない、いや何か言葉が聞こえる気がする。あの日からだ、あの女と面接し

SS 空飛ぶ先生 #爪毛の挑戦状

 今日は一時限目から噂の先生の授業だ。教科書を用意していると、私の前の席にサリーが座りくるりと振り向く。ハイスクールの教室は、いつものように騒がしい。 「――あの先生は空を飛ぶんだって」  サリーが振り向きながらひそひそと噂話をする。教壇の四十歳くらいの女性教師が小さな声で教科書を読んでいる、彼女は実際の年齢よりも老けて見えるのは長い髪に白髪が混じっているせいだ。先生が森の上をホウキで空を飛んでいるところを見た、魔女だとサリーがつぶやく。私は黙って聞いていると鋭い声が飛んで

SS 冥婚【公用語&男女平等&石】三題話枠

「公用語は北京語だけど、日本語や英語も通じるの」  妻は中国の生まれだ。里帰りで実家に戻りたいので、一緒に来てくれと頼まれた。有給を使い大陸へ旅行に行く。 「今でも男女平等じゃないのよ……」  妻は愚痴をこぼす、それは日本でも変わらない。平等と主張する世界には平等が無い。その皮肉に僕は苦笑いをする。 「干得好」  親戚は妻をもてなすが日本人の私には抵抗がまだある。北粛省の山深いこの地域は、古い風習が残っていて日本人は好まれない。覚悟をしていたので平気だ、それでも敵意は向け

SS 奇妙な部屋 【#青ブラ文学部】極めて陰惨な表現があります。苦手な人は読まないでください。

 静寂を破る放屁の音が部屋中に響き渡った。審問官は誰も動じない、今は水攻めの時間だ、しばらくすると大量の水が排出される筈だ。彼女は木製の三角錐の上に吊されて、両手首を鉄輪で縛られた状態だ。 「魔女なんだろ? 白状しろ」  煉瓦の壁に吊された女や男が虚ろな眼で拷問を眺めている。美しい少女は漏斗から流される水にむせる。 「もっとゆっくり流せ、窒息するぞ」  腹は臨月のように膨れ上がり人が排泄する場所からは水が漏れ始めた。ゴボゴボと腹部からの音が聞こえる、限界だ。堰を切ったよう

SS 半分ろうそく #毎週ショートショートnoteの応募用

 雑踏の街の煉瓦の壁際でみずぼらしい少女が立っている。悲しそうな顔は薄汚れていた、勇気をふるって往来の客に声をかけるが無視される。私は彼女に近づくと直前に歩みを緩めた。 「あ、あの買ってください」  私は興味無さそうに少女を見てわざと視線を前に戻す。 「何か用かね? 」 「蝋燭を売ってます」  少しだけ落胆するが蝋燭は口実かもしれない。少女達は花やハンカチを売ると声をかけるが実際は別のモノを売る。 「かまわんよ、いくらだね」 「あなたの人生の半分です」  驚いて彼

SS 電子のコトリバコ 【ホラー】

※悪趣味な怪談です、気分を害する場合があります。耐性の無い人は以下を読まないでください。他の怪談のネタバレも含むため注意してください。  コトリバコは有名だ。所有しているだけで呪われて不幸になる、小さな箱の中身は、水子を封印する、すぐに手放さないと死者が出る。 「新調したPCは調子いいな」  グラボを積んでAIを構築した。最新のCPUとグラボなので100万近い。元は取れると判断する。小説を書かせて儲けたい。ソフトの名前はコトリバコ。外人が作り上げた大規模言語モデル(LLM

SS どこもお遍路 #毎週ショートショートnoteの応募用

「闇遍路って怖いよ」  お遍路は修行。神社仏閣を回り功徳を得る。闇遍路は逆だ、呪い打ちと呼ばれる恐ろしい儀式。凶悪な犯罪が行われた場所や呪われた塚を巡る。 「あいつは許さない! 」  怨嗟と呪いの言葉で恋人の裏切りを罵る。心変わりは仕方がない、二股も許そう、だが私が別れようとすると引き留めた、土下座をして泣いた。私をいつまでも縛る。貴重な時間が失われた、許さない。私はネットで調べた呪いの方法を試す。  その日から休日に闇遍路の場所を探す。グーグルマップで場所を特定して、そ

SS 朝なのに、夕暮れの匂いがした。#ストーリーの種

警告:グロテスクな表現がありますので、苦手な方は読まないでください。  外は暗い、雨が降る外は朝なのに、夕暮れの匂いがした。雷が鳴ると異臭が漂う。轟々と雨が降り続く、小屋の中も薄暗いままだ。昨日の獲物は足を伸ばして動かない。 「かなり暴れたな、傷だらけだ」  男は腕を見る。赤くミミズ腫れが出来ていた。男は野盗で小屋を見つけて休むことにする。彼は押し込み強盗だ。家人がいれば殺して金目の物を盗るが、山奥の小屋にあるわけもない。 「小娘は死んだか? 」  小屋には一人の娘し

SS 文芸サークル【数え歌&過半数&学生証】三題話枠

「一つとや 一夜明ければ 誰も居ぬ 誰も居ぬ」 「おいやめろ 辛気くさい…………」  同窓会で集まって飲むの六年ぶりだろうか、文芸仲間で小説を書くサークルに属していた俺は、会社の仕事がいそがしくモノを書く事も忘れていた。  数え歌を改変して歌うのは怪談が好きな、Sだ。彼はやたらと怪奇物を好んで書いていた。誰もが彼を変人として扱ったが、小説仲間はみなが変人みたいなものだ。 「Mは来ないのか? 」  女性のMはサークルの紅一点で、童話が好きな彼女は子供用の作品を量産していた

SS 古いガソリンスタンド 三題話【ガソリンスタンド&パッケージ&衆議院】

 仕事帰りに深夜の田舎道を車で走る。衆議院の先生の秘書として働く俺は、速く帰りたかったが、ガソリンが足りない。給油をするためにガソリンスタンドの場所を探した。カーナビで店を見つけて車をまわすと、そこは照明が暗く陰鬱な雰囲気の店だった。セルフなので自分で給油して金を払う。 「ガソリン代がまた値上げか」  俺はパネルを操作しながら料金を払おうとした。故障なのか料金が払えない、俺は呼び出しボタンを押して、店員が来ると期待をしたが、事務所から出てこない。 「なんだ寝てるのか?」

SS Hey, Siri. Give me chocolate. #ストーリーの種

 ママはお風呂に入っている、僕はママの携帯を見ながらつぶやいた。お腹が減っていたので無意識だったと思う。記憶は定かじゃない。 「Hey, Siri. Give me chocolate.」  誰かチョコレートくれないかな。しばらくすると携帯から声がする。 「チョコレートを送りました」  奇妙な返答は単なる間違いに感じたけどチョコが机に置いてある。僕は手に取って食べると甘くておいしい。お風呂から上がったママは僕から携帯を取り上げた。 「ママの携帯をいじっちゃだめよ」

SS ヘルプ商店街 #毎週ショートショートnoteの応募用

 汚れたシャッターに「HELP」と大きくいたずら書きがされている。シャッターアートのつもりか?俺は仕事を始めた。 「汚されて困るんだよ」  商店街の会長さんが俺をねぎらう。仕事の内容を聞くと数ヶ月前から深夜になるとシャッターにイタズラされる。人を雇っても長続きしない。 「閉店後に消します」  店が閉まるとシャッターに書かれた文字を薬剤で消す。夜の商店街は閑散としていて怖い。ふと後ろに気配がある。商店街の人だろうとふりむくと誰も居ない。 「また書かれてたよ」  昨日