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SS 半分ろうそく #毎週ショートショートnoteの応募用
雑踏の街の煉瓦の壁際でみずぼらしい少女が立っている。悲しそうな顔は薄汚れていた、勇気をふるって往来の客に声をかけるが無視される。私は彼女に近づくと直前に歩みを緩めた。
「あ、あの買ってください」
私は興味無さそうに少女を見てわざと視線を前に戻す。
「何か用かね? 」
「蝋燭を売ってます」
少しだけ落胆するが蝋燭は口実かもしれない。少女達は花やハンカチを売ると声をかけるが実際は別のモノを売る。
「かまわんよ、いくらだね」
「あなたの人生の半分です」
驚いて彼女の顔を見ると真剣な表情。私は彼女に手を差し伸べると家に連れ帰る、少女と暮らすだけで、洪水のように幸運が舞い込む。親戚の遺産が手に入り、それを元手に政治家の道を進むとすぐに国民に支持を受けて独裁者になれる。
「君のお陰だよ、君は何者なんだね? 」
「死神よ、この国は半分のろうそくのような寿命」
彼女はふっと消えた。独裁者の私は今でも思い出す。私は国を滅ぼすために選ばれた。暗い地下要塞の中で、蝋燭の淡い炎を吹き消して毒を飲む。
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