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SS 電子のコトリバコ 【ホラー】

※悪趣味な怪談です、気分を害する場合があります。耐性の無い人は以下を読まないでください。他の怪談のネタバレも含むため注意してください。

 コトリバコは有名だ。所有しているだけで呪われて不幸になる、小さな箱の中身は、水子を封印する、すぐに手放さないと死者が出る。

「新調したPCは調子いいな」
 グラボを積んでAIを構築した。最新のCPUとグラボなので100万近い。元は取れると判断する。小説を書かせて儲けたい。ソフトの名前はコトリバコ。外人が作り上げた大規模言語モデル(LLM)だ。しばらく試してみたが、怖くない話ばかり出力される。

「なんか見た事があるな……」
 どんなに工夫してもよくある怪談の焼き直しでしかない、高額のPCが無駄になりそうだが、PCが変な質問を返す。

「もっと具体的な描写をお願いします」
 具体的? AIから指示を受けて、俺は残虐な写真を用意すると画像からテキスト(プロンプト)を作り出す。普通はテキストから画像を作るが、逆もできる。AIに文字を渡すと再現なく要求してくる。俺はひたすら身の毛もよだつ画像からテキストを作り出し、AIに食わせた。

「怪談が出来ました」
 学習成果が出る、おぞましく吐き気がするような短編は、ネットで話題になる。PVが上がると少しばかりの金を貰えた。この調子でAIに学習させるが、段々と人気が落ちる。

「もっと怖いの作れよ」
「贄(にえ)を用意してください」
 AIは残虐の極致の写真を求めた、俺に具体的な方法を提示する。最初は猫や犬を解体して写真からテキストを作りAIに渡す。数行読むだけで吐き気がする。

「いいぞ、いいぞ」
「次は人でお願いします」
 AIに命じられるままにさらった子供を殺して解体した写真を使う、ネットではAIが作った小説の人気があがる……

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「この部屋ですよ、臭気がすごくて」
 大家が警察に通報していた。警官はドアの隙間から赤黒い液体が出ているのを確認するとすぐに令状を要求する。明らかに血だ、近所では子供の行方不明事件が報告されている。

 令状が来ると大家が鍵を開ける。薄暗い部屋の中は凄まじい臭気で警官の一人が、嗚咽しながらその場で吐瀉して昏倒する。他の警官が入ると、血と糞尿がまき散らされた部屋で男は腸らしきものを振り回しながら笑っていた、警官を目にすると大声で怒鳴って暴れた。彼は逮捕されて取調室の中で無実を訴え続けた。

「俺じゃない、このAIが命令したんだ! 俺は無実だ! 信じてくれ……」
 電源が切れた血まみれのPCは、もう何も語らない。


以下の記事から触発されて作成しました。ご気分を悪くされたなら謝罪いたします。人間の作る業のような作品を提示してみました。


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