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SS 奇妙な部屋 【#青ブラ文学部】極めて陰惨な表現があります。苦手な人は読まないでください。

 静寂を破る放屁の音が部屋中に響き渡った。審問官は誰も動じない、今は水攻めの時間だ、しばらくすると大量の水が排出される筈だ。彼女は木製の三角錐の上に吊されて、両手首を鉄輪で縛られた状態だ。

「魔女なんだろ? 白状しろ」
 煉瓦の壁に吊された女や男が虚ろな眼で拷問を眺めている。美しい少女は漏斗から流される水にむせる。

「もっとゆっくり流せ、窒息するぞ」
 腹は臨月のように膨れ上がり人が排泄する場所からは水が漏れ始めた。ゴボゴボと腹部からの音が聞こえる、限界だ。堰を切ったように透明な噴水が三角錐を塗らす。何回目かの浄化の水は既に無色だ。清らかな水は、彼女が悪魔ではない証拠のように見える。漏斗が外されると尋問官は硬い木の棒で背中を殴る。

「わた……まじょ……」
 もう声も出せない、水のせいで喉を痛めている。狂喜の顔で魔女審問官は叩き続けた。

「もういいだろ、また明日だ」
 少女は貴重だ、なるべく長く持たせるように工夫する。もっと事務的にする場合は鉄の椅子で下から炭であぶれば良い、すぐに白状する。拷問の後は数時間で死んでしまう。

「今日は誰の番だ? 」
 審問官はクジをひく。牢屋につながれた囚人をなぶり物にするためだ。クジに当たった審問官が喜びながら夕食を持って牢屋の扉を開く。

 扉の内側は奇妙な世界に見えた、虫が大量に居る。人の背丈ほどのダニが歩いてくる。審問官に襲いかかると首を切り落とす。

「どこだ、ここは……」
 審問官は首を切り落とされた筈なのに、生きていた。いや自分はダニのようだ、ダニに生まれ変わっていた。腹が痛い、見ると半透明の腹の中に男の顔が見える、審問官の顔だ。悲鳴を上げて逃げようとするが動けない、体が重すぎる。しばらくすると、腹の男達は審問官の腹を食い破って出てくる。

 また死んだと思うが、審問官は自分が男の腹から生まれたのを知る、そしてまた自分の腹から無数の審問官の顔が見えた……狂うこともできずに、無限の苦痛を味わう。

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「ずいぶん長いな? ちょっと様子を見てくる」
 戻って来ない審問官を調べに牢屋に行くが同じ末路になる。一人残らず審問官が死ぬと少女が裸身のまま拷問の部屋に入ってきた。囚人を全て解き放つと契約をさせる。

「この世界の人間を無数に増やして、地獄の世界にするのよ」
 彼女は悪魔と契約をした、この苦痛を取り除いてくれるなら神なぞいらぬ。世界の破滅を望んだ。

※このダニは実在します。


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