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SS 私の日 #シロクマ文芸部

※読むと不快になる可能性があります、苦手な方は読み飛ばしてください。


 私の日は憂鬱ゆううつだ、私ばかり損している気がする。ベッドから起き上がると学校の支度したくをする。

「ごめんね」
「当番だから仕方が無いよ」

 判ってるって、そうつぶやくと一階に降りる。母が私の顔を無表情で見ているが気にしない、いつもの事だ。自分の娘はあんたじゃない、そんな言葉がテレパシーのように伝わる。以心伝心いしんでんしんで、人の考えなんてすぐ判る。私は「おはよう」と母に笑う。

「テストね、頑張りなさい」
 中間試験が始まろうとしている。母なりの精一杯のやさしさを見せてくれる、私はそれだけで十分に嬉しい。従順な娘のフリをして、母も脚本があるかのように芝居する。幸せな家庭、幸せな笑顔、幸せな世界。

 試験が終われば私は、お休みが取れる。湖畔こはんにある別荘で湖を見ながら本が読める。もう少しの辛抱だと自分をはげました。翌日の朝に自分の手が血に染まってる事に気づくまでは楽観していた。

辛抱しんぼうがたりなかった」
「仕方が無いわ、あの男が悪いの」

 警察が来て私を拘留こうりゅうする。私は病院に閉じ込められた。医者は私が父を殺した事を告げる。

「虐待で精神が乖離かいりしてます、治るまでは病院で治療を受けてください」
 医者が私を慰める。損しているのは、私で無かった、もっと恥辱と苦痛を味わったあの娘だ。あの娘を助けるために生み出された騎士が父親を殺した。今は騎士があの娘を守っている。幸せそうに笑っている。私ものんびりしよう、頭の中にある別荘でお休みを取ろう。

「どんな本を読もうかな……」

 病室で体を固定された少女が幸せそうに笑っている。天井を凝視ぎょうししながら世界で一番の幸福を感じている。


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