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創作民話 関係

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2023年11月の記事一覧

SS 中国の怪談 【紅葉鳥】 #シロクマ文芸部

 紅葉鳥を手に取ると口いっぱいにほうばる。油で炒めてゴマをちらして食べると絶品だ。男は夢中になって食べている。  男は河南省北西部にある洛陽の街を出て旅している。行商人の彼は街を行き来して稼いでいた。今回は道に迷い山中に家の灯りをみつけた。 「ちょうど夕飯です」  扉を開けて女が顔を出すとやつれているように見える。金を払う約束をして泊めてもらう。  夕飯は食卓の皿に山盛りにされた鳥の足だ。鳥の足が真っ赤にゆであがるので紅葉鳥といわれている。カリカリとしながらも汁気があ

SS 小判食え #毎週ショートショートnoteの応募用

「円が無ければ小判喰えばいいのかな……」  カネゴンは困っていた。彼はタイムスリップして江戸時代にいる。彼の食事はあくまで日本の円だ。胸のメータも¥で表示されている。 「おい、めしだ」  見世物小屋で飼われているカネゴンは、江戸時代に到着するとすぐ捕まる。 「十六文だ」 「おそば代くらいですね」 「贅沢ぬかすな、しかし銭を喰う化け物とは思わなかった」  言葉が話せるので、一般芸人達と同じ扱いで、蛇女やろくろ首を演じる人間と一緒にいる。 「まるで鍋のふただね」 「言葉

蜃気楼 (10/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:姉を助けるために解毒丸を探す  静の話では、西国の洞窟に鬼が居て解毒丸を持っている、もし欲しければ鬼を倒すしかない。  幸蔵は、天狗の力を得て羽もあるが遠出は難しい。仙人は、もし解毒丸があるならば村人を救えるので、助けてくれると言う。 「わしの力では、鬼の力を防ぐくらいしかできん、退治はお前の力次第じゃ」  仙人は京の陰陽師から頼まれて、東国の薬を待っていた。幸蔵の姉が嫁いだ庄屋の家で受け取る予定だったが、村人に尸鬼が取り憑いてしまった。 「

SS 訓告したいの四六時中 #毎週ショートショートnoteの応募用

※すいません、下品です。 「訓告したいの四六時中」  とがりネズミの真紀が、鼻をひくつかせて匂いを嗅いでいる。マヌル猫のマヌルは、扉から入ってきた真紀を、ぼーっと見ている。 「真紀さん、何かありましたか?」 「マヌルさん、発情してましたよね」 「え?」  たしかに動物が住むこの街でも、発情行為はある。たまに道路のど真ん中でしている場合もある。  でも自然な行為なので誰もとがめはしない。 「私は、もう歳でできませんよ」 「違います! 匂いをつけてますよね」 「ああ、あ

渦巻き (11/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:姉を助けるために解毒丸を探す  静を浜に一人にするのも心配なので四人で小舟に乗ることにする。 「場所は判るのか? なぜ判るのだ?」  幸蔵は不思議そうに若者に聞くと幽霊島は蜃気楼として見るので本来の場所とは別の所に存在していると教える。 「蜃気楼?」  幸蔵は自分の知らない世界が多いことに驚きながらも、若者をあまり信用していなかった。小舟はしばらく陸地が見える場所を進みながら目印になるような、大きな崖に向かう。浸食された崖は巨大で山のように見

磯女 (12/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:鬼の策略で海の底に沈む幸蔵  沈みながら頭上の光を見る、もう手が届かない。溺れ死ぬ、静を助けられない、姉を助けられない。くやしさと悲しさで腹の下から痺れるような感覚が広がる。 (ねえさま、しずか……)  目をつむる、息苦しさから肺から空気があふれ口から泡を吹き出した。息ができない、もがくように手を上にあげる。その手を白い手が握る。 (人の子……ではないな。天狗が何をしておる? )  顔は女だが腰から人は蛇だ、磯女が幸蔵に向かって息を吹きかける

SS 木の実このまま税理士 #毎週ショートショートnoteの応募用

「マヌルさん、こんにちは」 「コトミさん、いらっしゃい」  珍しい石を加工して売っているマヌル猫の店に、少女が訪れた。 「実は税金の話なんです……」  マヌルの町も税金はある、住んでいるだけで住民税が取られる。水を使えば井戸税、なんでも税金だ。 「そうか。オオカミの子供を拾ったから大変だね」  コトミは洞窟で古代のオオカミ男の子供を助けている。子供にすら税金はかかる。 「どうすれば払えるのか判らなくて……」 「食事はどうしているんだい?」 「ヒマラヤン婦人の下宿を