ただ何かを書く衝動(1,800字ほど)
行政書士事務所で亡母関係の手続きを終えてから、最寄りのショッピングモール内にあるスターバックスに寄ってコーヒーを飲んでいた。スマートフォンの画面で時間を確認すると11時になったばかりで、予約した近くの歯医者の診療時間まで、1時間半ほど時間があった。微妙な時間だったので、一駅電車に乗って家に帰るか、このままショッピングモール内に滞在するか迷った。歯医者の前に昼ごはんを食べようとは思わなかったので、服とか、本とか、文房具とか、ショッピングモール内でみてまわってもよかった。そんなことを考えながら、スターバックスでタイピングして文章を書いて過ごしていた。
時間をとって何かを書くのは久しぶりだった。テーブルの上にテキスト入力マシンのポメラを開いて、パチパチとタイピングして文字を入力した。ポメラの右横にはドリップコーヒーが入った白いマグカップが置いてあった。マグカップの隣には外した腕時計とスマホが置いてあった。店内はそれほど混んでいなくて、2人掛けテーブル席12席中、私が座る席を含めて4席が埋まっていた。閉じられたブラインドの隙間から外光が差し込んできていた。遠くのソファー席では2組の家族連れが過ごしていた。「やめなさいよー」とやさしく諭すような女性の声が聞こえて、「あーい」という子どもの声が聞こえた。
せっかくショッピングモールにいるのだから、私がほしいものを買ってもよかった。ここにほしいものは何もないと思った。無意識に創り出した理由がありそうだった。昔はほしいものがあった。ゲームソフトがとてもほしかった。あれはなんだったんだろう。やがてゲームをしなくなった。ゲームをしても実利がないと思った。たのしさがあったのにやめてしまった。ほんとはゲームが好きだった。難しいゲームはできなかったが、単純なゲームが好きだった。いつしかゲームをしなくなった。実利がないからだった。哀しい感じがした。
白い長袖シャツを着た女性がやってきて、私が座る席の左隣の2人掛け席に座った。店内で白いシャツを着ていたのは、その女性と私だけだった。遠くに見えるソファー席で立ち上がった男性が、子どもを脇に抱えて歩き始めた。子どもをあやしているのか、子どもを脇に抱えたまま店内を歩き回った男性はソファー席に戻っていった。
テーブル上に置いてあったスマートフォンで時間を確認すると、歯医者の予約時間まであと45分だった。タイピングした文章の一部をQRコードで読み取ってFacebookの記事に貼り付けて投稿した。
書くことが私の衝動だとしたら、それはやっていくしかないし、やっていくとか、やっていかないとかではなくて、衝動なのだから、そこにあることで、それをどのように生活に乗せていくのか、ということだけれど、私は衝動的にいろんなことを書きたいと思っていて、浮かんだことを言葉にしたい、それが何かの役に立つかもしれないし、その精度を上げていけば糧になる可能性があって、そこの接点を探ればいいし、接点ができて糧になれば、なお良いのだから。
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