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「家内」という立場を都合よく使わせてもらう

「鈴木さんは結婚してるから」

モデルの仕事の現場で、同じ事務所に所属している人と出くわすことはある。同じ事務所の人とはSNSで相互フォローをしていたり、なんだかんだいって噂は流れるものなので私が既婚者であることもみんな知っている。

「最近仕事どう?」
「まあぼちぼちかな」

なんて会話はモデル同士ではよくあること。それでも時々言われる。

「鈴木さんは結婚してるから気楽ですよね」

言われて嫌な気持ちになるわけではない。事実私のモデル業は結婚しているからこそ成り立っている面もある。

孤独な仕事「モデル」

モデルに限らず、収入が不安定な仕事は孤独になりやすいものだと思う。たくさん仕事をしてたくさんお金があるうちは平気だが、仕事がなくなり収入がなくなれば将来のことを不安に思う。

不安な時を一人で過ごすのはとても辛い。

「いつまでこの状態が続くのか」
「私はこの先うまくやっていけるのか」

そんな不安がつきまとう。

そしてその不安は仕事の内容からくるのではなく、主に経済的な状況から生まれる。

モデルの仕事の中にはモデルとしてのキャリアアップにつながらない、ただその場限りの仕事もあれば、自分の望んでいない仕事もある。そういった仕事のために将来を案ずるのならまだ余裕がある。

独身のモデルが一人で抱えるどうにもならない不安とは、経済的な不安から生まれることが多い。

私が結婚したのは、そんな一人で過ごす不安から逃げるためでもあった。

「男は外で働き女は内を守る」という考え方

昔から日本には「男は外で働き女は内を守る」という考え方があった。実際家庭の中の女性は「家内」「奥さん」と呼ばれることもある。それだけ「女性は家の中にいるもの」という考え方が強かったのだろう。

今でこそ「そういう考え方は古い」と言われるようになったが、作家・モデル・ライターという収入が不安定な仕事をしながら結婚した私は、この考え方に大いに救われている面もある。

確かに一見するとモデルは人前に出て、外で働く仕事だ。それでも上記の通り収入はかなり不安定。一人でモデルとして生きていくのは孤独なもの。

一人でやるには孤独な職業を生業としている私は、今、サラリーマンとして働く夫の支援があり、夫の存在によって不安を感じずに収入が不安定な仕事ができている。

「俺がいるんだから、お金のことは心配せずに自分の仕事をしたらいい」

夫は私にこう言ってくれる。

日本に古くからある「男が女を守る」「男が家計を支える」そして「女は家の中にいる」という考え方があってこそ、夫は私を支援してくれる。そういう考え方があってこそ、私は孤独を忘れて仕事を成り立たせることができる。

私は「家内」という立場を都合よく使わせてもらっているのだ。

思えば私の家の近所には、自宅を改装して営業しているネイルサロンやエステ、マツエクサロンなどがある。もちろんそういった事業を行うことでちゃんと稼いでいる女性は少なくないのだろう。でも、そこはあくまでも自宅なのだ。女性が一人で建てた一軒家なら話は別だが、だいたいの場合はその家で一緒に暮らす家族がいる。

その家族、そしてパートナーの理解と支援があってこそ、そういった仕事は成り立つのだ。もし女性が未婚の独身だったら彼女は自宅で自分のやりたいサロンを開業することもできなかったかもしれないし、もし開業できてもやはり孤独に悩むこともあったと思う。

パートナーがいるからこそ成り立つ自立

「自分のやりたい仕事をしたい」
「自分らしく生きたい」

そう願っている女性は多い。特に最近は女性の社会進出が叫ばれ、女性の活躍の場も増えた。セクハラに対しても毅然とした態度をとれる風潮ができあがりつつある。

自宅を改装してサロンを営むのもひと昔よりも一般的になった。サロン営業ができるのだから、私のように自分のやりたいことを仕事にすることも可能だ。

収入が不安定な仕事を一人でやるのは不可能ではないが、心細いもの。「やりたいことがやれない」と言っている人の、やりたいことがやれない理由のほとんどは経済的な不安でもある。

だからこそ、女性は「家内」という立場をもっと都合よく使ったらいいと私は思う。パートナーの理解と支援がある中でなら、収入が多少不安定でも不安を感じずに自分のやりたい仕事ができる。

確かに「男は外、女は内」という考え方は古いのかもしれない。それでもその考え方の中に、現代の女性の働き方があるような気がする。





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