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厳冬

厳冬

昭和五十七年十二月

昼に地元・沖洲を出たフェリーは、浜松沖をゆっくりと走っている。

ここで飛び込めば、遺骸も何も上がるまい。

暗くなりかけた水面を見ているうち、分厚い眼鏡をかけた顔が脳裏に浮かんだ。先月訪れた、職業安定所の職員の顔であった。

「やめときない」

家を継いだ三男の嫁とは折り合いが悪く、自分が建てたはずの屋敷には居場所がなかった。家政婦でもして外に出ようかと相談に訪れたが、齢七

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