見出し画像

桃花さんの TPS(ターニングポイントストーリーズ)

 人には人生の転機がある。そんな人生のターニングポイントをご紹介します。
 うつになった。
 きっかけは会社での人間関係。いろんな指摘をされるようになって、身動きが取れなくなっていった。そして、いざ復職しようと思っても、会社に近づくことも怖くなった。そんなとき、会社の産業医の先生から、リワークプログラムを勧められた。恐る恐る、参加してみることにした。
 

 初めてのリワーク

 私の参加したリワークは心療内科の付属施設として運営されていた。なので、医師との面談から始まった。医師から、「困ったらどうする?」っと聞かれた。私は「本を読みます。」っと答えた。「こんなに人がいるのに本を読むの?」今までわからなかったら本を読んでた。なぜなら人に訪ねることが怖いから。勇気が要る。だけど勇気を出して「人に訊きます」っといった。先生は優しくうなずきながら、「そうだよね」っと答えた。これが私のリワーク参加の始まりだ。この時、人と関わるきっかけをいただいたのだ。
 知らない人ばかりの中で、好きな席に座る。早く行った人順に座る。大きく二つの部屋があった。奥の部屋は賑やかで長く参加している人たちが入っている。入口の部屋は人見知りが残っている人たちの静かな部屋。私は静かな部屋にはいった。
 今までの自分の経験から、話しかけやすい人、話しかけにくい人に人を分類する癖がある。特に男性に話しかけることは苦手である。なので、静かな女性の人たちと少しずつ話ができるようになっていった。

伝説のリワーク師
 その中で、伝説のリワーク師、Iさんとの出会いがあった。その人は女性で、リワークのスタッフの人だ。時に声をかけてくれたり、いつも見守ってくれている人だ。ようやくリワークに慣れてきたころ、グループワークがあった。参加者25人ぐらいで、椅子に座り輪になる。そして1人の質問者が全員に質問したいことを話すのだ。今回は私の順番だった。そして問題提起をした。
 「緊張した時にどうやって対処してますか?」当時の私は声を出すのもやっとだった。Iさんはみんなに、「この中に、緊張したことのない人いますか?」と聞いた。誰も手を上げない。そして、にっこり笑って「だって!」っと言ってくれた。そしてみんなが順番に、自分の対処法を話してくれた。みんなの勇気を出しての発言は、本当にうれしかった。なぜならそれは、私を思ってのプレゼントだから。そして最後に、そのプレゼントを受け取った私が話す番だ。私は「みんなに話してもらって、うれしくって、うれしくって、本当にありがとう。それを伝えたくって。今は緊張するより伝えたい気持ちの方が勝ってます!」っと話した。Iさんは「それよ!それがあったら伝わるのよ!今、緊張している様に見えなかったよ~」。

画像1

 そこから、人前で話せるようになっていった。
 そして、気づきが起こり始めた。自分のことばかり考えていたことに気が付いた。どうして会社にいけないのか。それを自分の中でグルグル考えてしまって、そればっかり。自分を見ているようで見ていなかった。勝手にしんどい自分を作っていたのだ。
 徐々に声をかけてもらうことが増えていって、みんなとたくさんおしゃべりするようになった。会社で言えなかったこともいっぱい話をした。他の人たちとも共通点を見いだせるようになってきた。
 例えば、責める対象だ。私の場合は自分を責めてしまう。その一方で他人を責める人もいる。つまり自責傾向か他責傾向か。話し合っているうちに何だか、自責も他責も同じように思えた。共通点は責めるということ。それを続けることで前に進めなくなる。そして他責の人が心の中で使っている言葉も、結局自分にも向いているのだ。もちろん責める内容は違っているし、方法も違ってたりする。違いは違いとして受け入れ、その上で一緒のところを共感しあう。そんなリワークの外では学べないことを学んでいった。
 

 卒業へ

 私のリワークの終盤に差し掛かった時、リベートの時間があった。リベートとは、みんなで議論をする時間なのだけれど、人と話すのがしんどい人も多く、リベートがある日はみんな休みがちである。しかし私は復職の時期も見えてきたころだったし、出席をした。するとIさんからリベートのリーダーに指名された。緊張しながらもなんとか終えた。終わってからIさんは「始めのころは参加することもしんどそうだったけど、今ではスタッフみたいだったよ。」と、声をかけてくれた。覚えてくれていた。そしてずっと見守ってくれている。さらに成長した私を褒めてくれた。そんなうれしさがこみあげてきた。よかった。これで復帰できる!そんな気持ちになっていった。
 リワーク卒業の日。リワーク参加のはじめに、人と話すきっかけを下さった。お医者さんからの花束の贈呈。みんなに声をかけてもらい、そして拍手で送りだしてくれた。
 いま振り返っても、この暖かい時間があったからこそ今働いていられる。そんな私の大切なリワークでの時間だった。

 いまもそこでは懸命に復職を目指している人がいる。その人たちへ心からのエールを。

画像2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?