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和歌山カレー事件・ドキュメンタリー映画『マミー 』情報解禁

 和歌山カレー事件をテーマにした初のドキュメンタリー映画が公開されることになった。配給会社から10日、発表・情報解禁された。タイトルは『マミー』。8月3日から東京・渋谷のシアター・イメージフォーラム、大阪の第七藝術劇場など全国で順次公開される予定。

 「和歌山毒物カレー事件から26年目の挑戦」と銘打っているように、事件が公式的に映画化されるのは初めて。林眞須美さんの長男氏は「カレー事件の現在イマがしっかり描かれているこの作品を通じ、実状を広く知っていただきたいというのが本心だ。多くの方に足を運んで観ていただきたい」と強く訴えている。

映画『マミー』メインヴィジュアル
(C)2024digTV


 ※確定死刑囚として大阪拘置所に収監中だが、一貫して無罪を主張。動機が未解明であること、自白がないこと、直接証拠がないこと、2024年現在も再審請求を行っていることなどからあえて林眞須美さんと表記する。ご理解いただきたい。
 ※当記事のサムネイル兼ヘッダー画像は公式HPより引用

 メガホンを取るのは、今回初めて映画を手がけるという映像ディレクターの二村真弘監督。和歌山に何度も足を運び、入念な取材と撮影を数年にわたり敢行した。

 和歌山カレー事件は1998年7月25日に発生。和歌山市園部地区の夏祭りで提供されたカレーの鍋にヒ素が混入され、67人が急性ヒ素中毒を発症した。うち子供を含む4人が死亡。近所の主婦、林眞須美さんが殺人・殺人未遂・詐欺容疑で逮捕され、無罪を主張するも、状況証拠を根拠に一審から最高裁まで一貫して死刑が言い渡された。眞須美さんは現在、大阪拘置所で24時間監視下に置かれながら、3畳の小さな居室で1日1日を過ごしている。遮断された環境で、家族以外との手紙のやりとりは許可されていない。

映画『マミー』場面写真(C)2024digTV


 映画ではここからさらに奥深く、真相に迫っていく。

 事件発生から四半世紀、本作は最高裁判決に異議を唱える。「目撃証言」「科学鑑定」の反証を試み、「保険金詐欺事件との関係」を読み解いていく。さらに眞須美の夫・林健治が自ら働いた保険金詐欺の実態をあけすけに語り、確定死刑囚の息子として生きてきた林浩次(仮名)が、なぜ母の無実を信じるようになったのか、その胸のうちを明かす。林眞須美が犯人でないのなら、誰が彼女を殺すのか? 二村真弘監督は、捜査や裁判、報道に関わった者たちを訪ね歩き、なんとか突破口を探ろうとするのだが、焦りと慢心から取材中に一線を越え...。
 映画は、この社会のでたらめさを暴露しながら、合わせ鏡のようにして、私たち自身の業や欲望を映し出す。

【プレスリリースより引用】


 筆者は一足早く関係者向け試写会で本作品を鑑賞した。
 今年で26年が経つ和歌山カレー事件の様がありのままに細かく描かれており、胸を締め付けられる場面や考えさせられるシーンが多いのが印象的。今まで見たドキュメンタリー映像の中でも、丁寧で、隙がない。

 人間模様も細かく描かれている。作品の内容に触れてしまうため詳しくは書けないが、ここまで突き詰めるのかと驚いた点も。緊迫した瞬間があり、客席の筆者にまで心臓が止まりそうなほどの緊張が伝わってきた。その糸が切れないまま会場を後にしたほどだ。集中して観ているとあっという間の119分だったように思う。

 全体を通し、眞須美さんに対する捜査、判決、現状について改めて問い直す必要を実感した。ここまで綿密に取材・撮影した二村監督には感服以外の言葉が見つからない。
 忖度抜きで1人でも多くの人に見ていただき、事件について考えていただきたいと心から思える作品だ。     
 筆者も一般公開後に再度鑑賞する予定である。

試写会が行われた会場


 眞須美さんも、公開を非常に心待ちにしている。
 長男氏によると、5月7日に大阪拘置所で眞須美さんと面会し、映画について報告を行ってきたという。

 面会室で長男氏からアクリル板越しにメインヴィジュアルのチラシを見せてもらった眞須美さんは、「素敵!(下部の白い花を見て)きれいな写真やね!」と気に入った様子。映画の公開について「一刻も早くここ(大阪拘置所)から出たい。自分が置かれている現状や捜査・科学鑑定などの不可解な点について、多くの方に知っていただく機会となればありがたい」と話し、再審開始の追い風になればと期待を膨らませた。

 10歳の時から事件と切っても切れない人生を送ってきた長男氏。映画の完成を受け、現在の心境をこのように語る。

 「映画鑑賞はわりと好きな方で、国内外のドキュメンタリー作品もよく観ている。が、他の事件を扱った作品では、そのほとんどが裁判で何らかの区切りがついたものが多い」
 「和歌山カレー事件の映像化について初めてお話をいただいた時は、再審請求中の事件ということもあり難易度が非常に高く、実現できるのか一抹の不安があった。それでも根気強く完成までこぎつけてくださった監督、関係者が奔走する姿をずっと見てきたので、情報解禁され公開日が決まったことに安堵とともに緊張している。映画を観終えた感想としては、当事者の自分でもどう表現すべきか言葉が見つからない。今のところ〝Interesting〟が正しいのではないかと結論づけている」

注:「interesting」は形容詞。
興味を起こさせる、関心を引くなどの意味がある。
【小学館『プログレッシブ英和中辞典』より引用】

 「映画という劇場を通した伝え方について、娯楽的・商業的だと捉えられるのは否めない。快く思わない方がいらっしゃるかもしれない。重々承知している。その上で、映画でしか伝わらない、伝えられないこともあると思う。ご理解いただきたい」

 「映画の公開を機に発信活動にこれまで以上に尽力し、今後も事件と母親の行く末を見守る覚悟でいる」

続報を待つ。

映画『マミー』場面写真(C)2024digTV
映画『マミー』場面写真(C)2024digTV
映画『マミー』場面写真(C)2024digTV




 公式サイトや映画館ホームページなどによると、上映を予定している劇場と公開日は下記の通り。(5月10日現在。判明次第、順次追加予定)

【関東】
◽️シアター・イメージフォーラム  8月3日〜
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-10-2
(JR渋谷駅から徒歩8分)


【関西】
◽️第七藝術劇場          8月3日〜
〒532-0024 大阪市淀川区十三本町1-7-27サンポードシティ6階
(阪急十三駅から徒歩3分)


【九州】
◻️KBCシネマ          8月3日〜
〒810-0071 福岡市中央区那の津1丁目3-21
(地下鉄天神駅から徒歩10分)


映画『マミー』詳細情報

監督:二村真弘
プロデューサー:石川朋子 植山英美(ARTicle Films)
撮影:髙野大樹 佐藤洋祐 オンライン編集:池田聡
整音:富永憲一 音響効果:増子彰
音楽:関島種彦 工藤遥 製作:digTV 配給:東風
2024年|119分|DCP|日本|ドキュメンタリー 
(C)2024digTV

映画「マミー」公式X(旧Twitter)アカウント


映画配給会社 東風


【長男氏著書】『もう逃げない。』Kindle版あり


【林眞須美さんの再審を求めるオンライン署名はこちら↓↓↓】



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