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あるべき成仏宴【毎週ショートショートnote】

目を開くと虹が見えた。
広場に集まっている自分と似たような者たちが、食べ物や飲み物を囲んで、賑やかに話している。

「大好物を死ぬ前にもう一度食べたかった」
「もう少しあの人と一緒に過ごしたかったわ」
「僕は病気になったから、全然生きられなかったんだ」

口々に生前の心残りを話しながら目の前にある物を食べている。
自分の前には生前と同じ食事とまんじゅうが1個あった。
幼い頃に隙を見て囓って以来、食べる機会はなかったから、心残りだと思われたんだろうか。

「お、新顔だね」
「美味いものでも食べて、下界の様子を見て、未練がなくなったら成仏すればいい」

鍋料理だと思っていた土鍋は、下界の様子を映すものらしい。
あの子の様子が気になったから覗き込む。
下界では俺の骨壺を部屋に置き、話しかけてるあの子がいた。
「ごめんね、最期の時に一緒にいなくて」
供えられているのはカリカリとまんじゅう。
俺は17歳で天寿を全うした。
猫にしては長生きな方だ。未練はない。

(410文字)


こんにちは。羽根宮です。
たらはかにさんの【毎週ショートショートnote】に参加しました。
裏お題「あるべき成仏宴」です。

飼っていた猫は17歳で他界しました。
腎臓がほとんど機能しなくなっていました。
元々はノラ猫で、まだ生まれて少ししか経っていなそうな小さな時に、怪我をしていたのを病院に連れて行ったのがきっかけで、飼うことになりました。
なくなる二ヶ月前くらいまでは病気知らずの子でした。
彼に未練がないかどうかはわかりません。
でも、私は最期のときに一緒の部屋にいなかったことを謝りたいのです。

今は実家に住んでいて、母がもう生き物は飼いたくないと言っているので、動物を飼うことは難しいのですが。
あの子はとても癒しの存在でした。文字数の都合上「俺」と表記していますが、彼の一人称は「ボク」な気がします。
なんか、視える方のお話では、他界した一年後に帰ってきてたみたいなので、もしかしたら気まぐれに戻って来ているのかもしれません。


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読んで下さってありがとうございます。
羽根宮でした。

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