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【創作のようなもの】蜘蛛

コーヒーを淹れようと思って、やかんを火にかけようとしたら、ふわりと黒いものが降りてきた。
ガスレンジの横に音も無く着地した小指の先くらいの大きさのもの。
一瞬、埃かなにかかと思ったそれは蜘蛛だった。

着地した蜘蛛は、ぴょん、ぴょんと飛び跳ねて、ガスレンジ付近を移動する。
今、火をつけたら熱いだろうか。
虫が嫌いな人はこういうときどうするのだろう。

私は虫が好きなわけではないけれど、嫌いなわけでもないし、怖いわけでもない。
いるな、と思うだけだ。
小学生の頃、夏休みの臨海学校で泊まった学校の寮で拳くらいの大きな蜘蛛を見たときも、蜘蛛だなと思っただけだったのを思い出す。
同級生の女子たちは怖がって逃げたりしていた。

以前、声優のラジオ番組で若い男性声優が「蜘蛛は益虫だから殺さない」と言っていた。
特に何もしないで放っておくと。
私も殺生は好まない。
肉も魚も食するけれど、自ら手を下したくはない。
そういえば、あの声優さんは益虫じゃなければ退治するのだろうか。

友人が貸してくれた本の中に、彩瀬まるさんの『あのひとは蜘蛛を潰せない』という本があった。
私も蜘蛛は潰せない。
潰そうと思わない。
積読がたくさんありすぎて、手を着けられていないけれど。
思い出したから近々読んでみようか。

そんなことを思っていたら、蜘蛛はどこかに行っていた。
もう一度周りを見回して、お湯を沸かすために火をつけた。


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